« 2015年7月 | トップページ | 2015年9月 »

2015年8月

[No.628-2]秋に触れて

No.628-2

「雰囲気からして、在り来たりの答えじゃなさそうね」
「とは言え、とんでもないものでもないよ」

同僚が必死で考えている。

「人や犬猫でもないだろうし・・・」
「・・・乗り物でもないよね?」

どちらかと言えば、人や犬猫に近い。

「生物ってこと?」
「そうだよ」
「在り来たりな生物じゃないわけだし・・・」

とんでもない生物の名を言われそうな雰囲気だ。
ややこしくなる前に答えを言ったほうが賢明だろう。

「とんぼよ・・・多分、赤トンボ」
「えっ~!折角、色々考えていたのに~!」

今度、暇があったらその“色々”を聞くことにしよう。

「でね、前の方から私の顔めがけて飛んできたの」

考える間もなく、反射的に避けてしまった結果・・・。

「それで・・・汚れちゃったんだ」
「倒れた先が、草むらでよかったよ」

ススキの群生がクッション代わりになってくれた。

「できたら、もう少しスマートなかたちで秋に触れたかったけどね」S628
(No.628完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.628-1]秋に触れて

No.628-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・今日は涼しいのね)

連日猛暑が続くと、1、2度下がっただけでも心地よく感じる。

(もうすぐ、9月だもんね)

風にもいくぶん、秋の気配を感じないわけじゃない。
真夏の風とはどこか違う。

「あっ!・・・ノンビリしてられないわね」

あまりの清々しさに、つい足を止めてしまっていた。

「おは・・・よう?」
「どうしたの・・・浮かない顔ね?」

やはり顔に出ているらしい。
もちろん、ちゃんとした理由がある。

「会社に来る時さぁ・・・」

今朝は珍しいほど、清々しく一日がスタートした。
踏み出す自転車のペダルもいつもより力強かった。
それなのに・・・。

「・・・そう言えば、服汚れてない!?」

今朝、走り始めてから数分後にあるものと衝突しそうになった。

「あるもの?」
「何だと思う?」

そんなつもりはなかったが、朝からちょっとしたクイズが始まった。

(No.628-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.253

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.353  ひろめ
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

たまに書くことがある“名前にまつわる小説”ですが、明るい話ではありません。

小説後半の“ノートに落書きした”あたりから創作です。逆にそれまではほぼ事実なんですよ。
ただ、後半にも出てくる美保子(みほこ)さん自体は実在の人物で、ひろめさんを含めて僕たち3人は同級生でした。

ある日、彼女のノートを目にした時、そこに“ひろ子”と書いてありました。
小学6年生にもなって自分の名前を間違える人なんて、さすがに居ませんよね?だから、それを目にした瞬間、「もしかして・・・」と直感的にあることが頭に浮かびました。
僕も含めて男子としては、変わった名前をただイジっていた感覚しか持っていませんでしたが、彼女はそうとは捕らえていなかったことに気付いた瞬間でもありました。

名前を書き換えていたことに僕しか気付いていなかったのは小説の通りです。
ですが、この先の「ノートに落書きして名前を消す」という行為は実際には行っていません。徐々にイジられることが少なくなって行ったからです。
その理由は不明ですが、小説に書いたように「飽きっぽさもまた小学生ならではだった」からかもしれませんね。
T253
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.627-2]活躍の場

No.627-2

「なんか、たらへんなぁ・・・」
「・・・足りない?」

別に何かが外れているとか、商品の欠陥のことではないだろう。

「どういうこと?」
「キーホルダーとか付けたらええんちゃうん?」

どうやら、そっち系の“足りない”らしい。
大げさに言えば、きらびやかじゃない・・・と。

「そ、そうかな?」

持っているだけならそれでもいい。
けど、改札機にタッチさせなければならない。

「邪魔じゃないかな・・・」
「そんなことより、オシャレが優先やろ」

キーホルダーがお洒落かどうかは別にしても女の子らしい発想だ。

「そう言われてもなぁ・・・あっ、そうだ!」
「そや!」

菜緒(なお)も同じことを考えたようだ。

「スマホになってからは、活躍の場がなかったしな・・・」

多少、使い辛くてもお洒落じゃなくても、これが一番の答えだ。
S627_2
(No.627完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.627-1]活躍の場

No.627-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「じゃじゃぁ~ん!」

登場のさせ方が昭和っぽいが気にしない。

「なにそれ?」
「なにってカードだよ、ICカード」

世の中からは、かなり遅れてのデビューだ。
振り返ればケータイを持つのも遅かった。

「それどこの?」
「北海道のだけど、こっちでも使えるよ」

折角なので帰省先でカードを作った。
全国区ではないが、幸いなことに互換性はある。

「・・・それに、ほら!」

ここぞとばかりにカード入れを見せ付けた。

「“せいじゅうろう”やん!」

ついでにカード入れも買った。
どうせ買うなら・・・と思い、これを選んだ。

「どうかな?」
「ええんちゃうん・・・」

ただ、言葉とは裏腹に表情が冴えない。
何か言いたげだ。

(No.627-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.626-2]“正”小説

No.626-2

「・・・で、どれくらい?」
「今日で3日目」

今まですれ違うときは、必ずふたりだった。
ひとりだけですれ違ったことは一度もなかった。

「だから、ビックリしちゃって」

まさか、書いたことが現実になるとは思ってもみなかった。

「そりゃ、驚くわよね」
「とにかく、心配で・・・」

小説と同じ展開になってきた。
あくまでも創作だったはずなのに・・・。

「どうする?」
「明日、声を掛けてみようか?」

「あっ!これも小説と同じ・・・」

それもそのはずだ。
その小説で会話を交わす二人は、私たちに他ならないからだ。
創作と言えども、ある程現実味を帯びた内容で書いている。

「でも・・・本当に声を掛けて大丈夫かな?」
「・・・う、うん・・・どうしようか・・・」

ただ、実行するとなればそれなりに覚悟が必要だ。

今日も彼女ひとりのすれ違った。
相変わらず、スマホをいじりながら・・・。

「転校しても連絡取り合ってるみたいだね」

離れていても二人連れは今も変わらない。
S626
(No.626完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.626-1]“正”小説

No.626-1    No.621 二人連れ

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
事実は小説より奇なり・・・正しくその通りの出来事だった。

「ブログでさぁ、短編小説書いてるの知ってるよね?」
「もちろん!いつも楽しみにしてるわよ」

友人は数少ないユーザーの一人だ。
つまらない小説に付き合ってくれている。

「3週間くらい前に、二人組みの話書いたじゃん?」
「・・・確か、タイトルは“二人連れ”だっけ?」

貴重なヘビーユーザーに感謝だ。

「そう!いつも二人なのにある日、一人になった話」

実話をベースに書くのが私のポリシーだ。
二人連れ自体は本当のことだった。

「でもね、一人になってしまうのは創作だったんだよね」

それでも悲しい涙で終わるような結末にはしていない。
これも小説を書く上でのポリシーだ。

「それが・・・ね」
「・・・もしかして、この流れからすると・・・」

友人が只ならぬ雰囲気を察したようだった。

「本当にひとりに?」
「う、うん・・・」
「・・・スマホいじりながら走ってた」

つまり、正夢ならぬ“正”小説になってしまった。
偶然と言えば偶然だ。
だが、あまりにもタイミングが良すぎる。

(No.626-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.252

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.395  漢字検定
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

タイトルやテーマである漢字検定から少し話は反れますが一昔前の時代が見えてくる小説です。

「ケータイでも調べられるでしょ?」このセリフ、今なら「スマホでも調べられるでしょ?」になります。
それにメールがどうのこうの・・・と書いてありますが、これもLINEに置き換わりますよね?ホタル通信を書くにあたって読み返した時、テーマよりも先にこのことが気になりました。

実話度は低めです。漢字検定を持っている人が居ること以外はほぼ創作です。
いつも通り、オチを決めずなんとなく書き始めると、ごく自然に手紙の話へと繋がりましたが、この時点でオチはまだ考えていませんでした。
で、そのまま書き進めていると、漢字検定と手紙の相性が良い事に気付き、「添削」という言葉でお互いを結び付けたのがオチになります。

ホタル通信では度々書いていますが、“商業的な小説”のパターンですね。つまり、ショートショート的な構成です。ただ、自分の作品でありながら、商業的な物はあまり好きではありません。
読者の皆様には、こちらの方が良いとは思っているのですがあえてそうしないことで、個性を出しているつもりなので、大目に見て頂ければ。
T252
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.625-2]歴史の時間

No.625-2

「それに僕の場合、苗字だけじゃなくて」

下の名前も該当する人物がいる。

「・・・かなり有名じゃん!」

かなりどころか、戦国時代では一位、二位を争う有名人だ。

「だから、歴史の時間は結構、大変だったんだよ」

先生が苗字や名前を口にするたびに、教室がザワつく。
でも、先生も手馴れたもので、その場をうまくおさえてはくれた。

「それでも、結構、イジられたよ」
「小学生なら仕方ないよ」

でも、実はそんなに悪い気はしていなかった。
逆に少しだけ、時の人になった気分が味わえた。

「私はそんな苦労はなかったな」

彼女の苗字と名前は、これといった特徴はない。

「でも、これから先、苦労しそうなんだよね」
「これから先?」

何を言っているのか、すぐには理解できなかった。

「苗字が変わる可能性があるでしょ?」
「・・・それとも、あなたが変えてくれるの?」

「えっ!?」

突然、逆プロポーズされた。

「苗字が変わったら、とある女優と同姓同名になっちゃうからね」
S625
(No.625完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年7月 | トップページ | 2015年9月 »