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[No.620-2]血が騒ぐ夏

No.620-2

「な、なによ・・・」
「いちじくの木にはね、かみきり虫が・・・」

虫嫌いの私にとっては、耐え難い内容の話だ。
ゴマダラ、キボシ・・・名前だけでも十分気持ちが悪い。

「ちょ、ちょっとヤダ!」
「小学生の頃、よく取りに行ったっけな~」

よほど女子とは思えない会話だ。

「だから、この匂いを嗅ぐと血が騒ぐんだよね!」

ひとりで盛り上がっている。

「血が騒ぐって・・・」
「ほら、なんて言うか、野生の血というか・・・」

(そもそも野生じゃないでしょ!)

突っ込みたくなる気持ちを抑えた。

「どんな小学生だったのよ!?」
「・・・というか、そのまま今に至る!って感じかな」

見た目は完全にお嬢様系だ。
そんな風にはまず見えないところが羨ましくもある。

「そうかしら?別に隠してないけどね」

確かに、猫を被ってはいない。

「ち・な・み・にだけど、取った虫って・・・どうしてたの?」
「もちろん、標本にしてたわよ」

これについても、そのまま今に至っているらしい。
S620
(No.620完)
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