No.625-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
「思い出すなぁ・・・」
テレビで戦国武将の特集をしている。
「戦国生まれだっけ?」
面倒なのでスルーすることにした。
彼女もこれくらいなら心得ているからだ。
「ほら、僕の苗字・・・」
「それが?」
「戦国武将じゃないけど」
この言葉で彼女が気付いたようだ。
「確か・・・平安時代とかだっけ?」
「そうだね、それくらい」
この際、正確な時代は必要ない。
「小学生って、そんな程度でザワつくだろ?」
“そんな”に該当する説明はまだしていない。
「“同じ名前!”ってわけね」
でも、話は通じているようだ。
「言わば、“歴史あるある”ね」
教科書を開いた時点で、何となく皆がソワソワしている。
もちろん、この僕も同じだ。
「・・・で、先生がそれを読み上げると」
待ち構えていたかのように、誰もが“キター!”となる。
(No.625-2へ続く)
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No.624-2
「ここから・・・見守ろうよ」
こちらの存在に気付いてないわけじゃない。
けど、まだ距離があるせいか、警戒心は薄い。
「そうだね」
親子水入らずを邪魔しちゃ悪い。
「うらやましいなぁ」
「・・・思い出させちゃった?」
昨年、母親を亡くした友人には、そんな風に映るみたいだ。
「仕方ないよ、そんな季節だし」
そのせいだろうか・・・
最近、友人に元気がない。
それもあって、今日は無理矢理にでも散歩に連れ出した。
「でも・・・ありがとうね」
「ん?なにが?」
一応、とぼけてみたが、バレてはいるだろう。
「・・・とにかく、今日は暑いわね~!」
私たちをさえぎるものは何もない。
時々、心地よい風が私たちを通り抜けて行く。
「あのネコもその風のひとつね」
友人がポツリとつぶやいた。

(No.624完)
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No.624-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
多少、離れていてもそれが何なのか分かる。
だからこそ、足を止めた。
「どうしたの?急に立ち止まって」
「ほら・・・あれ・・・」
友人はまだ気付いていないらしい。
それもそのはずだ。
友人の目線はスマホにあったからだ。
「・・・ん?イヌ・・・ネコ・・・?」
「ネコよ、それも親子のね」
小川沿いの小道でネコの親子がじゃれついている。
二匹とも同じ毛並みだ。
「なかなか見られない光景ね」
確かにそう言える。
テレビならまだしも、生でしかも野生だ。
「もっと近くで見てみない?」
「ちょ、ちょっと!」
歩き始めようとしていた友人の腕を反射的につかんだ。
「飼いネコだって、外では逃げちゃうくらいなんだから」
よほど人に馴れていない限り、逃げられるのがオチだ。
ましてや子供連れだ。
「・・・そうね、子供がいるもんね」
普段よりも警戒心は強くなっているはずだ。
(No.624-2へ続く)
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小説名:No.202 第一印象
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性
いつものことながらホタル通信を書くにあたって、小説を読み直してみる。あぁ、彼女の両親と初対面する話なんだと・・・。
・・・と思っていたら、最後の一行ですね。
最後の一行を読むまでそう思っていました。自分で作ったとは言え、久しぶりに読み直したこともあり、すっかり騙されました。これを人は手前味噌と呼ぶんでしょうね。
実話度はそこそこ高めで、彼女の両親ではなく、飼っている犬と初対面する話です。ありがちですが、それを隠して、さも彼女の両親に“挨拶に行く”のようなシチュエーションを演出しています。
小説を書き始めた時は、そんなつもりではなかったのですがあえて描写を手抜きする手法で書くことが多いので、結果的にこのようなかたちになりました。
普通に書いていたら「あれ?これなら・・・」と思い、あえて犬のことには触れませんでした。
でも、彼女の両親だけでなく、そもそも“人に会う”とは書いていません。
そんなに意識して緻密にも書いてもいませんが、「『また来てね!』って言ってたわよ」「ほんと?」という会話に対して、「表情を見れば分かるわよ」というように返しています。
つまり“声は発していない、あくまでも表情だけ”ということを暗に説明しています。
今回は妙に理屈っぽいホタル通信ですが、この小説自体は、「No.371 誘われた夜」と「No.372 誘った夜」へリンクする話なんですよ。


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No.623-2
「それに、教訓も学んだし・・・」
毎日、アプリへ入力していたことであることに気付いた。
「どんな?」
「さっき、“グラフも表示できる”って言ったでしょ・・・」
縦軸は体重、横軸は日にちになっている。
横軸の目盛りは1週間、1ヶ月・・・といくつか変えることができる。
「1週間だとね、減っていないように見えても」
1ヶ月、90日・・・と目盛りを変えると徐々に減っているのが分かる。
「それ、案外盲点ね」
「そう!体重なんて日々増減するから・・」
挫折しそうな気持ちをそれが支えてくれた。
私のしていることは間違っていないのだと。
「それが教訓ってわけね」
「・・・まぁ、“反対の意味の”だけど」
できればもう少し早くその教訓に出会いたかった。
「彼との関係も徐々に冷めてたみたい」
忙しい毎日に忙殺され、変化に気付けなかった。
「距離を置くとか・・・視点を変えるべきだったな」
ダイエットから意外な教訓を学んだ。

(No.623完)
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No.623-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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ダイエットから学んだ意外な教訓がある。
「よく続けられるよね!?」
ダイエットを始めてから、かれこれ5ヶ月になろうとしている。
「まぁ、何とか・・・」
ことの発端は至ってシンプルだ。
体重が大台を突破したからだ。
それ以前に、見た目が怪しくなってきたせいもある。
「尊敬しちゃうよ!秘訣、教えてよ?」
「そんな秘訣なんてないよ」
カロリーの摂取量を抑え、軽めの運動を行う。
時々、自分にご褒美を与えながらも、これをしっかり守る。
これの積み重ねしかない。
「ほんと?」
「そのためにも、体重の管理はキッチリしたよ」
毎日体重計に乗り、体脂肪と共に測定する。
その結果をスマホのアプリへ入力もしている。
「へぇ~そんなアプリもあるんだ」
「うん、グラフも表示できて、色々メッセージも表示されて」
増えたとか減っただけじゃなく、応援もしてくれる。
「それならやる気も出るわね」
そのうち、これらが習慣化し、継続へと繋がった。
(No.623-2へ続く)
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No.622-2
それから数ヵ月した頃から、彼女らは姿を見せなくなった。
「普通に考えたら・・・振り向いてもらえなくて」
「諦めたパターンでしょ?」
上から目線だけど、そう考えるのが妥当だった。
「でもな、見る以外の行為は何もなかったんだよ?」
「・・・それが乙女心じゃない?」
確かにそうと言えなくもない。
ただ、少なくても彼女はそんなタイプじゃない。
「それに他の二人だって」
決して大人しいタイプではなかった。
「結局あれは何だったのかな?って・・・」
「今でも思い出すことがある」
好意を寄せられていたのか、それとも・・・。
「・・・それとも?」
中学生と言えば女子の方がいろいろな面で大人な時期だ。
「スッキリしない出来事も、青春の1ページだろ?」
一応、強がってみる。
彼女らの行動に応えるのがこわかったことを隠すために。
(No.622完)
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No.622-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
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その三人の内、一人は顔見知りだった。
中学校に入る前の2年間は同じクラスでもあった。
「最初はさぁ・・・元クラスメートってことで」
単に僕の教室を覗きに来ているのかと思っていた。
「そうね・・・私も経験あるわ」
自分のクラスに馴染むまで、他のクラスの顔見知りに会いに行く。
入学してからしばらくはそんな行動をとることが多い。
「ところが・・・」
数ヵ月経ってもその行動は変わらなかった。
それどころか、人数が二人増えた。
「それが、その三人ね」
「あぁ・・・それに外で遊んでても」
校舎の陰から僕を見てる。
「勘違いかな?とも思ったんだけど」
「友達・・・の方?」
有りがちなパターンだ。
自分ではなく、いつも行動を共にしている友人の方を・・・。
「それで、わざと別の友人を誘ってみたんだ」
それでも彼女らの行動は変わらなかった。
(No.622-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.350 どしゃぶりの雨の中で
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性
改めて読み直してみると、「こんなのも書いてたんだな」とつくづく思いました。
実話度は比較的高めで、雨にまつわることはほぼ事実なんですよ。実際、傘を買うのを躊躇した結果、どしゃぶりの雨の中を滑走することになりました。
話は少しズレますが、全力で自転車を走らせるので“疾走”の方が適切なのかもしれませんが、ここではあえて滑走という表現にしています。半端ない大雨で道路が軽く冠水したような状態であったため、水上を滑るように走るイメージからこの言葉を選びました。
そのどしゃぶりの雨に、無理矢理感は否めませんが、恋愛を引っ掛けてみました。無理矢理・・・というくらいですから、これに関しては創作です。
ただ、ドラマや映画では見掛けなくもないシーンだと思っています。雨と失恋・・・絵になりますよね?
失恋という心の痛手を、雨に打たれる自分で表現しているように思えます。でもそこには悲しみだけではなく、それを乗り越えようとする決意も含まれているような気がします。
ラストの1行は最初から考えていたわけではありません。
記憶は曖昧ですが、“雨と一緒に苦しみも流れてしまえ”というセリフがあったからこそ、そこから自然にラストが決まりました。


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No.621-2

案の定というか、不安がそのまま現実となった。
「・・・今日も居ないわね」
あれから一週間が過ぎようとしている。
相変わらず相棒の姿はそこにはなかった。
「もしかして、入院でもしてるのかも・・・」
「明日、聞いてみる!」
彼女たちとは知り合いでもなんでもない。
単にすれ違うだけの関係だ。
「うん、そうしよう!」
突拍子もない友人の考えに肯定的な自分がいる。
自分自身がそんなことを経験しているからだろう。

(あれ!?)
あの日と同じように友人と顔を見合わせた。
「相棒も笑顔も復活してる!!」
つい、彼女たちにも聞こえる声でしゃべってしまった。
けど、彼女たちは何事もなかったようにすれ違って行った。
そこに何があったのか・・・想像はできる。

(No.621完)
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No.621-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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(・・・あれ!?)
声こそ出なかったが、併走する友人と顔を見合わせた。
「どうしたんだろう・・・」
友人も同じことを考えていたらしい。
「・・・そうね」
通学途中にすれ違う女子高生。
・・・とは言え、私も女子高生のひとりだ。
いつも二人組みとすれ違っていた。
「心配だね」
「喧嘩でもしたのかな?」
その言葉には理由がある。
数日前から、彼女たちから笑顔が消えた。
いつもなら、おしゃべりしながら併走していたのに。
「じゃなきゃいいけど」
「今日はタマタマひとりだけかもしれないし」
たった一度だけで物事を決め付けるのは良くない。
けど、心配せずにはいられない。
(No.621-2へ続く)
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No.620-2
「な、なによ・・・」
「いちじくの木にはね、かみきり虫が・・・」
虫嫌いの私にとっては、耐え難い内容の話だ。
ゴマダラ、キボシ・・・名前だけでも十分気持ちが悪い。
「ちょ、ちょっとヤダ!」
「小学生の頃、よく取りに行ったっけな~」
よほど女子とは思えない会話だ。
「だから、この匂いを嗅ぐと血が騒ぐんだよね!」
ひとりで盛り上がっている。
「血が騒ぐって・・・」
「ほら、なんて言うか、野生の血というか・・・」
(そもそも野生じゃないでしょ!)
突っ込みたくなる気持ちを抑えた。
「どんな小学生だったのよ!?」
「・・・というか、そのまま今に至る!って感じかな」
見た目は完全にお嬢様系だ。
そんな風にはまず見えないところが羨ましくもある。
「そうかしら?別に隠してないけどね」
確かに、猫を被ってはいない。
「ち・な・み・にだけど、取った虫って・・・どうしてたの?」
「もちろん、標本にしてたわよ」
これについても、そのまま今に至っているらしい。

(No.620完)
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No.620-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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「ねぇ、この匂い何だかわかる?」
特別、際立った匂いはしていない。
言われてみると、少し感じる程度だ。
「青臭い・・・って言えばいいのかな?」
「そうね、そんな感じ」
植物だということは何となくわかる。
でも、今まで嗅いだことがない匂いだ。
「で、何の匂い?」
「アレよ」
同僚が数メートル離れた道路脇を指差す。
そこには青々と茂る一本の木が植えられていた。
「何の木なの?」
「いちじくよ」
「・・・いちじく?」
もちろん、それ自体は知っているし、見たこともある。
ただ、あくまでもスーパーで見かける程度の話だ。
「多分、そんな程度だとおもった」
こうやって、野生の状態のものを見るのは初めてだ。
「まだ実はなっていないけどね」
そういうと葉っぱに近づき、鼻をクンクンさせ始めた。
(そんなに良い匂いとは思わないけど・・・)
「この匂いを嗅ぐとね・・・」
急に同僚の顔が険しくなってきた。
(No.620-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.320 靴の中から
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性
久々に実話度100%の小説の紹介です。小説の冒頭にも書いた通り、嘘のようで本当の話なんですよ。
二人の関係が、彼女の彼氏にバレているかも・・・そこから始まります。
頻繁にメールをしていたわけでもなく、ましてや電話で話したことは数える程度しかありません。それでも、なんとなく感付かれていたようです。
まぁ、こんな場合を想定していたからこそ、僕のニックネームは“ホタル”でした。男性とも女性とも言い難く、それこそ源氏名でも通ります。
実際、彼女もそんな関係の仕事をしていたので、それ自体は不自然なものではありませんでした。
靴の中からメモ書きが・・・は本当なんですよ。
連絡の手段がケータイ全盛だからこその盲点でしょうね。
でも、今考えると、こっちのほうがバレるリスクが高いのかもしれません。
とにかく、靴の中から出てきた時は、ビックリしたものの、彼女らしい行動に大笑いしたものです。
実話度100%な小説だけに、読み返してみるととても懐かしく思います。大袈裟ですが、僕の人生に大きな影響を与えてくれた彼女ですから。


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No.619-2
「いつもほんまにありがとう」
さながら囚われの身のお姫様を救う王子様の気分だ。
シチュエーションはかなり違うが・・・。
「けど、うちにとっては王子様やで」
「あはは!ありがとう」
とりあえず、笑うしかない。
ただ、童話の世界で言う“王子様”とは大きく異なることがある。
「もうすぐ、着くよ」
「・・・そうやね」
檻に閉じ込めるために、わざわざこうして送り届けている。
そんな王子様は居ないだろう。
「じゃあ、またなにかあったら・・・」
彼女がまた小さくうなづいた。
(こんなこと何度、繰り返せばいいのだろう・・・)
見送る背中に、そう語りかけた。

名前は知らないが、見たことがある花だった。
「こんな場所でも綺麗に咲くもんだな」
まるで彼女の生き様、そのものだった。

(No.619完)
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No.619-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
(ん?)
偶然、足元に目を落とした時だった。
「・・・花!?」
道路わきの側溝の中で、赤い花がひっそり咲いていた。

彼女を送って行くのはこれで何度目だろう。
「・・・大丈夫?」
在り来たりだけど、そんな言葉しか掛けてあげられない。
「うん、平気・・・いつものことやし」
「例の“彼”?」
彼女が小さくうなづく。
見慣れているとは言え、出来れば彼女の涙は見たくない。
「とりあえず、いつもの場所まででいい?」
「うん、そこでええよ」
いつも彼の家からやや離れた場所で彼女を降ろす。
「“もう、帰って来なくていい”ってメールが来たけどな」
でも、こうして彼の家に向かっている。
帰る場所がない彼女。
そして、それを知っている彼。
(No.619-2へ続く)
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No.618-2
だからこそ気付いて欲しい・・・そろそろ・・・。
「・・・ん!?」
「ははぁ~ん」
よほど、そんな表情をしていたのだろうか?
ようやく気付いてくれたようだ。
「色白なの・・・気にしてるんだ?」
「・・・えっ!?」
「大丈夫よ!すぐに小麦色に変わるから!」
行かないから、焼けない。
簡単な理由だ。
「そ、それが・・・」
「・・・私も泳げないからいいじゃん!」
「知ってたのか!?」
完全な金槌ではないにせよ、まともには泳げない。
小学生の時、プールの時間は苦痛の何物でもなかった。
「・・・やっぱりね」
「かまを掛けたのか!?」
どうやらどこかの時点で見破られていたらしい。
「いつ気付いたんだ?」
「目はちゃんと泳いでいたわよ」

(No.618完)
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No.618-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
この季節になると思い出す嫌な記憶・・・。
特に暑い盛りは、ニュースでもその光景をよく目にする。
「ねぇ、今度プールに行かない?」
極力、その手の話題は避けてきたつもりだ。
「・・・そうだね、考えとく」
「前もそんなこと言ってなかった?」
そうこうしているうちに、夏が過ぎて行く。
それが狙いだ。
「そ、そうかな・・・」
「そうよ!去年だって」
確かに去年もそうだった。
でも、真夏に知り合ったお蔭ですぐに夏は過ぎて行った。
「仕方ないだろ?都合が悪かったんだから」
「じゃ、今年は大丈夫なんでしょ?」
夏になると急に予定が入る。
今風に言えば、エア予定だが・・・。
「どうだろう・・・夏は忙しいからな」
「休日も忙しいわけ?」
今年は去年のようにはいかないみたいだ。
気心も知れて、突っ込みも厳しくなってきた。
(No.618-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.203 夕焼けの秘密
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性
簡単に言えば「なぜ夕焼け空は赤いのか?」を、かなり遠まわしに小説にしたものです。
小説にも書いた通り、“夕焼け空”という、聞きなれた言葉を印象付けるために、前半はソーラー発電ウンヌン・・・とあえて小難しく展開させています。
従って実話度が物語っている通り、そのあたりはほぼ創作です。
ただ、全く無関係ではなく、たまたまソーラー発電に関する記事を読んでいた時に、天候による発電量の違いから端を発して、そのうち夕焼け空へと繋がって行きました。
「夕焼け空はなぜ赤いのか?」メルヘンの世界だけで片付けても良いのでしょうが、科学的な真実を知るのも興味深いものがありますよ。
全体としてはダラダラした作りになっており、何を伝えたいのかハッキリしない内容です。
さらにラストは夕焼けではなく、空の青さ、さらにはブルーな気持ちです。これ、答えがありません・・・つまり、思わせぶりなことを書いたにもかかわらず、想定した答えや展開を用意していません。
だからこそ、読み手の方々で色々広げて欲しいのです。
それこそ、どこまでも広がる青い空のように。


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No.617-2
「まっ・・・彼らには関係なさそうだけど」
そう言うと、2mほど先に居る野良猫を指差した。
陽気に誘われたのだろうか?
数匹が寄り添うように寝ている。
「・・・みたいだね」
彼らには彼らの時間が流れていた。
「あなた達も、ちょっとは見習いなさいよ!」
友人がその猫たちに話しかけた。
でも、目だった反応はない。
「野良なんだから聞く耳もってないってば・・・」
「・・・それもそうね」
世間の盛り上がりとは対照的な風景だった。
「でも、この場所も最高よね」
単なる公園の片隅にも、変わらぬ命が息づいている。

(No.617完)
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