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2015年6月

[No.617-1]ある猫の物語

No.617-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
ある猫のおかげで、その駅は息を吹き返した。

「あらためてすごい人気よね」

その猫が先日、天国に旅立った。

「思い出す・・・ね」

私たちも、その駅を訪れたことがあった。
もちろん、目的は“駅長”にあうことだ。

「猫好きとしては、外せないでしょ!」

猫好きならずとも一度は訪れたくもなる場所だ。
色々な意味で“救われた”人も多いだろう。

「そう言えばさぁ、あの時・・・」
「・・・そうそう!!」

こうして、大きく報道までされる人気者だ。
私たちの思い出も尽きることがない。

(No.617-2へ続く)

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[No.616-2]雨上がりのメリーゴーランド

No.616-2

「えっ!?どこ・・・あっ・・・」

流木に混じって、一際目立つ物が流れてきた。

「傘・・・よね?」

ピンク色の傘が流れてきた。
それも逆さまに開いた状態で・・・だ。

「思い出さないか?」

彼の言葉を聞く前に、もうピンと来ていた。
昔、彼と乗ったメリーゴーランドに似てる。

「・・・アレだよね?」

普通に考えれば似ても似つかない代物だ。
でも今はそれにしか見えない。

「また乗れるかな?」
「バカ言うな・・・もう無理だよ」
「・・・だよね」

そのために駅に向かっているのだから。
だからだろうか・・・これを最後に会話が途切れてしまった。

『でも、忘れないさ・・・ずっと』

彼の最後のセリフだった。
電車が行った後に、Lineにそうメッセージが届いた。
あの写真と共に。
S616
(No.616完)
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[No.616-1]雨上がりのメリーゴーランド

No.616-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
川沿いの道を歩いている。
特別な意味はない。
駅へ行くのまでの合理的なルートだからだ。

「昨日、雨すごかったよね?」

それほど大きな川じゃない。
それだけに増水の名残が良く分かる。

「そうだっけ?」

あれほどの雨だ。
気付かない方がおかしい。

「ほら、色んな物も流れて来てるでしょ?」

普段はごくおとなしい川だ。
でも、今は少しだけやんちゃな状態だ。

「・・・みたいだな」

さっきから気のない返事が続いている。

「ほんと大雨の次の日って感じね」

それは私も同じかもしれない。
どうでもいい話を続けている。

「・・・あっ!アレ見てみろよ」

今までとは打って変わった彼の声だった。

(No.616-2へ続く)

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ホタル通信 No.247

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.391 知らない車
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

この小説は後半からラストに向かって実話度がどんどん高くなって行く構成です。

ある時、フッと以前住んでいたアパートがどうなっているのか気になり、グーグルマップで調べたことがことの始まりです。
ですから、小説のように話題のスイーツ店を探す行為から発展したものではありません。

ストリートビュー機能を使って、かつての自宅前を見てみると知らない車が停まっていた・・・これが発端です。
たかが・・・と思われるかもしれませんが、自分でも驚くほどに切なさを感じました。
話が飛躍し過ぎているかもしれませんが、元カレにバッタリ会って、その傍らに彼女が居た・・・ような感覚です。

借家とは言え、想い出が詰まるその場所に、表現は不適切ですが、土足で入られたような気もしなくはありません。
ただ、小説にも書いた通り、そこにリアルな生活感を見たからだと思います。
“想い出は美しいもの”と決め付け、きっと今でもあの時のままだろう・・・なんて考えていました。

ラストの二行は事実であり、実際にその場所に足を運んでみました・・・昔、そこに置き忘れた忘れ物をとりに。
T247
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[No.615-2]追憶~その後~

No.615-2

「・・・仮に・・・ね」
「えっ!?なに・・・」

彼が照れくさそうに話はじめた。

「仮に僕が札幌に居たとしたら飛んで来てくれる?」
「・・・お葬式ってこと?」

彼が小さくうなづく。

「縁起でもない話・・・しないで」
「・・・だから、あくまでも仮にだよ!」

とは言え・・・可能性はゼロじゃない。

「そうね・・・行かないかも」
「そ、そうなんだ・・・」

嘘は付いていないつもりだ。

「だって、もう死んじゃった後でしょ?」
「ハッキリ、言うなぁ・・・」

だからこそ、しなくてはならないことがある。
それは、友人の死で分かったことだ。

「だから・・・」
「元気なうちに会いに行く・・・どんなことがあっても」
S615
(No.615完)
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[No.615-1]追憶~その後~

No.615-1   No.612 追憶

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「もう、落ち着いた?」
「・・・うん、ありがとう」

あれから数週間が過ぎようとしていた。
彼に会うのも久しぶりだった。

「最後はあいにく雨だったけどね」

そんなに親しい仲ではなかった。
けど、大切な仲間のひとりだった。

「そっか・・・」

目の前の現実、そして後悔・・・。
友人の死は、私に色々なことを教えてくれた。

「今は晴れ晴れしてるけどね」

別に心情を天気に引っ掛けたわけじゃない。

「でも、大変だったな・・・距離的にも」

大阪と札幌・・・
飛行機を使えば思うほど遠くはない。
けど、その時の状況による。

「そうね、急いでる時は遠く感じる」

物理的な距離ではない。
何も考えず電車に飛び乗る・・・そんなことが出来ないからだ。

(No.615-2へ続く)

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[No.614-2]掃除のおじさん

No.614-2

「居そうでいないよ、そんな人」

その言葉通りかもしれない。
見られていなかったら、手抜きする人は多いだろう。

「・・・そうだな」
「仕事って、パフォーマンスもあるわけじゃない?」
「いかにも仕事してます!って」

彼女の言葉がグサリと胸に突き刺さる。
まるで僕のことを言っているかのようだった。

「それは私も同じ」
「評価ばかり気にしてる」

もちろん、僕も彼女もそればかりじゃない。
ただ、往々にしてそんなことが多い。

「だから、掃除のおじさん・・・本当にすごいなって」

置かれている環境は違うけれど。

「自分がそうなら同じことできる自信がないや・・・」
「・・・それは私もよ、だからね・・・」

そう言葉を続けると突然、おじさんに歩み寄った。

「お疲れ様です、いつもありがとう!」

人が人を突き動かし、それがまた人を突き動かす。
S614
(No.614完)
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[No.614-1]掃除のおじさん

No.614-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ほんと、感心しちゃう・・・」
「・・・何がだよ?」

週末は彼女が住むマンションで過ごしている。

「ほら、掃除のおじさんいるでしょ?」
「・・・あぁ」

エレベーターホールから少し離れた位置で床を磨いている。
僕も何度か見掛けたことがある。

「いつも熱心に掃除してるのよね!」
「だって、それが仕事だからだろ?」

僕にはごく当たり前のように映るが・・・

「あなたも同じようにできる?」
「掃除を・・・か?」

専用の道具は見えども、さほど難しくはないだろう。

「そうじゃなくて・・・」
「人が見てなくても手抜きせすにできるかってこと!」

確かに僕らを気にしている様子はない。

「いつも床とか綺麗にしてくれるんだよね」

当たり前と言えば当たり前だ。
でも彼女の言葉通り、手抜きも可能だ。
誰かがいつも見ている訳じゃないからだ。

(No.614-2へ続く)

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ホタル通信 No.246

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.399 幼い恋
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

この小説は、悪く言えばエピソードを寄せ集めてきた構成になっています。

コミュニティサイトでの出会い、大きなカバン、薄化粧、かえるのご隠居、バナナ入れ・・・これらがそのエピソードになります。
記憶は曖昧ですが、別に“集大成版”を作成しようとは思っていませんでした。
タイトルからも分かるように、主軸はあくまでも“幼い恋”でありそれを強調させるための演出として、それっぽいエピソードを集めてきました。

前述した5つのエピソードのうち、4つは小説化しているのですが、1つだけハッキリとした形では小説化をしていません。
いずれのエピソードも比較的、明るい内容で、だからこそエピソードとして採用したのかもしれません。
それにエピソードとしてはかなり初期のものが多く、冬のホタルを立ち上げた当初の想いが再現されています。

小説上の僕(男性)と彼女・・・。
まるで、ままごと遊びのような付き合い方でした。彼女は現実逃避することで、崩壊という魔の手から自分自身を守っていたように思えてなりません。
今となっては良い思いです。そんな彼女から、たくさんのことを学び、そして僕の生き方を変えてくれました。
T246
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[No.613-2]雨男の正体

No.613-2

「それで、研究の成果は?」
「そうねぇ・・・」

正直、彼女の言うことを信じてはいない。
けど、絶対に有り得ないかと言われると、強くは否定できない。

「なにか分かった?」

単なる都市伝説やオカルトでは片付けない。
あくまでも科学的にアプローチするところは評価できる。

「成分の殆どが“やさしさ”で構成されてることが分かったわ」
「・・・なんだよ、それ・・・」
「だから、雨男の正体よ」

意味がよく理解できない。

(・・・正体?)

「科学的にアプローチしてみたわ」
「雨男さんは、ほとんどやさしさで出来てるみたい」

「・・・ちょ、ちょっと待ってよ!?」

急な話の展開に戸惑っている自分がいる。

「じゃあ、残りの成分は何なんだよ?」

とりあえず、話の腰を折ってみた。

「私のことが好きみたい」

さすが研究者だ・・・データに誤りはない。
S613
(No.613完)
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[No.613-1]雨男の正体

No.613-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、昨日どうだった?」
「どう・・・って」

うそを付く必要はない。
正直に事実を伝えるまでだ。

「あっ!やっぱり!」

嬉しそうな表情がなんとも腹立たしい。

「これでまたひとつ“観測データ”が増えただろ?」
「そう怒らないでよ・・・真剣に調べてるんだから」

僕が雨男であることは疑いのない事実だ。
昨日も回復に向かっていた空が急変した。

「昨日もさ・・・外に出た途端だぜ?」

乾き始めていた道路に大粒の雨が踊った。
偶然で片付けるレベルはとっくに過ぎている。

「だから、こうやって調べてるんじゃない?」

僕の体が天候に何らかの影響を及ぼしている。
彼女はそう考えているようだ。
研究室に勤める彼女らしい発想だった。

「あくまでもプライベートな“趣味”としてね」

体の分子がどうとか雨の分子とか・・・大真面目に説明してくる。

「・・・僕への興味は尽きないだろ?」
「まぁね」

研究対象として僕は、このうえない上物だろう。

(No.613-2へ続く)

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[No.612-2]追憶

No.612-2

「・・・今日ぐらい、晴れてくれればいいのにね」

今日はあいにくの雨だった。
それも手伝って、余計に悲しみが増して行く。

「私たちはここでお別れね」
「・・・そうだね」

関係者がそそくさと乗り込むバスを遠くから見ていた。
別れが近づくにつれ、雨足も強くなってきたように感じる。

「悲しみの雨・・・か」

友人がポツリとつぶやいた。

「そうかもね」

単なる偶然でも、今はそう思いたい。

「喜んでいるのはカエルだけね」
「ん?あぁ・・・アレね」

雨足に呼応するかのように、田んぼからの鳴き声が大きくなる。

「でも、あの人ならこっちじゃない?」
「・・・どういう意味?」

笑顔が絶えない人だった。

「悲しみの雨じゃなくて、喜びのカエルかな・・・なんて」

バスが視界から消えようとしている。
それに合わせ、カエルの鳴き声もやさしく消えて行った。
S612
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[No.612-1]追憶

No.612-1  [No.588-1]トナカイのかぶりもの

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・そう」

訃報はいつも突然だ。
心の準備など待ってはくれない。

「昨日・・・だって」

昨日、自分は何をしていたのだろう・・・。
あらためて問い直してみた。

「あれから、数ヶ月よね?」
「そうね」

あれからとは、私たちが写メを送った時からだ。
大真面目なトナカイのかぶりものだった。

「すごく喜んでくれてたよ」
「・・・というより、大笑いされた」

それでいい。
目的は大いに果たした。

「昨日・・・普通にショッピングして、カフェでお茶して・・・ね」
「・・・分かってる」

しばらく沈黙が続いた。
訃報を聞いて思い出した・・・そう言えば闘病していたことを。

「出てくる涙も何に対しての涙なんだろう?」

出てくる涙が嘘っぽい。
今は自分で自分を責めていたい。

(No.612-2へ続く)

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ホタル通信 No.245

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.317 胸が見えた!? 
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

タイトルにもなっている「胸が見えた!?」はエピソードとしても、それを彼女に伝えたことも事実です。

高校生の時つきあっていた彼女と、とある公園へ行き、よくそこで話し込んでいました。暗くなるのも忘れて。
その時、ベンチらしきものに並んで座るため、どうしても彼女を横から見る格好になってしまいます。
夏場になると薄着になることもあって、ある日、小説のようにブラウスに隙間があり、下着がチラチラ見えていました。もしかしたら誘惑されていたかもしれませんね。

「普通、言わないんじゃない?」という元カノのセリフは文字から受ける印象ほど、冷たくもなく、怒った様子もありませんでした。多少の驚きと照れがあったように記憶しています。
冬のホタルでは珍しい、そっち系の話ですが、これも青春の1ページだと思って読んで頂ければ幸いです。

いつも通り、事実をもとに淡々と書き上げ、ラストの展開にも困った記憶はありません。
手前味噌にはなりますが、ラストを決めずに書き進め、それなりのラストを迎えられるのは不思議と言えば不思議です。
事実と創作を織り交ぜることで、ラストには「こうあって欲しい、こうなって欲しい」という願望を書くことが多いのではと思っています。

今回は、そっち系ながら、少し「クスッ」と笑っていただけるラストで締め括りました。
T317
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[No.611-2]心にキラリ

No.611-2

「拾えない!?」
「危険なもの?それとも重量物?」

そのどちらでもない。

「スパナよ」
「・・・ネジなんか回すやつだっけ?」

役目は違うけど、イメージはできているようだ。

「そうよ、それの小さいタイプかな?」

もっと大きなものを見たことがあるからだ。

「それなら簡単に拾えるじゃない?」
「それがね・・・埋まっていたの」
「・・・ん?」

意味は伝ってもすぐには理解できないだろう。

「アスファルトの道路にね・・・埋まっていたの」

もちろん、初めてそんな光景を見た。

「1ヵ月前くらかな・・・」

確か、その道路の舗装工事をしていた記憶がある。

「その時に誤って埋めてしまったんじゃないかな」
「それは珍しい光景ね」

あの道を通る人はみんな驚いているだろう。

「きっと友達とかに話してるんじゃない?キラキラしながら」
S611
(No.611完)
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[No.611-1]心にキラリ

No.611-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・えっ!?)

通り過ぎてから驚いた。
反射的に振り向き、あらためてそれを確認した。

「朝からツイてたわね?」
「100円?それとも500円?」

「・・・どっちでもない」

今朝、道路にキラリと光るモノを見つけた。

「なんだ・・・50円か・・・」

確かに銀色に光る・・・とは言った。
けど、それがお金であるとは言っていない。

「お金に似た何かを、間違えて拾った話?」
「まぁ・・・良くあることよ」

突っ込みたくなる自分を抑えた。

「あのね・・・」

勝手に話を広げて、勝手に結論付けている。

「拾ったのは・・・」
「・・・違う!違う!そもそも拾ってないし!」

いつの間にか、友人のペースに引きずり込まれていた。

「じゃあ、何が落ちてたのよ?」

確かに道路にそれは落ちていた。
決して拾うことは出来ないが・・・。

(No.611-2へ続く)

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