[No.593-2]幻の桜
No.593-2
「重なって見えたわけね?」
「そういうこと!」
桜とピンク色の壁が重なり、花が咲いているように見える。
ただ、満開ではなく、薄っすらと咲き始めた感じだ。
「一本だけじゃないから・・・」
壁と重なる全ての桜がそう見えてしまう。
「へぇ~、あんたにしてはロマンティックな話じゃん!」
「それ、どういう意味よ!?」
でも、意味も無く、朝から気持ちがいい。
一人だけいち早く、春を満喫しているからだろうか?
「けど、そろそろ・・・そんな季節ね」
「・・・そうね」
春は複雑は想いが交差する不思議な季節だ。
昨日と同じように、桜の木を見ている。
幻の桜は今日も咲いている。
「早く満開になってね」
人知れず生まれたつぼみに、そっと語りかけてみた。
(No.593完)
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