No.597-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
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別に自分の会社だけではないと思う。
昇格するには、それなりの資格の取得が必要だ。
「今度、経理関係の資格を取ろうと思ってる」
技術系の僕には、畑違いでハードルが高い。
「・・・昇格狙い?」
「あっ・・・うん・・・分かる?」
「だって人事部よ、私」
そろそろ本気で考えなくてはならない年齢になった。
「グズグズしてられないし」
そんな動きが同期の中にも見え隠れしてきた。
「取れそう?」
「とにかく、やるしかないだろ?」
試験日までは、まだ半年もある。
「ダメよ!半年なんて、あっと言う間よ」
「だから、今日からでも始めなきゃ!」
その言葉通り、購入したての参考書を片手に帰り道を急いだ。
(No.597-2へ続く)
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No.596-2
「さすがに今は言えないわ」
確かに彼が100%悪い。
けど、だからと言って、何を言ってもいいわけじゃない。
「今でも後悔してる」
「仕方ないでしょ?その時はその時なんだし」
「でも・・・」
今でもたまに、その言葉を耳にすることがある。
やはり、何度聞いても心が痛む。
「まぁ・・・言葉の割には・・・ね」
しばらく沈黙が続いた。
「ごめん・・・私のせいで・・・」
楽しいはずのランチの時間だった。
「別に気にしてないわよ!」
「ところで・・・知ってる?」
同僚が身を乗り出してきた。
「“くず”ってね・・・経理上は資産と同じなのよ」
「・・・意味分かんない!?」
経理部の同僚と総務部の私の会話は、時々かみ合わない。
(No.596完)
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No.596-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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過去に一度だけ、その言葉を言い放ったことがある。
「へぇ~、今のあなたからは想像できないわね」
随分と昔の話だ。
当時、私も彼も若かった・・・と言うより、未熟だった。
「どうしても許せなくて、それで・・・」
それはごく日常的な言葉だ。
けど、それを“人間”に当てはめると途端に醜い言葉に替わる。
「その言葉で彼を傷付けてしまったわ」
「よほど、何かゴタゴタがあったわけ?」
彼が浮気をした。
「・・・よくあることよね?」
「私の友人と」
今、思えば、最初から友人を狙っていたのかもしれない。
「えっ!?」
「確かに、そんなに珍しくはないかもしれないけど」
少しイヤミな返事を返した。
「だから、言ってやったの!」
「人間のくず!!って」
だだ、想像以上に後味の悪い言葉だった。
(No.596-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.340 三毛猫ホームズ
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性
小説のタイトルは、言うまでもなく、皆さんがご存知のアレです。
高校の頃、当時付き合っていた彼の影響で、小説を読み始めるようになりました。ただ、作家としては、かなり限定的で、赤川次郎さんと星新一さんの二人だけでした。
通学する電車の中だけが唯一の読書タイムで、自分でも不思議に思うくらい、自宅では読みませんでした。
この頃の小説との出会いが、冬のホタルの原点になっていれば少しは話が盛り上がるのでしょうけど、実は全くと言っていいほど無関係です。
卒業以来、今でも本という本には無縁ですし、なにせ、私の作品は小説ではなく、あくまでも「小説風」ですから。
全体的な実話度は高めで、当時のことを振り返った部分がそうであり、“現在”については創作になります。
ラストについても、余り意識せずに書き進めた結果であって、必然的にそうなったに過ぎません。
いつものごとくラストは登場人物が決めたようなものです。
この小説とリンクしているのは「No.315 三行小説」であり「ホタル通信 No.216」なんですよ。


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No.595-2
それから、15分程度経過した頃だった。
「やっと出たよ!」
「えっ・・・そっち!?」
時間からすると相当苦労したみたいだ。
「・・・そっち!?って、なにが?」
「いや・・・ほら、とにかくおめでとう!」
何がめでたいのか分からないが・・・。
「まぁ、めでたいと言えばめでたいけどな」
なんとか収めることができたようだ。
「じゃあ、見せるで・・・ジャジャーン!」
「・・・」
「・・・えぇー!!!!冗談だろー!?」
俺の目の前に、手のひらサイズの黄色い物が差し出された。
「わぁ!わぁー!!・・・って、これ・・・」
「これで、3つ揃ったよ」
それはキイロイトリのミニカーだった。

(No.595完)
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No.595-1 [No.07-1]せいじゅうろう
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
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「・・・聞いたほうがいい?」
菜緒(なお)の様子がおかしい。
さっきからソワソワしているように見えなくもない。
「なにを?」
「いや・・・さっきから落ち着かない様子だから」
(・・・レディに聞くべきじゃなかったかな?)
トイレに行きたいだけなのかもしれない。
けど、そんなことを遠慮する彼女でもないはずだが・・・。
「もしかして・・・」
「・・・うん」
聞いて正解だったようだ。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
そういうと、そそくさと席を立った。
状況だけに、それを目で追おうなんて思わない。
(女の子っぽいところもあるんだな)
普段が普段だけに、意外と言えば意外だった。
(No.595-2へ続く)
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No.594-2
「短い時間でも濃さがあり、今までを埋めてしまうからかな」
あれこれ考えるより、素直に受け入れたい言葉だった。
恐る恐る顔を出している者としては、なんとも嬉しい限りだ。

「今度は大々的にアナウンスしますよ」
このタイトルでメールを返した。
いつも、アナウンスせずに、いきなり事務所を訪れるからだ。
でも、サプライズを狙っているわけではない。
「お越しの際はぜひ事前にお知らせを」
今まで、そうしなかったのは理由がある。
(最初は、バレンタインデーだったしな)
想い過ごしかもしれないが、彼女なら用意しかねない。
2回目は特別な日ではなかった。
でも、最初のこともあり、事前に言えば気を使わせただろう。
「その時々の期間限定をご用意してお待ちしております」
ただ、次はその言葉に甘えてみるつもりだ。

(No.594完)
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No.594-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
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感覚的には、どれくらいか分かっていた。
でも、いざ正確に調べてみると、久しぶり感が半端ない。
「ほぼ2年ぶりのメールになります」
メールの冒頭はこんな感じで始まった。
今までなら、こんな書き出しで始まったことは一度もない。
数ヶ月に一度程度でも定期便だったからだ。

次の日の夕方に返事が来た。
今も昔も変わらない、彼女なりのペースだ。
「ごぶさた感ゼロ」
これが、メールのタイトルだった。
確かに、この2年間の中で、2度彼女と顔を合わせてはいる。
ただ、表現は良くないが、あくまでも仕事の“ついで”だ。
あくまでも・・・。
「出張の際に顔を出してくれるので」
本当は仕事以上に、こっちの方が気になっている。
いや・・・こっちしか気になっていないのかもしれない。
(No.594-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.359 好きだった
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性
小説の舞台は披露宴の二次会ですが、これ自体は創作で実際は単なる飲み会の席での話でした。
モテた・・・という自慢話に聞こえますが、特に何かがあったわけでもなく、いわば未遂ばかりでした。
つまり、好きになってはくれたものの、告白されたわけでもなく、付き合ったわけでもありませんから、周囲から見れば私はちっともモテていません。
創作とは言え、小説の舞台として披露宴の二次会を選んだのには理由があります。
私が結婚して間もない頃の飲み会の席だったので、結婚を期にカミングアウトされた印象が強く、それならばいっその事舞台を披露宴にしてしまえ・・・と考えました。
披露宴当日の話になると、小説にも書いたように艶めかしくもあり、ひと波乱ありそうな予感も感じさせます。
ただ、ドロドロとした愛憎劇は小説のパターンとして好きではないので、真逆のコミカルな展開に終始しています。
いつもの通りラストは考えず、ただただ書きなぐる・・・そんな感じでしたね。そして、登場人物たちに感謝です。手前味噌にはなりますが、いつも素敵なオチを運んでくれます。


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No.593-2
「重なって見えたわけね?」
「そういうこと!」
桜とピンク色の壁が重なり、花が咲いているように見える。
ただ、満開ではなく、薄っすらと咲き始めた感じだ。
「一本だけじゃないから・・・」
壁と重なる全ての桜がそう見えてしまう。
「へぇ~、あんたにしてはロマンティックな話じゃん!」
「それ、どういう意味よ!?」
でも、意味も無く、朝から気持ちがいい。
一人だけいち早く、春を満喫しているからだろうか?
「けど、そろそろ・・・そんな季節ね」
「・・・そうね」
春は複雑は想いが交差する不思議な季節だ。

昨日と同じように、桜の木を見ている。
幻の桜は今日も咲いている。
「早く満開になってね」
人知れず生まれたつぼみに、そっと語りかけてみた。
(No.593完)
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No.593-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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何となく視線が、公園の桜の木に移った。
(・・・えっ?)
まだ春は遠いと言うのに、もう桜が咲いている。
「・・・」
「なんだぁ~!そういうこと!?」
つい、すれ違う人が振り返るほどの独り言を言ってしまった。

「・・・幻の桜?」
「そう!名付けて」
もう何年も通いなれた道なのに、未だに新しい発見がある。
「珍しい品種なの?」
「違うよ」
私から見て、桜の木の裏にマンションが立っている。
お互い道路1本分の距離しか離れていない。
「ますます分かんないけど!?」
「つまり・・・」
そのマンションの外壁は、淡いピンク色だ。
「・・・なんとなく分かってきたわ」
(No.593-2へ続く)
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No.592-2
「多分、それ」
その一匹が、オスかメスかは別にしても・・・だ。
「逆に一匹だけで行動している場合もある」
集団に馴染めないのか、爪弾きにされているのかは知る由も無い。
「・・・なるほど、こんな話なんだ」
「なぜだか、一匹だけ白鷺も居るんだよね」
どの世界にもいる“異端児”といったところだろうか?
「なかなか、できた話じゃない」
「そうでしょ~!」
小川を眺めながら、いつもそんなことを考えていた。
「確か、会社の近くだったわね?」
「多分・・・歩いて、5分もかからないと思う」
珍しく、同僚が興味を示している。
「お昼休みに行ってみる?」
「そうね、たまには外でお弁当食べるのもいいかもしれない」
小川のほとりは、いくつかベンチらしきものもあった。
お弁当を食べるくらいなら困らない。
「でも、色々と思い出しちゃうかも」
「・・・私もよ」

(No.592完)
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No.592-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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通勤途中に見かける光景だ。
そこは、まさに人間社会の縮図と言ってもいい。
「縮図?」
「そう・・・どろどろした部分のね」
清清しい朝には、不釣合いな話だとは思っている。
けど、今、見てきたばかりのホットな話題だ。
「今、小川にいる鳥の話をしてるわよね?」
通勤途中の小さな川に、水鳥が群れている。
種類は分からないが、雰囲気的に“おしどり”としている。
「そうよ」
「どこが、どう関連するわけなの?」
水鳥の群れを何度か見ていると、あることに気付いた。
「基本的には二匹で行動してるのが多いんだけど」
雰囲気的に“おしどり”にしている理由は、ここにある。
「たまに、三匹で行動してるんだよね」
「・・・だからなに?」
当然、友人が突っ込みとも言える質問を返してくる。
「一匹、邪魔ってこと?もしかして、アレ?」
私が答える前に、同僚が自分で答えを導き出したようだった。
(No.592-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.335 天からの贈り物
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性
いわゆる雨男ネタの小説です。ある意味、冬のホタルでは雨女を含めて、お馴染みのテーマです。
小説の内容は作者がよく言う商業的な作りで、小さくまとまった構成になっています。
商業的な作りは正直好きではないのですが、このテーマを選ぶと不思議とショートショート風に仕上がります。
雨男あるいは雨女自体は事実・・・というのも変ですが、そう思わせる事実が数限りなく存在します。
作者の性別を明かしていないので、小説の雰囲気に合わせて、男になったり、女になったりしています。
さて、雨男、雨女は周知の事実として、小説に書いた裏切りのシチュエーションも事実です。
その裏切りの話を小説の前半では隠して、読み手には「?」状態で話を展開させています。
情報社会と絡ませたのも、なんとなく今風な仕上がりになると考えたからです。
今でも、小説と同じようなことが起こっています。単なる偶然の域はとっくに超えているのですが、だからどうなんだ・・・ということもありません。
逆に、小説を作るときに欠かせない、大切な日常なんですよ。


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No.591-2
街灯や信号機、車のヘッドライトなどが光源だ。
これらを受けて、光の輪が生まれる。
見方によっては、なんとも崇高で神秘的だ。
「・・・って、言われても自分しか見えないわけでしょ?」
「それもそうね」
水滴がプリズムのような役目を果たしている。
「メルヘンの世界に居るみたいよ」
光源によって、光の輪の見え方も変わる。
時には赤一色であったり、時には虹色だったりする。
「そうかもね」
やけに、あっさり認めてきた。
「確かにメルヘンかもしれないね」
「でしょ!」
「・・・あなたの頭の中が」

(No.591完)
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No.591-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
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「わぁ~・・・綺麗!」
「・・・えっ?どこ」
隣を歩く友人が、辺りをキョロキョロし始めた。
「ここよ、ここ!」
「だから、どこぉ!?」
自分の息が外気で冷やされ、まつげに水滴となってくっ付く。
その水滴が光を浴びて、幻想的な光の輪を作り出している。
「マスク?」
「・・・じゃなくて、ここ!」
「・・・目?」
マスクをしているせいで、息が鼻との隙間からもれる。
「自分で“目がキレイ”・・・なんていうわけ?」
「違うわよ!さすがに、そんな図々しくないわ」
もったいぶらずに話を先に進めた方がいいだろう。
(No.591-2へ続く)
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No.590-2
「・・・なにさぁ、ニヤニヤしちゃって」
僕の表情を見て、からんできた。
「ごめん!ごめん!ピッタリな仕事だと思ったから」
彼女はサッカー部のマネージャーをしていた。
それもあって、当時から、何かと世話好きだった。
「そうかな?」
表情からすれば謙遜ではなく、本気でそう思っているらしい。
「それはそうと、今日は何の用事?」
呼び出されたにもかかわらず、目的を知らされていない。
「あれ?言ってなかった?」
「私、明日、結婚するの」
「えっ!?そ、そうなの?」
突然の展開に、驚きを隠せなかった。
「もしかして、あいつと?」
「うん・・・」
(そっか・・・付き合いは続いてたんだ)
「だから・・・今日でみんなのマネージャーも終わり!」
全国に散った当時の部員達とは、今でも交流がある。
交流が途切れなかったその訳を今、知った。

(No.590完)
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No.590-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
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「もう!これはこうでしょ!」
顔を合わせるなり、服装を直されてしまった。
「これで・・・いいわね」
彼女と逢うのは、卒業以来、7年振りだった。
「相変わらずだな」
「まだ、ろくに挨拶もしてないだろ?」
「あら・・・そうだった?」
お互い7年の月日を感じさせない・・・そんな再会だった。
「じゃあ、あらためて」
「あ、うん・・・」
逆に、あらたまった挨拶をしたことがない。
「ところで“相変わらず”って、何のこと?」
「それを答える前に・・・今、どんな仕事してるの?」
卒業以来、彼女とは逢っていない。
それに頻繁に連絡を取り合うような仲でもなかった。
「普通にOLしてる」
「どんな内容?」
「一応、秘書してるけど」
思った通り・・・適材適所とはこのことだ。
ある意味、その会社が人を見る目があったも言える。
(No.590-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.323 隣人
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性
冬のホタルの小説は作者が体験したことを基本的に作っています。それから小説の牽引役を男性にするか、女性にするかを決めています。
ところが時々、体験した事実を相手目線で書くことがあります。例えば会社で、女性の上司に怒られる、部下の男性が居たとしましょう。
仮に作者がその女性上司であれば、怒られている部下の男性の心情などを想像しながら書くのです。ですから、シチュエーションとしては100%事実でも心情まではそうとは限りません。
今回の話がそうだとは限りませんが、このようなことも頭の片隅において読んで頂ければ幸いです。
従って、実話度は20%と低めですが、シチュエーション的にはもう少し高めです。
作者が小説上の男性あるいは女性のどちらかは秘密ですが、この小説の女性は、最近よく登場しています。そして、今でも小説と同じような何ともスッキリ、ハッキリしない関係が続いています。


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