[No.588-2]トナカイのかぶりもの
No.588-2
「来る前に聞いていたら・・・」
それなりの準備もできた。
けど、すでに空港へ向かう車の中の会話だ。
引き返すわけにもいかない。
「言おうかどうか迷ったんだけど」
ただ、聞いたら聞いたで、準備しただろうか・・・。
正直、ほっとしている自分に嫌気がさす。
「まぁ、あなたはそんなに気にしないで」
その言葉を素直に受け入れられない自分が居る。
「・・・そうだ!せっかくだから」
車を道路脇に止め、なにやら後部座席をゴソゴソし始めた。
「じゃじゃ~ん!」
季節柄、おそらくトナカイであろうかぶりものだった。
さすが営業らしいアイテムだ。
「ねぇ、これを被って、写メしない?」
「元気出してもらうために」
もちろん、私が被る羽目になる。
けど、私なりに、最高の笑顔とエールを贈るつもりだ。
(No.588完)
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