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2015年1月

[No.588-1]トナカイのかぶりもの

No.588-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------

「えっ!知らなかった・・・」

かつての勤務地に出張でやってきた。

「・・・だと思った」

昔、一緒に働いた同僚が病気で入院しているという。

「ごめん・・・」
「ううん、だってあまり大きな声では話してないからね」
「・・・病状は聞いてもいい?」

表情が冴えない。
何となく、いやな予感がする。

「・・・そうね・・・良くはないわね」

少し間をおき、考えてから答えてくれた。

「そうなんだ」

聞けば、二ヶ月くらい前から入院しているらしい。

「でも、会社で健康診断とかやってるでしょ?」
「レントゲンには写らなかったんだって」

詳しくはないが、聞いたことはある。
臓器に隠れて見えない位置で発症するケースだ。

(No.588-2へ続く)

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ホタル通信 No.233

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.343 枯れた花 
実話度:★★★☆(60%)
語り手:女性

ポインセチアは買ったものではなく、わかりやすく言えば抽選の景品として貰ったものです。

貰いものだし、それにすぐに枯れてしまうものだと思っていましたから、正直そんなに身を入れて育てていたわけではありませんでした。
それが・・・植物の生命力ってすごいですね。1週間が過ぎ、2週間が過ぎ、気付けば数ヵ月が経過していました。その頃からでしょうか・・・少しづつ愛情が芽生え始めてきました。

そんな矢先、体を動かしたせいもあって、少し汗ばむ日がありました。その時に、その年初めてのエアコンの冷房運転をしたことがおそらく原因でポインセチアは急激に弱って行きました。
小説にも書いた通り、寒い冬を越してきたので・・・まさかそうなるとは思ってもみませんでした。

別の植物を育て始めた・・・これは、いちごの苗なんです。
タイミング的に重なったこともあって、ラストは別の植物を育て始めたことによる浮気が、ポインセチアを枯らした原因のような感じにしています。
丁度その頃、人間界でも似たようなことがあったものですから。
T233
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[No.587-2]私の名は竜王

No.587-2

主役ではないけれど、準主役級の役だった。

「なんで、よりによって・・・」
「でも、結構、似合ってたよ」

私は王様の役だった。

「王様は王様でも“女王様”が良かったんだけど!」

もちろん男女共学の学校だ。
普通に考えれば、男子が王様役になるはずだ。

「セリフもバッチリだったよ」

私の想いとは裏腹に、劇は大成功を収めた。

「今でもセリフ覚えてる?」
「覚えてるよ、とくに“アレ”なんか・・・」

人間界からの侵入者を前に王様は、こう声を発した。

「“私の名は竜王!人間よ、このわしになに用じゃ!”」
「あった、あった!」

竜王の前で、ひれ伏す人間・・・。
その人間は、私の初恋の相手だった。
S587
(No.587完)
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[No.587-1]私の名は竜王

No.587-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「最近、お姫様の格好をした子供によく出会うよね」
「ほら・・・アレでしょ?」

去年、大ヒットした映画の影響だろう。

「それで、思い出したことがあるんだけど・・・」

友人が小学生の頃の話をし始めた。
友人とは幼稚園からの付き合いになる。
それに中学に入る前までは、クラスもずっと同じだった。

「話の流れからすると、もしかしてアレ?」
「正解!!」

三年生の時だった。
いわゆる“文化祭”のような催し物が開催された。

「今でも・・・気にしてるんだから」

私たちのクラスは、寸劇に毛が生えた程度の演劇だった。
オリジナルの物語は先生が考えた。

「あっ!やっぱり?」

舞台でなにか大きな失敗をしたわけじゃない。
問題は配役にあった。

(No.587-2へ続く)

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[No.586-2]巨人と私

No.586-2

「そんなこともあるんじゃない?」

珍しく友人が理解をしめしてくれた。

「なにか心境の変化でも?それとも悩みごと?」
「えっ!?・・・ど、どうだろう」

あらためて聞かれて気付いた。
特に思い当たるものがない。

「ごめん・・・自分でもよくわからない」
「だ・か・ら、そんなこともあるって言ったのよ」

もしかしたら、潜在的に不安を抱えているのかもしれない。

(それに気付いていないだけなんだろうか?)

「まっ、あまり気にしないことね」

今日の友人はやけにやさしい。

「持つべきものは友ね!」
「ところで、来週、引越しだったわね?」

お礼と言うわけじゃないけど、手伝いのひとつでもかって出たい。

「ありがとう、手伝ってくれるの?」
「もちろんよ!」
「じゃ、引越し先で待ち合わせね」

そう言うと、あの巨大なマンションを指差した。
S586
(No.586完)
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[No.586-1]巨人と私

No.586-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・なんか、鼻に付くんだよね」

言葉の使い方は、決して正しいとは言えない。

「えっ!私のこと!?」
「ごめん、そうじゃなくて・・・あれよ、あれ・・・」

岐路に着くために、同僚と駐輪場に向かう。
その道すがら、巨大なマンションがふたつ左に見える。

「マンション・・・?」
「そう!」

もちろん日中も見えてはいる。
それが夜になると、窓の明かりと共にライトアップもされる。
・・・いやおうなしに、その存在感を感じる。

「別にマンションも、住んでる人も悪くないけど」
「なんか、威圧的で・・・」

単なる妬みだけなのかもしれない。

「まぁ、確かに威圧的ではあるけれど」

まれに見る巨大さだ。
そのマンションから見下されているように感じてしまう。

「だから、鼻に付くってことね?」
「・・・被害妄想って分かってはいるけど」

なぜだか、素直にそれを見ることができない。

(No.586-2へ続く)

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ホタル通信 No.232

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.285 誰も居ない助手席
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

実話度100%であり、ほぼ実話を再現しています。ですが、いつものお約束通り、作者は送ってくれた彼なのか、送られた彼女(美紀)なのかは秘密です。

内容は読んで頂いた通りであり、当ブログではもはや定番となっている“他の小説とのリンク”関係があります。
小説冒頭に書いている“ふとあの夜を思い出す”がそれであり、「No.24 一人だけの入学式」がリンク関係にある小説です。
また、No.24については「ホタル通信 No.072」でも紹介している通り、決して明るい話ではありません。
時系列で言えば、N0.24の後に彼女を自宅まで送っていくシーンを描いたものです。
ただ、直接的に描いたのではなく、それ自体を回想シーンとして描いています。

もう少し全体像を話せば、N0.24の前にも一連の話が存在しています。つまり、この小説は三部構成になっており、それだけ、印象深く、超短編を売り物にしている当ブログであっても、一話ではとても収まりきれませんでした。

回想から戻った場面がラストシーンです。
手前味噌で恐縮ですが、とても気に入っている表現であり一場面です。
T232
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[No.585-2]冬だから

No.585-2

「せいじゅうろうは大変やろな・・・」

唐突に話題が変わった。
変わったというより、狙っていた可能性が高いが。

「なにが・・・さ?」
「寒いやろ、裸なんやし」

記憶では、リラックマは着ぐるみだ。
確か、“水玉模様”の中身が存在する。
そうなると、正確には裸ではない。

「・・・か、な?」

とは言うものの強く否定するわけにもいかない。
せいじゅうろうはリラックマであって、リラックマではない。

「でも、大丈夫なんやで!」

裸と言いながらも、大丈夫と言ったり・・・。
相変わらず話がややこしい。

「なんでさ?」
「ほら、見てみい」

そう言うと、カバンからせいじゅうろうを取り出した。

「冬だから毛が伸びたみたいやで」
S585_3
(No.585完)
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[No.585-1]冬だから

No.585-1  [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「毎日、寒い日が続くねぇ~」

菜緒(なお)が珍しく、気象ネタで話しかけてきた。

「・・・そ、そうだね」

普段、口にしないセリフだけに、よそよそしさを感じる。
きっと何か企んでいるにちがいない。

「こんな時には暖かい格好するのが一番やね」
「・・・の割には薄着じゃない!?」

一応、ダウンジャケットは羽織っている。
けど、中は初夏に似合いそうな服装だ。

「せやかて、建物の中は暑いやん」

確かに必要以上に暖房が効いているところも多い。
現に、俺も少し汗ばんでいる。

「そうなんだけど、人の目もあることだし・・・」

自分が望まなくとも、それ相当の格好は必要だ。
好奇の目で見られてしまうからだ。

「それにしても、やけに拘るね」
「寒いもんは寒いやろ?」

今回は、純粋にそれだけなんだろうか?

(No.585-2へ続く)

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[No.584-2]白いスカーフ

No.584-2

「少し前から、白いスカーフが素敵な・・・」
「ちょっと!」

案の定、絶妙なタイミングで話しに割り込んできた。

「私を目の前にして、よくそんなこと言えるわね!」

予想以上に怒っている。
これはこれで面倒だ。

「白いスカーフが素敵な、としか言ってないだろ?」
「最後まで聞かなくても分かるわよ」

確かに、何の話をしているのか容易に予想できる。
そうなるように仕向けたのだから・・・。

「気になる?」
「・・・と言うより、そうしたんでしょ?」

これまた、バレているようだ。

(そんなに顔に出るのかな・・・)

「そうなんだけど、実はさぁ・・・」

素敵な・・・に続く言葉は“女性”ではない。

「分かってるわよ」
「どうせ、野良猫でしょ?」

彼女は猫が嫌いだ・・・ただ、なんで分かったんだろう?
S581
(No.584完)
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[No.584-1]白いスカーフ

No.584-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
始めて出会ったは、二週間前だ。
それ以来、頻繁に出会うようになった。

「・・・さっきから、なに、ニヤケてるの?」

(・・・しまった!)

良いことも悪いことも顔に出やすいタイプだ。

「い、いや・・・なんでもないよ」

このセリフに、彼女が僕を睨みつけてきた。
やはり・・・バレているようだった。

「本当はちょっと良いことがあって」
「・・・だと思った」

正直に話したのはここで話が終わると思ったからだ。
いつも、話に深入りはしてこない。

「どんなこと?」
「へっ!」

予期せぬ突っ込みに何とも間の抜けた返事を返してしまった。

「どんなことって・・・」
「・・・話せないこと?」

もちろん話せない内容じゃない。

(それなら・・・そうだ!)

新年早々、彼女をちょっと、からかってみることにした。

(No.584-2へ続く)

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ホタル通信 No.231

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.313 すっぱいぶどう 
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

読み返してみると、話の構成に少し散らかっている感がありますね。

自転車のパンク、そして自宅まで押して帰るためのモチベーションについては、事実をもとにしています。
誰しも・・・とは言えませんが、人は多少そんなところがあると思っています。
人気のスイーツが買えなかったら「そんなに美味しくないだろう」、テレビ番組を見逃したら「そんなに面白くなかっただろう」と、いわゆる“すっぱいぶとう”的な考えをしてしまいます。

もっと大袈裟に言うと、例えば電車に乗り遅れたら「乗ってたら大事故に巻き込まれていたけど、それを回避できた」なんてSF映画のようなことを考えたりします。
こうなると、もはや妄想の世界ですが、良く言えば“ポジティブ思考”と言えなくもありません。

話を戻すと、歩けば自宅まで小一時間以上かかる現実に対して、何とかしてモチベーションを保たないと、途中で挫折してしまいそうになります。
ラスト付近はオチをつけるために、やや強引に“彼氏”の話をねじ込んだ感は否めません。
・・・ですが、何となくそれらしく終わることができました。キチンとではなく、あくまでもそれらしく終わらせています。
T231
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[No.583-2]知れば知るほど

No.583-2

「ほら、こうして二人きりで逢うようになったじゃない?」

彼とは十年来の知り合いだ。
でも、こうして親密に話すようになったのは、一年くらい前からだ。

「あっ、うん・・・」

ましてや二人きりで逢うようになったは、ごく最近だ。

「あなたのこと、知れば知るほど・・・なんか・・・ね」

別に彼のことを“男性”としてみているわけじゃない。
でも、知れば知るほど、別れがつらくなる。

「・・・それは、僕もだよ」
「多分、同じ気持ち」

友達以上恋人未満とはよく言ったものだ。
今の二人には、まさしくこの言葉がピッタリ当てはまる。

「明日・・・早いの?」
「ううん、前よりは少し余裕があるよ」

明日の午後早く、大阪に戻るみたいだった。

「そっか・・・」

しばらくの間、沈黙が続いた。
お互い、“次、いつ逢える?”という言葉を切り出せないまま・・・。S583
(No.583完)
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[No.583-1]知れば知るほど

No.583-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「・・・どうした?」
「えっ・・・あ、なんでもない・・・」

(しまった・・・)

つい、考え事をしてしまった。
ただ、時と場所を選ぶ必要がある。

「僕の話・・・つまらないかな?」

思った通り、勘違いされた。
それもそのはずだ。
お酒の席での物憂げな表情は、大きな誤解を招く。
特に二人きりの場合は。

「そんなことないよ!」
「何だかさっきから“心ここにあらず”って感じだけど」

確かにそうだと思う。
けど、話がつまらないからではない。

「ごめん・・・」
「悩み事や心配ごとでも?」

そうとも言えるし、違うとも言える。

「正直に言っていい?」

別に愛の告白をするつもりではない。
それに近い話をするだけだ。

(No.583-2へ続く)

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[No.582-2]クリスマス

No.582-2

「だろ?」

ジョークとも本気ともとれる程度が丁度良かった。
その点、栄養剤は適役だった。
ふたりの距離を縮めるためには・・・。

「でも、他の女性にそんなことしないでよ」
「間違いなく、引かれるから」

言われなくても理解している。
引かれるどころか、それ以上の結果が待っているだろう。
見方によっては、栄養剤は“精力剤”だからだ。

「分かってるよ」

そもそも彼女じゃなければ、そんなリクエストすら来ない。

「まぁ・・・お蔭様で元気になったけどね!」
「一番効くの、選んだつもりだよ」
「うん・・・それは分かってる」

僕たちはいまだ、照れ隠しの会話が続いている。
S582
(No.582完)
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