[No.576-2]いもケーキ
No.576-2
「どうして?」
「ほら、なんとなく・・・」
本物のケーキではなく手作りで、しかも材料は・・・。
「・・・貧乏くさい?」
「まぁ・・・な」
特に家が貧しかったとは思っていない。
ただ、随所にそんなところがあった。
「けどな、家庭を持つようになって思ったんだ」
「・・・案外、大変でしょ?」
当時、若くして2人の子供を養うのは大変だったと思う。
「父なりの愛情表現なのかな・・・って、今頃気付いたんだ」
父も僕も満面の笑みだ。
「そう言えば、何の記憶もないって言ってたよね?」
「あぁ、見た目も、どんな味だったのかも」
今となっては、逆に食べてみたいほどだ。
「まっ、今更そんなこと言っても、もう無理だし」
「それがさぁ・・・」
「・・・えっ!?」
父が妻にコッソリ教えていたようだった。
いつか僕がこの話題を口にしたときに、食べさせてやれと・・・。
(No.576完)
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