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2014年11月

[No.576-2]いもケーキ

No.576-2

「どうして?」
「ほら、なんとなく・・・」

本物のケーキではなく手作りで、しかも材料は・・・。

「・・・貧乏くさい?」
「まぁ・・・な」

特に家が貧しかったとは思っていない。
ただ、随所にそんなところがあった。

「けどな、家庭を持つようになって思ったんだ」
「・・・案外、大変でしょ?」

当時、若くして2人の子供を養うのは大変だったと思う。

「父なりの愛情表現なのかな・・・って、今頃気付いたんだ」

父も僕も満面の笑みだ。

「そう言えば、何の記憶もないって言ってたよね?」
「あぁ、見た目も、どんな味だったのかも」

今となっては、逆に食べてみたいほどだ。

「まっ、今更そんなこと言っても、もう無理だし」
「それがさぁ・・・」
「・・・えっ!?」

父が妻にコッソリ教えていたようだった。
いつか僕がこの話題を口にしたときに、食べさせてやれと・・・。
S576
(No.576完)
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[No.576-1]いもケーキ

No.576-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今でも胸が熱くなる一枚の写真がある。

「これって、あなたの誕生日?」

父親のひざの上に座っている僕。
その手前にはロウソクが数本、輝いている。

「うん・・・何歳かは覚えてないけど」

白黒でしかも画質もそんなに良くはない。
さすがに、本数まで数えるのは難しい。

「ロールケーキね、これ?」
「まぁ・・・かたち的には」

自分も聞かされるまで、ロールケーキだと思っていた。

「違うの?」
「違うわけではないけど、なんて言うか・・・」

つまり、中身と言うか、材料が違う。

「これ、さつまいもで出来てるんだって」
「さつまいも!?」

これを作ってくれたのは父らしい。
母からそれを聞かされた。

「さすがに、何の記憶も残っていないけど」
「へぇ~・・・器用なんだね」

ただ、あまり他人にはしたくない話だった。

(No.576-2へ続く)

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ホタル通信 No.227

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.370 一枚の写真
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

全体的な雰囲気はほぼ事実であり、主軸である一枚の写真も存在します。

たんすの中に雑然と入れっぱなしになっていた写真。ある時、意を決して整理を始めました。ただ、その量たるもの・・・少し引いてしまうくらいでした。
その中で見つけた一枚の集合写真。ここから小説はスタートして行きます。

ところで、数有る写真の中から、なぜ、その写真に目が行ったのかは、ラストを読んで頂ければ分かります。
ただ、当時、顔がタイプであるということを、さほど意識していなかったような気がしています。

小説の通り、別れ際に何か会話した記憶があります。ただ、どんな内容であったかは定かではありません。
それでも、どちらからともなく、ごく自然に会話したことは今でも鮮明に覚えています。
別れ際、去り際に、急に名残惜しくなってしまう、その感覚でしょうか・・・。それと、もうひとつ、覚えていることがあります。
それは戻る場所が同じ北海道だったということです。
ツアーは関空到着を最後に、そこから各々帰路に就く流れでした。それこそ小説のオチではありませんが、偶然なのか必然なのか、お互い、北海道に向けて帰路に就いたわけです。

ただ、小説の通り、帰路は別々であり、一期一会・・・ありきたりですが、そんな言葉がよく似合います。
S227
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[No.575-2]紅葉狩り

No.575-2

「せやね・・・満員電車はいややと思うし」
「カバンの外なら、迷子になってしまう可能性もあるだろ?」

外れて失くしてしまうのではない。

「スマホにも付けられないし」

もともと、ガラケーにかろうじて付けていた。

「紅葉でも見せてあげたいなぁ」
「・・・紅葉?」
「それなら来週、みんなで行こうか?」

色々事情があり、菜緒(なお)としばらく出掛けていない。

「・・・ごめん、うちは無理やねん」
「そっか・・・」
「みんなで行きたいねんけど」

紅葉はもって、後数週間だろう。

(さて・・・どうしたものか・・・あっ!そうだ)

「ちょっと、待ってて!」

今ならいくらでも落ちている。
S575
(No.575完)
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[No.575-1]紅葉狩り

No.575-1  [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「最近、せいじゅうろうはどう?」

ためらいもなく聞ける自分に、頼もしささえ感じる。

「そう言えば、遊んであげてへん」

最近は専ら、ご当地リラックマの話をしている。
仕事上、出張が増え、全国を飛び回ることが増えたからだ。

「だろ?」
「俺も連れて歩いていないし」

以前は、出張に連れて歩いていた。
菜緒(なお)が、俺のカバンにコッソリ入れたことが始まりだ。
それ以来後、連れて行くようになった。

「しばらく、ここに座ったままだよな?」

一応、パソコンデスクの上が彼らの居場所だ。

「連れて行ってあげたいけど・・・」

荷物が多く、カバンの中に居るには窮屈だろう。
けど、決して“つぶされる”からとは表現していけない。
彼らは“物”ではないからだ。

(No.575-2へ続く)

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[No.574-2]転勤を知る

No.574-2

「それに、誰にも・・・という割には、しゃべってない?」

これでふたつ。

「そんなことより、びっくりよねぇ~」

私としては目の前の同僚の方が、よほどびっくりだ。

けど、転勤って案外、そんなところがある。
私も似た経験があるからだ。

「私も・・・人づてに転勤を知ったもん」

相手は当然、私は知っているものだと思っていた。

「だから、“えぇぇー!”って、なったもん、お互い」
「でも、そんなこと多いよね」

そう・・・あらためて考えると、そんなことだらけだ。
転勤する本人より、他人の方が先に知ることが多い。

「けどさぁ、ひどい話よね?」
「一応・・・聞くけど、何がひどいの?」
「だってさ、他人から知らされるわけじゃない!」

その原因を作っているのは、一体、誰なんだと・・・。
S574
(No.574完)
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[No.574-1]転勤を知る

No.574-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、ねぇ・・・知ってる?」

同僚が小声で話掛けてきた。
・・・となれば、内容はいくつかに絞られる。

「で、今度は誰と誰が付き合ったわけ?」
「違うわよ」
「じゃあ、別れたの?」

社内一の情報通だ。
まれに有意義な情報を運んでくることがある。

「営業の・・・さん、転勤なんだって」
「うそぉ!」

そんなに親しくもないが、色々とお世話にはなった。

「本人もまだ知らないから、誰にも言っちゃだめだよ」

そのセリフにふたつの矛盾を感じる。

「本人が知らないのに、よくあなたが知ってるわね?」

これがひとつ。

(No.574-2へ続く)

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ホタル通信 No.226

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.366 スカーフの謎
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

嘘っぽい、作り物のような話ですが、実話度はそこそこ高めです。

話の主軸であるスカーフは事実であり、本当にロッカーの中に入っていました。それに、入れた人に心当たりがあったこと、そしてその人が会社を辞めたことも事実です。
事象としては“事実”ですが、“真実”は今でも分かりません。

その人とは結果的に、何もなく終わったのですが、好意をもたれていたのは知っていました。その当時はまだ恋愛に臆病と言いますか・・・一歩、踏み出せずにいました。
ただ、ある日、彼女の露骨な態度が、“お局さん”の耳に入ってからは、彼女に対する風当たりが強くなって行きました。

会社を辞めたのは、それが原因だったかどうかは、分かりません。ですが、そう考えるのが妥当でした。
そして、辞めた日に、スカーフがロッカ-の中に入っていたわけです。直感的に・・・彼女の物だと思いました。

スカーフを入れた意味・・・分からない真実を、逆に小説のオチにしてみました。きっとこんな意味があったんじゃないかと。
・・・さん、違いますか?
T226
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[No.573-2]祝電

No.573-2

「それで印象に残ってるわけね」

色々あったからこそ、逆に信頼関係が生まれた。

「その中でも特に彼女は・・・」

人懐っこくて、誰に対しても分け隔てなかった。

「そっか・・・なら、気合入れて考えなきゃね!」

会社の先輩として、そして夫婦の先輩としても。

「ご結婚おめでとうございます。
 
先輩からのアドバイスです。
夫婦喧嘩をしたら、夫から先にあやまること。
そして妻は許してあげること。
そのあとに、妻もあやまること。
そして夫は最後にもう一度あやまること。
そしたら、もう喧嘩のことは忘れること。
でも、時々思い出して二人で笑うこと」


「へぇ~・・・あなたにしては考えたわね?」

あれから数日間、悩んだ。
そして出した結論がそれだった。

「だろ?」

「でも、私たちみたいなのは気のせいかしら?」
S573
(No.573完)
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[No.573-1]祝電

No.573-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・そうね」

祝電と言えば、定型文しか送ったことがなかった。
ただ、今回はそうはいかない。

「確か・・・元、教え子だよね?」
「あぁ、もう10年前になるけど」

僕が、まだ新入社員の教育係りだった時代の話だ。
彼女は教え子のひとりにすぎない。

「それにしては、肩入れしてない?」

それは自分でも分かっている。

「けど、変な意味じゃないよ」

それも分かっている。
教え子はそれこそ大勢いる。
だからこそ、なぜ彼女だけ・・・ごく自然な疑問だ。

「当時、彼女を含めて・・・」

ある年、男性社員に混じって6名の女子社員が入社した。
一度に入社する数としては異例だった.

「ほら、数が居ると・・・やっぱりね」

色々なトラブルが起きた。
笑えるものから、笑えないものまで。

(No.573-2へ続く)

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[No.572-2]ドクターイエロー

No.572-2

「・・・で、どうなの?」

友人の言いたいことは分かっている。

「それは・・・」

程度に差はあれど、毎日、良いことも悪いこともある。

「宝くじ当たったとか、お金拾ったとか」
「どっちもだよ」
「・・・うそ!!」

(だから、程度に差があるって・・・)

「3000円当たって、10円拾ったけど?」
「・・・び、微妙!」

これくらいなら、何度もある。
ドクターイエローに出会う前から。

「他には、なにかないわけ?」
「彼が・・・できたよ」
「な~んだ・・・えっ!うそぉ!?」

友人の目に黄色い電車が見えたのは気のせいだろうか?

「これは・・・間違いないね!」
「だから、これくらいなら何度もあるって!」
S572_3
(No.572完)
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[No.572-1]ドクターイエロー

No.572-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それは突然の出来事だった。

「あっ・・・あぁぁ!!」

奇声にも似た私の声も、駅のホームには勝てなかった。

「幸せになれるって、噂もあるよね?」

そのことは何となく知っていた。

「うん、いわゆる都市伝説だけど」

至極、日本的な発想だ。
珍しいものには、神秘的な力を求めずにはいられない。

「けど、よく遭遇できたわね?」

最近、仕事の都合であちこち出張するようになった。
でも、月に一度あるかないか・・・そんな程度だ。

「でしょ!私もびっくりしたもん」

降り立った駅のホームの目の前にそれが居た。

「思わず、声が出ちゃったもん!」

特別、興味があったわけじゃない。
それでも、さすがにそれを目の前にすると声が出てしまった。

(No.572-2へ続く)

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ホタル通信 No.225

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.357 スクールバック
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

実話度はかなり低めです。タイトルであるスクールバックとちょっとした会話以外は、全て創作です。

相手の女性は当時、20代前半の人でしたが、やや童顔なこともありスクールバックが不自然ではありませんでした。
いつもスクールバックを含めて、2つのバックを持ち歩いていて、男性の目からすれば「なぜそんなに荷物が?」といつも不思議に思っていました。

その不思議が小説の主軸であり、何が入っているのか分からない状態をコミカルに描いてみました。実際に中身をゴソゴソすることはなかったのですが、別に隠そうともしていなかったのは事実です。

ホタル通信を書くにあたっては、いつも読み直しているのですが、今回のオチの部分・・・2つの設定があるということに今更ながら気付きました。
もちろん、小説を作った当時はそこまで考えていませんでした。
ひとつ目は、去年あげ損ねたチョコがバックに残っていたという設定、ふたつ目は今年あげようとしていたチョコをさりげなく出したという設定です。

当時は、前者の設定でした。最後のセリフ「・・・って、ことは・・・」には“腐っている?”“賞味期限が切れている?”のようなセリフが続きます。
ですが、後者でも通じますよね。それは、さりげなくチョコを出された後「・・・って、ことは・・・」には“僕のことが好きってこと?”のようなセリフが似合います。

いずれにせよ、いつも重そうに抱えていた記憶があります。
もしかしたら、そこには彼女なりの夢が詰まっていたのかもしれません。
T225
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[No.571-2]予行演習

No.571-2

「名前は分かんないけど・・・」

朝方、ある鳥の鳴き声で目が覚める。
さえずりという優雅なレベルではない。

「それがさぁ、半端なく甲高くて」

それこそ、耳をつんざく鳴き声だ。
一度、目が覚めたら二度と眠りに付けない。

「それは大変ね・・・」

もともとかなり神経質なことも災いしている。
少しの物音でも寝られないタイプだし、目も覚めてしまう。

「ここ数日、寝不足で・・・」

それに、イライラ度も頂点に達しようとしている。

「慣れるしかないんじゃない?」
「・・・私には無理ぃ!」

不思議なことに、慣れれば慣れるものだ。
あの鳥の鳴き声が気にならなくなっていた。

「最近、顔色もいいじゃない?」
「そ、そうかなぁ」
「ところで、彼とは上手くやってけそう?」

最近、彼と結婚を前提に同棲を始めた。
彼のいびきが気にならないのは、あの鳥のお陰だ。
S571
(No.571完)
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[No.571-1]予行演習

No.571-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」

さっきから、目は覚めている。
ただ、目覚めは最悪だった。

「ねぇ~、ちょっと聞いてよ!」
「なによ、朝からうるさいわね・・・」
「うるさいぃぃ!?」

今、一番聞きたくない言葉だ。

「ちょ、ちょっと・・・過剰反応過ぎない?」
「だ、だって!」

ここ数日間、ある音に悩まされている。

「・・・なんの音?」
「まぁ・・・音と言うより鳴き声なんだけど」

最近、引っ越しをした。
あれこれ詮索されたが、特に意味はなかった。

「イヌそれともネコ?」
「ううん・・・どちらでもない」

同僚が不思議そうな顔をしている。

「まさか、ニワトリ!?」
「私、どこに住んでるのよ!?」

でも、あながちハズレてはいない。

(No.571-2へ続く)

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[No.570-2]ひとりぼっちのブランコ

No.570-2

「でも、そのお蔭で仲良くなれたよね、私たち・・・」

彼女は転校生だった。

「そうだっけ?」

言葉とは裏腹に今でも鮮明に覚えている。

「人見知りが激しから、なかなかクラスに馴染めなくて」
「そんな時、ブランコに誘ってくれたよね?」

ひとりでブランコに乗る彼女を何度か見かけた。

「ひとりで乗るより、大勢の方が楽しいだろ?」

それに、小山のお蔭でブランコの人気も復活した。

「さすがに、小山は無くなったわね」
「そりゃ、そうだろ」

同窓会の帰り、ブランコに立ち寄ってみた。
懐かしさの中で、自然に足がブランコに・・・

(・・・向かっていない?)

そう言えば、彼女からブランコに誘われた。

「・・・どうして」
「今度は私から誘ってみたの」

その言葉が妙に艶めかしい。
・・・時の流れも悪くない。
S570_2
(No.570完)
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[No.570-1]ひとりぼっちのブランコ

No.570-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「覚えてる?」
「もちろん、覚えてるよ」

かつて通った小学校にブランコがあった。
もちろん、それ自体は何も珍しくはない。

「子供は新しい遊びを考える天才よね」

現在の子供にも同じことが言える。
でも、当時の僕らは、それ以上だった。

「そりゃそうさ!良い意味で何もなかったからな」

スマホもゲーム機もない時代だった。
遊びは自分たちで考えた。

「今なら即、禁止されるね」
「・・・だろうな」

ある日、ブランコの横に僕らの背丈ほどの小さな山ができた。
できた理由は知らない。
・・・というより、知る必要もなかった。

「次の日には・・・だろ?」

小山から古タイヤを転がす遊びが生まれた。
古タイヤは前から遊び道具として置いてあった。

「それに当たらないように必死で避けたよね?」
「あぁ、小山に近い人は大変だったよな」

小山からブランコに向けてタイヤを転がす。
当たった人が、今度は転がす番になる。

(No.570-2へ続く)

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ホタル通信 No.224

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.293 小さな命
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

相手との会話のシーンを除けば、ストーリーとしてはほぼ事実です。

セミは夏のイメージですよね?
それに夏の始まりも夏の終わりもイメージさせてくれる存在です。セミが一匹、もう一匹と競うように鳴き始めたら、夏本番です。
一方、夏の終わりはセミが鳴きやんだことよりも、死んだセミに群がるアリの大群を見たとき、強烈にそれを感じます。
夏真っ盛りの時は、人間のことなんかお構いなしで、朝から大合唱している彼らでも、自然の法則には逆らえません。

一度は7階の窓から放り投げようとしたのですが、あまりにも手に伝わる弱々しさに、さすがの私も躊躇しました。
特別、慈悲深いわけでもないのですが、1階に下りるついでに・・・と思い、行動に移しました。

不思議なことに、今でもあの弱々しさを手が覚えています。
でも、小説に書いた通り、たくましさも感じました。
決して、消え行く命に身を任せる・・・というのではなく、最後までもがき生きようとする姿に、ちょっと感動すら覚えました。

今年の夏も「朝からうるさい!」とヒステリックになりつつもなぜか嬉しそうな、そんな自分が居ました。
T224
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