[No.567-2]雪の壁
No.567-2
「ある日、物珍しさもあったから、散歩に出掛けたの」
折角なので、普段は通らないような道をあえて選んだ。
それが間違いのもとだった。
「それで迷子に?」
「うん、真っ白な壁に囲まれて方向感覚が麻痺しちゃって」
帰り道を選んだつもりが、見知らぬ場所に出てしまった。
山の手に住んでいたせいか、曲がった道も多かった。
それがいっそう、方向感覚を鈍らせる。
「それでどうなったわけ?」
気付けば、陽も傾きかけていた。
「そしたら、覚えのある匂いがしてきて」
家のすぐ近くに独特の匂いがする焼肉屋があった。
「よく見たら、家の裏手に居たの」
手軽にスマホでナビできる現在ではあまり聞かない話だと思う。
「今でも覚えてる・・・当時のこと」
「それは迷子のこと?それとも匂いのこと?」
「もちろん、両方よ」
| 固定リンク | 0
「(023)小説No.551~575」カテゴリの記事
- [No.575-2]紅葉狩り(2014.11.26)
- [No.575-1]紅葉狩り(2014.11.25)
- [No.574-2]転勤を知る(2014.11.23)
- [No.574-1]転勤を知る(2014.11.22)
- [No.573-2]祝電(2014.11.18)
コメント