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[No.567-2]雪の壁

No.567-2

「ある日、物珍しさもあったから、散歩に出掛けたの」

折角なので、普段は通らないような道をあえて選んだ。
それが間違いのもとだった。

「それで迷子に?」
「うん、真っ白な壁に囲まれて方向感覚が麻痺しちゃって」

帰り道を選んだつもりが、見知らぬ場所に出てしまった。
山の手に住んでいたせいか、曲がった道も多かった。
それがいっそう、方向感覚を鈍らせる。

「それでどうなったわけ?」

気付けば、陽も傾きかけていた。

「そしたら、覚えのある匂いがしてきて」

家のすぐ近くに独特の匂いがする焼肉屋があった。

「よく見たら、家の裏手に居たの」

手軽にスマホでナビできる現在ではあまり聞かない話だと思う。

「今でも覚えてる・・・当時のこと」
「それは迷子のこと?それとも匂いのこと?」
「もちろん、両方よ」

焼肉屋での会話だった。
S567
(No.567完)
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