[No.558-1]壊れたおもちゃ
No.558-1
登場人物女性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
ここに引っ越して来てから二度目になる。
今後、夏の風物詩になっていくのかもしれない。
「・・・だろうね」
思った通り、逃げる気配はまるでない。
逃げようにも逃げられないと行った様子だった。
「前にもその話、聞いたよね?」
「うん、話したよ」
本来は感動的な話として終わるはずだった。
それが、女子らしくない私の行動が先に立ってしまった。
「今回もまた、アレなの?」
「ううん、ちょっと違う」
お互い“アレ”で通じているのが面白い。
「元気がないのは同じなんだけど・・・」
エレベーターホールの壁に、セミがとまっていた。
近づいても逃げる気配はない。
手を伸ばせば届く距離だった。
「それだけで、息も絶え絶えと分かったわ」
もちろん、捕まえるのはたやすい。
でも、前のように手は伸ばさなかった。
| 固定リンク | 0
「(023)小説No.551~575」カテゴリの記事
- [No.575-2]紅葉狩り(2014.11.26)
- [No.575-1]紅葉狩り(2014.11.25)
- [No.574-2]転勤を知る(2014.11.23)
- [No.574-1]転勤を知る(2014.11.22)
- [No.573-2]祝電(2014.11.18)
コメント