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[No.558-1]壊れたおもちゃ

No.558-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
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ここに引っ越して来てから二度目になる。
今後、夏の風物詩になっていくのかもしれない。

「・・・だろうね」

思った通り、逃げる気配はまるでない。
逃げようにも逃げられないと行った様子だった。

「前にもその話、聞いたよね?」
「うん、話したよ」

本来は感動的な話として終わるはずだった。
それが、女子らしくない私の行動が先に立ってしまった。

「今回もまた、アレなの?」
「ううん、ちょっと違う」

お互い“アレ”で通じているのが面白い。

「元気がないのは同じなんだけど・・・」

エレベーターホールの壁に、セミがとまっていた。
近づいても逃げる気配はない。
手を伸ばせば届く距離だった。

「それだけで、息も絶え絶えと分かったわ」

もちろん、捕まえるのはたやすい。
でも、前のように手は伸ばさなかった。

(No.558-2へ続く)

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