[No.556-2]悲しみは深く
No.556-2
「お墓にも行ったんでしょ?」
「うん・・・それが目的だったから、ご家族と一緒にね」
道中に、鮮やかなひまわりを何本か買った。
生前の彼女はまさしく、ひまわりのような人だった。
「とにかく、元気娘だったのよね」
時には失恋に落ち込む私を励ましてくれた。
「それも・・・大阪に来てだよ」
「え、えっ!?わざわざ、札幌から!?」
そんな彼女だったから、なかなか事実を受け入れられなかった。
「けど、花をお供えしたら、急に・・・ね」
墓石に刻まれた友人の名前は、現実そのものだった。
「喜んでると思うよ」
「そうだね、そんな出来事もあったし」
「う、うそ・・・」
目の前の友人の顔が青ざめる。
「だ、大丈夫よ!単にみつばちが一匹、寄ってきただけだから」
忙しそうに、ひまわりや他の花を行き来していた。
「周りのお墓にもたくさん花が供えてあったのに・・・」
まるで、食いしん坊の彼女ならではの行動に見えた。
「・・・それで、ようやく受け入れようと思ったの」
「そうね、彼女もそう願ってるよ」
悲しみは深い・・・けど、故人を想う気持ちよりは浅い。
(No.556完)
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