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2014年9月

[No.562-1]涙の量

No.562-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
悲しいのに、もう涙が出てこない。
これを人は“涙が枯れ果てた”と表現するのだろうか・・・。

「・・・みたいだね」
「分かる?」
「トボケルのが難しいくらいよ」

やはり腫れぼったいまぶたは、口以上に物を言う。

「涙が止まらなかったな・・・」

大恋愛の末の、大失恋だった。
その分、反動は大きかった。

「でも、よく決断できたわね?」

別れる原因は、彼の浮気だった。
だから、私が許せば別れるまでには至らなかっただろう。
彼もそう望んでいた・・・虫のいい話だけど。

「きっとあなたのことだから、てっきり許すのかと・・・」
「そうね・・・その点は自分でも驚いている」

何度も許そうと考えた。
でも、それができなかった。

「一度くらいなら、目をつぶってあげても良かったのに」
「・・・そう考える余裕もなかったのよ」

それこそ潮が引くように、一気に冷めてしまった。
そうなると、もう止めることができない。

(No.562-2へ続く)

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ホタル通信 No.220

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.326 心の穴
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:女性

冒頭にいきなり結論を言っておきます。オチの意味が自分でもよく分かりません。

実話度は限りなくゼロです。当時の心境を単に小説のタイトルにしただけなので、内容は全て創作になります。
さて、内容はともかく、冒頭に書いた通り、オチの意味がよく分かりません。話の流れからすれば、ふさがらない穴を何とかふさごうとしているのは間違いないのですが、なぜ「叩いて元に戻す」ことになったのか謎です。

ホタル通信を書くに当たって、何度も読み直して、思い出そうと試みましたが、どうしても思い出せませんでした。ならば、なんとか解釈しようと、あれこれ考えてみました。
おそらく、穴をふさぐことができないなら、穴が開く前に戻せばいい・・・そのために、彼を叩いて「彼女のことは忘れなさい」つまり、目を覚ましなさい・・・ということでしょうか。

ポッカリ空いた心の穴・・・言葉の響きだけで小説を書き始めました。実話度ゼロの小説は、単なるキーワードだけで書き始めることも多く、この小説もまさしくそうです。
ただ、本当は心に穴があくことになった原因を小説にしようかとも考えていましたが、書き始めたらどんどん話が別の方向に進んでしまいました。

冬のホタルは、作者が展開を考えるのではなく、あくまでも登場人物達が話を作り上げて行きます。
この二人なら、今置かれているシチュエーションなら、などを考えて結末を考えずに一気に書き上げています。
T220
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[No.561-2]痕跡

No.561-2

彼女との関係は決して健全なものとは言えなかった。
不倫と重なる部分もある。

僕との付き合いは相当慎重に対応してくれた彼女だった。
日頃からメールはもちろん、全ての痕跡を残さなかった。

「・・・少しでも残っていたら」

いつかばれる日が来る。
そして、そこから修羅場へと発展していたのかもしれない。

「そうなる前に・・・だろ?」

それにずっと気が付くことができなかった。
彼女は自ら身を引いたんだ。
これは僕が都合良く考えた結果じゃない。
その痕跡を見つけたからだ。

「でも・・・本気だったんだぞ」

最悪の自体も考えた。
一度はそれを受け入れようともした。

(心の中の痕跡は、消し忘れてるぞ・・・)

けど、それももう消すことにした。
S561
(No.561完)
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[No.561-1]痕跡

No.561-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それは、不倫をテーマにしたドラマだ。
何度が見ているうちに、ある過去のことが気になり始めた。

「だから理由は何なんだよ!?」
「ちゃんと聞かせろよ!」

電話が繋がらないばかりか、メールの返信さえない。
もはや口げんかも成立しなくなっていた。

「なんとか言えよ!」

もう・・・どうなってもいい。
後先を考えなくなっている自分が居る。

「ごめん、でも・・・さようなら」

数分後に、メールが返ってきた。

「だから、なんで・・・」

こうメールを打ち返そうとした。
でも、なぜか手が止まった。

そして、これが文字通り、別れの言葉になった。

(No.561-2へ続く)

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[No.560-2]季節を先取り

No.560-2

「まだ、誰もこんなファッションしてないでしょ?」

“あえてしてないの!”と、突っ込みたくなる気持ちを抑えた。

「そうね」
「やっぱり、季節を先取りしなきゃね!」

(だから、ついさっきも聞いたって・・・)

「はいはい・・・これからも季節を・・・ん?」
「・・・どうかしたの?」

彼女よりも、季節を先取りしている人に気付いた。

「私よりも先に・・・?」
「どう見ても、こんな格好している人、居ないでしょ?」

確かに居ない・・・何度も言えば“あえて”いない。

「確かにあなたより、前だったわよ」
「ど、どこによ!」

本当は人じゃない。

「そこよ、そこ!」

友人の肩に、とまっている赤とんぼを指差した。
まるで、“私の方が先だったわよ!”と主張しているかのようだった。
S560
(No.560完)
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[No.560-1]季節を先取り

No.560-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、ねぇ!・・・これ、どぉ?」

(また、始まった・・・)

年に数回、正確に言えば4回、その言葉を聞く羽目になる。

「いいんじゃない?」

私の返答もいつもどおりだ。
イチイチ、反応するのさえ、面倒になってきた。

「でしょ~!」
「やっぱり、季節を先取りしなきゃね!」

とは言うものの、かなり無理をしているように見える。

「暑くないの?」
「ファッションリーダーとしては、全然!」

その言葉とは裏腹に、額の汗が正直なところだろう。

「・・・なら、いいけど」

暦の上では秋でも、現実はそれとは程遠い。

「女子たるもの、季節に敏感じゃなきゃね!」

ファッションにうるさい友人は、誰よりも早く衣替えをする。

(No.560-2へ続く)

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ホタル通信 No.219

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.338 思い出はセピア色
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:男性

この小説はオチのアイデアを思い付いた後に、話を作って行きました。

一般的にも“想い出はセピア色” と表現されることはと少なくないと思います。きっかけは忘れましたが、このフレーズを耳にした時、セピア色→単色→データ量が少ないと連想されました。
「なんでそこに繋がるわけ?」と不思議がられるかもしれませんが、エレクトロニクス関係の仕事柄、自分にとってはごく自然な流れなんですよ。
ちなみにエレクトロニクスと言っても、多少表現はぼやかしています。作者の素性は秘密なもので。

オチが決まってますので、あとはどう展開させるか、それだけを考えて作り始めました。
そうすると、これも自然に居酒屋、失恋話、そしてややコミカルに展開・・・という流れが浮かび、労せず書き上げることができました。
何度か書かせて頂いた通り、仕事のお昼休み中の1時間の中で創作活動していますが、これは30分も掛からなかったと記憶しています。

話は前後しますが、実話度はゼロで、自分でよく言うところの“商業的な”作りの小説です。
一般的には、このような話のほうがウケるのだと思いますが、極力そのような小説は避けるようにしています。
T219
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[No.559-2]飛行機のプラモデル

No.559-2

「子供心には嬉しいものよね?」
「でも、主婦的にはどうかな・・・って」

実用的なものを期待していたのかもしれない。
食料品とか衣料品とか・・・。

「そう考えると・・・」

僕とは裏腹に、さほど嬉しくなかったのかもしれない。
そんな風に見えなくもなかった。

「そうなのかな?」

もともとそんなタイプの母ではなかった。
決して、冷たいわけじゃないが。

「だから、覚えてるのかもしれない、今でも」

自分の中では、良い記憶ではない。
むしろ、悪い記憶として残っている。

「やったぁ~!3等だって!」

昨日、例の話をした矢先だった。

「何にしようかな・・・」

いくつかの商品の中から、ひとつ選ぶことになった。

「これでいいよね?」

食料品でも衣料品でもなく、妻はプラモデルを選んだ。S559
(No.559完)
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[No.559-1]飛行機のプラモデル

No.559-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今で言う、“サプライズ”だった。

「そんなレベルだったの!?」
「もちろんだよ」

記憶では、小学校の低学年の頃だったと思う。
学校から帰ると、飛行機のプラモデルが置いてあった。

「えっ!・・・っていう感じだったよ」

2歳になった弟では到底作れない。

「僕の・・・とは思ったんだけど」

あまりにも非日常な出来事だった。
だから、誰か他人へのプレゼントかもしれないとも考えた。

「母親に聞くのが怖かったくらいだよ」

もし、後者だったら・・・。

「・・・それで?」
「そしたら、それを察してか、先に言われた」
「くじ引きで当たったって」

それはそれは嬉しかった。
特にプラモデルや飛行機が好きだったわけじゃない。
理由はともかく、与えてもらったことが嬉しかった。

「買ってもらうこと・・・あまりなかったしな」

オレンジ色の機体を今でもおぼろげながら覚えている。

(No.559-2へ続く)

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[No.558-2]壊れたおもちゃ

No.558-2

「正しくは、伸ばしたけど、止めたの・・・」

前と同じように木の上で、一生を終わらせようと一度は考えた。

「・・・どうして?」
「今になって“気持ち悪い!”ってことないでしょ?」

もちろん、ちゃんとした理由がそこにある。

「鳴き始めたの・・・」
「・・・そのセミが?」

ただ、例の大合唱には程遠い、か細い鳴き声だった。

「鳴いているというより、何だろう・・・壊れたおもちゃみたい」
「壊れたおもちゃ?」

鳴き声が途切れたり、大きくなったり小さくなったり・・・。
調子の悪いおもちゃのようだった。

「それこそ、もう電池が切れそうで」

命の火が消えて行くのが見えた。
あれだけ、騒がしい連中だからこそ、そのギャップは大きい。

「電池・・・か・・・子供ならそう言いそうね」
「最後に、鳴き声を披露しに来たのかもしれない」
 
私が見守る中、懸命に生きたセミの電池は切れてしまった。
S558
(No.558完)
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[No.558-1]壊れたおもちゃ

No.558-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
ここに引っ越して来てから二度目になる。
今後、夏の風物詩になっていくのかもしれない。

「・・・だろうね」

思った通り、逃げる気配はまるでない。
逃げようにも逃げられないと行った様子だった。

「前にもその話、聞いたよね?」
「うん、話したよ」

本来は感動的な話として終わるはずだった。
それが、女子らしくない私の行動が先に立ってしまった。

「今回もまた、アレなの?」
「ううん、ちょっと違う」

お互い“アレ”で通じているのが面白い。

「元気がないのは同じなんだけど・・・」

エレベーターホールの壁に、セミがとまっていた。
近づいても逃げる気配はない。
手を伸ばせば届く距離だった。

「それだけで、息も絶え絶えと分かったわ」

もちろん、捕まえるのはたやすい。
でも、前のように手は伸ばさなかった。

(No.558-2へ続く)

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ホタル通信 No.218

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.346 パッセージ 
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:女性

稀に作ることがある“歌詞を小説風”にアレンジした作品です。その歌詞とはタイトル通り、工藤静香さんのファーストアルバム「ミステリアス」に収録されている一曲です。

当ブログの主旨から言えば、実話度はゼロなんですが、実在する歌詞という面から考えると、ゼロというには少し違和感があるのかもしれませんね。
冒頭に書いた“歌詞を小説風にアレンジした作品”には共有するものがあって「もともと歌詞にストーリー性」があって「そこに時間の経過が感じられる」ものを選んでいます。
ただ、選ぶと言っても、書くためにわざわざ選ぶことはなく、たまたま出会った歌詞に「これは!?」と感じたものを小説化しています。

話を続ければ、時間の経過は現在、過去、未来の大きなものから、今この瞬間の小さなものまで様々です。
例えばホタル通信No.186で紹介した「小説No.213 ORION」のように、時間をさかのぼる・・・ようなものも時間の経過として捉えています。
これも歌詞を題材にしていますが、パッセージのように全編にわたるようなものは、後にも先にもこれしかありません。

小説のラストは、歌詞にないシーンを追加しています。
ラストシーンを現在とするならば、過去の過去、過去、そして現在(ラストシーン)のような時間経過があります。現在の彼の姿に、元カレの姿を重ね合わせながら・・・。
T218
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[No.557-2]うつむき加減

No.557-2

「そりゃ、俺だって“気がある”とは思ってないけど」

それでも、少しは意識している証拠だ。
少なくとも男性として見られているのだろう。

「それって、恋愛対象ってこと?」
「まぁ・・・そうなるか・・・な」

とは言うものの、別にどうこうしようという気持ちはない。
朝のひと時を楽しんでいる。
そんなことのひとつもなければ、会社に足が向かない。

「そうなるかな・・・って、なにさ?」
「じゃぁ、女子として意見聞かせろよ」

女子高生とまだそんなに歳は変わらない。

「そ、それは・・・」
「だろ・・・素直に認めれば?」

勘違いなら、それでもいい。
それに、勘違いだった時の“ショック”は自分の中で織り込み済だ。

「・・・じゃぁ、本当にいいのね?意見して」

さっきまでとはうってかわって、すごんできた。

「い、いや・・・そうだな・・・」
「どうするの!!」

迫力に負けて、丁重に意見を断った。
もう少し、夢心地でいたいがために。
S557
(No.557完)
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[No.557-1]うつむき加減

No.557-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「それって勘違いも甚だしくない?」
「そ、そうかな~」

自転車通勤している時の出来事だ。
会社に着くまでに、数多くの人とすれ違う。
でも、一部の人は決まった顔だ。

「そうに決まってるでしょ・・・」
「けど、朝、会う度に下を向くんだよ」

視線を外すくらいなら、軽く横を向けばいい。
明らかに、照れながら下を向いている。

「すれ違い程度で、よくそこまで分かるわね!?」
「まぁ、それは言い過ぎかもしれないけど」

それに、髪の毛を少し直す仕草もする。

「少しでも、良い所を見せたい・・・のかなって」

ついでに言えば、ひとりだけじゃない。

「・・・だけじゃない?」
「あぁ、三人ほどそんな人がいる」

いずれも、女子高生だ。

「あなた何かした?」
「おいおい!」

認めたくない気持ちわかるが、事実は事実だ。
嘘じゃない。

(No.557-2へ続く)

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[No.556-2]悲しみは深く

No.556-2

「お墓にも行ったんでしょ?」
「うん・・・それが目的だったから、ご家族と一緒にね」

道中に、鮮やかなひまわりを何本か買った。
生前の彼女はまさしく、ひまわりのような人だった。

「とにかく、元気娘だったのよね」

時には失恋に落ち込む私を励ましてくれた。

「それも・・・大阪に来てだよ」
「え、えっ!?わざわざ、札幌から!?」

そんな彼女だったから、なかなか事実を受け入れられなかった。

「けど、花をお供えしたら、急に・・・ね」

墓石に刻まれた友人の名前は、現実そのものだった。

「喜んでると思うよ」
「そうだね、そんな出来事もあったし」
「う、うそ・・・」

目の前の友人の顔が青ざめる。

「だ、大丈夫よ!単にみつばちが一匹、寄ってきただけだから」

忙しそうに、ひまわりや他の花を行き来していた。

「周りのお墓にもたくさん花が供えてあったのに・・・」

まるで、食いしん坊の彼女ならではの行動に見えた。

「・・・それで、ようやく受け入れようと思ったの」
「そうね、彼女もそう願ってるよ」

悲しみは深い・・・けど、故人を想う気持ちよりは浅い。
S556_2
(No.556完)
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[No.556-1]悲しみは深く

No.556-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
数か月前にも、この地に降り立った。
深い悲しみと共に・・・。

「ふぅ~」

なぜだか深呼吸したくなった。
それから空港を後にして、粛々と目的地に向かった。

「どうだった?」
「なんだか妙な気分だったね」

連休を利用して、札幌を訪れた。

「この前は何も見えなかったし」

ただただ友人の家に向かうだけで、精一杯だった。

「そうだろうね
「今回は、彼女が見てきた景色を私も感じてきたわ」

観光ではない。
あくまでも日常を見て、感じてきた。

「いい街ね」
「そうでしょ!私もそう思う」
「まぁ、あなたの場合は“食”に関してだと思うけど」

友人が“バレた!”のような顔をしている。

「でも、北海道にしてみれば少し暑かったかな・・・」
「そう言えば、こっちとあまり変わらなかったもんね」

猛暑は北国にまで及んでいた。

「この前の雪景色とは対照的だったわ」

妙な気分になったのは、それもあったからなのかもしれない。

(No.556-2へ続く)

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ホタル通信 No.217

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.355 福山さん
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

タイトルの福山さんとは、ズバリ“福山雅治さん”のことなんですが、実は・・・。

細かな所を除けば全般的な雰囲気は事実です。二枚目俳優の名をあげられて“負けた”と、若き日頃、思ったことがあります。
その“負けた”理由は小説の通りで、自分より随分と年上でであったことだけではなく、年齢に見合った貫禄・・・簡単に言えば、大人の魅力とでもいいましょうか、それがあったからなんです。

話を冒頭に戻すと、その負けた相手は本当は福山雅治さんではなく、とある俳優さんです。今は、見掛けることもなくなったのですが、当時は自分にして見れば、大人の男性そのものでした。
別に彼女が、当てつけのつもりで口にしたとは思っていないのですが、それを素直に受け入れられないのも若さの特権だと思っています。

ですから、今でもその俳優さんの話題が出たりすると、昔のことを思い出します。勝った、負けたの感情はさすがに持ち合わせていませんが、どこかでまだ拘っている部分がないとは、自信を持って言えません。
小説のラストは、それなりのオチを付けてみました。これはさすがに事実ではありませんので。
T217
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[No.555-2]少し照れながら

No.555-2

「えっ?」

体調不良ではないことは明白だ。

「なかなか思うようなものが・・・」

そう言うと、目線を下の方に移した。

「なるほど・・・その花と格闘していたわけですね」

花と言っても、名のある花のようには見えない。
恐らく雑草だと思う。

「道路脇の一輪の花に魅せられてしまって」

確かに雑草だからこその、妙な力強さ感じる。

「でも、小さい花なのに、よく気付きましたよね?」
「だって、ほら、それが目的なので」

そう言うと手に持っていたそれを、軽く私に向けた。

「・・・ですよね」
「あっ!そうだ、初対面でなんですが・・・」

そうこうしている内に、今度は私がしゃがみ込むはめになった。

「こ、こんな感じでいいですか?」

少し照れながらも、その一輪の花にそっと手を触れた。
S555
(No.555完)
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[No.555-1]少し照れながら

No.555-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・あれ?)

視線の先に、歩道でうずくまっている人がいる。

「ちょっと大丈夫ですか!?」

声を掛けたみたが返事はない。
相変わらず、うずくまっているままだ。

(ヤバイかも・・・)

急いで駆け寄った。

「大丈夫ですか!?気分でも、わる・・・」

しゃべり終わる前に、その人がこちらに振り向いた。

「あ、いや・・・そうだったんですね」

うずくまっている理由は、格好を見ればすぐに理解できた。
正しくは“しゃがみ込んでいた”ということになるが。

「いつも声を掛けられてしまって」
「すみません・・・早とちりしたみたいで」
「ううん、こちらこそ、ごめんなさいね」

聞けば、いつも声を掛けられるらしい。

「まぁ、歩道でしゃがみ込んでたら当然ですよね」
「でも、大事じゃなくて良かったです」
「それが・・・そうとも言えなくて」

(No.555-2へ続く)

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