[No.562-1]涙の量
No.562-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
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悲しいのに、もう涙が出てこない。
これを人は“涙が枯れ果てた”と表現するのだろうか・・・。
「・・・みたいだね」
「分かる?」
「トボケルのが難しいくらいよ」
やはり腫れぼったいまぶたは、口以上に物を言う。
「涙が止まらなかったな・・・」
大恋愛の末の、大失恋だった。
その分、反動は大きかった。
「でも、よく決断できたわね?」
別れる原因は、彼の浮気だった。
だから、私が許せば別れるまでには至らなかっただろう。
彼もそう望んでいた・・・虫のいい話だけど。
「きっとあなたのことだから、てっきり許すのかと・・・」
「そうね・・・その点は自分でも驚いている」
何度も許そうと考えた。
でも、それができなかった。
「一度くらいなら、目をつぶってあげても良かったのに」
「・・・そう考える余裕もなかったのよ」
それこそ潮が引くように、一気に冷めてしまった。
そうなると、もう止めることができない。
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