« 2014年7月 | トップページ | 2014年9月 »

2014年8月

[No.554-2]似合いの帽子とシャツ

No.554-2

「・・・で、ジャーン!」

ご当地はご当地でも、珍しいご当地リラックマを手に入れた。

「せやね」

(・・・ん?)

思ったほどのリアクションが返って来ない。

「いや、ほら、その・・・これだよ?」
「分かってるって」
「そ、そうなんだ・・・」

今回、手に入れたのは、広島カープバージョンだ。
赤い帽子と白いシャツがまぶしい。

「珍しくない?」

少なくとも駅の売店で阪神や巨人バージョンを見たことはない。
大阪も東京も、駅の売店はくまなく探したつもりだ。

「確かに見たことないバージョンやけど」
「普通やろ?」
「そ、そうかな・・・」

意気揚々と帰ってきただけに、肩透かしもいいとこだ。

「ま、まぁ、い、いんパクトは薄いかもしれないけ、け、ど・・・」

言葉もままにならない。

「せやかて、帽子にシャツって普通のファッションやろ」

この後、菜緒(なお)が野球オンチだということにようやく気付いた。S554_2
(No.554完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.554-1]似合いの帽子とシャツ

No.554-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
機会があり、再び仕事で全国を飛び回ることになった。
そうなると、仕事とは別にある楽しみが生まれる。

「疲れたやろ?」

菜緒(なお)に逢うのも久しぶりだ。

「想像以上にハードスケジュールだったよ」

・・・とか何とか言いながらも早くあることを報告したい。

「せやろ?うちもそう思たんや、それにな・・・」

珍しく、仕事の話に食い付いてくる。

「まぁ、そうなんだけど、それでさぁ・・・」
「暑かったやろ?」
「う、うん・・・そりゃ一番暑い時期だったし」

話したいことがある時に限って、なかなか話が終わらない。

「それより、アレだよ、アレ!」

話題を変えるために、強引に言葉をねじ込んだ。

「・・・アレって、なに?」

とりあえず、話の流れを変えることはできた。

「ほら、仕事で全国を・・・と、言ったら?」
「・・・もしかして、ご当地せいじゅうろう!?」

例のごとく、空港や駅でお土産を物色する日々でもあった。

(No.554-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.216

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.315 三行小説
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

女同士の会話は全て創作ですが、三行小説そのものについては、100%事実になります。

当時付き合っていた人の影響で、赤川次郎さんの小説を読むようになり、冗談半分で彼の誕生日にメッセージと共に、三行小説を贈りました。
小説にも書いた通り、覚えているというより、忘れるほどの量ではないため、ずっと記憶に残っていました。

この小説上では、大昔に一度だけ書いたことがあり、これが今、つまり“冬のホタル”に繋がっているような書き方をしています。
・・・ですが、他の小説を絡めて見てみると、一番最初の小説は「No.535 インスタン島」が、初作品ということになります。文章とか絵とかに関して、才能があったわけではないのですが、人とは違う感性があり、その点については昔から先生にほめられていました。

今でも、小説と呼べるほどの作品は作っていませんが「無理矢理でもいいから人と違うことをする」という、心意気だけは変わっていないのかもしれませんね。
逆に、あまり影響を受けないように、人様の小説を読むことは無くなりました。
従って、小説のイロハを知らずに書いています。ですから、あくまでも“小説風”なんですよ。

最後に、小説では「もうすぐ3年になるね」と書いてありますが、現在は今年の2月でまる5年が経過しています。
T216
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.553-2]森のにおい

No.553-2

「まぁ、その気になったら、確かに」

なにか他の匂いに例えたくとも、代わりを思い付かない。
ただ、街中で吸う空気とは明らかに違う。

「木だけじゃなくて、“森”全体の匂いだと思うんだ」

だからこそ複雑で、代わりが見つからない。

「川や動物までも含めて?」
「そうだね、森が呼吸している匂いかもしれない」
「粋なこと言うわね」

なにもないパーキングエリアでしばし、匂い談義が始まった。
気付けば、周辺に居る人たちも、大きく深呼吸している。

「あなたのいうこと、まんざらでもなさそうね」

皆、なにか充実したような顔で車に戻っている。

「だろ?僕も十分、リフレッシュできたよ」
「じゃ、あと2時間、運転ヨロシクね!」

家に到着するには、まだまだ時間が掛かる。

「次のパーキングでご飯でも食べてく?」

幸い、次の休憩場所では、食事もとれる。

「ううん・・・もうお腹いっぱい」
S553
(No.553完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.553-1]森のにおい

No.553-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
休憩のために、高速道路のパーキングエリアに立ち寄った。

「・・・あれ?」
「どうしたの・・・何かみつけでもしたの?」

パーキングエリアと言っても、悪い意味でその通りの場所だ。
トイレに加えて、辛うじて自動販売機が1台置いてある。

「いや、そうじゃなくて」

なにか見つけるのが難しいくらい何もない。

「ほら・・・匂わないか?」
「別に美味しそうな匂いはしないけど・・・」

するはずもない、こんな場所だから。
でも、ある意味そうとも言えない。

「森の匂いが」

少し湿った感があるが、単に湿気ているわけではない。
なんともみずみずしい清涼感がある。

「これって、森の匂いなの?」

かつて祖父母は山の中腹あたりに住んでいた。
そこの場所と同じ匂いがする。

「どうかは分からないけど、自分はそう思っている」

いつしか、この匂いを森の匂いと決め付けていた。

(No.553-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.552-2]最初の一日

No.552-2

(さて・・・聞くべきなんだろうか)

さすがに5年も通えば、常連と自負してもいいだろう。
けど、プライベートまで踏み込むには勇気が必要だ。
特に相手が女性ともなれば・・・。

「これから、どうされるんですか?」

自分でも驚くほど気が利いた質問だった。
ある意味、どうとでもとれる。

「そんなんじゃありませんよ」

彼女がクスッと笑いながら、答えてくれた。

「いや、その・・・違うんです!」

抽象的な会話をしてるはずなのに、考えていることは同じだ。
今度はふたりしてクスッと笑った。

「でも、寂しくなりますね」

会話こそなかったが、見えない糸で繋がっていたような気がする。

「寂しい?・・・私はそうは思わないけど」
「・・・え、えぇっ!?」

決めセリフのつもりが、とんだピエロになってしまった。
現実は、そうドラマのようには行かない。

「だって、ここの店が最後なだけであって」
S552
(No.552完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.552-1]最初の一日

No.552-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今日で最後なんです・・・」

声を掛けられて、あることに気付いた。
でもあえてそれを口にしなかった。

「えっ!」
「今までありがとうございました」

別にお礼を言われるほど特別な貢献をしたわけではない。

「あっ・・・いいえ、僕はそんな・・・」

僕は単なる客のひとりに過ぎない。
ただ、少なくとも月1回、そして5年間・・・この店に通ってきた。
いくつかある店舗の中でも、あえてここを選んでいた。

「最後にお会いできて良かったです」
「すごい偶然ですよね」

偶然いう言葉は、この瞬間のためにあったように思えた。
いや・・・偶然以上かもしれない。

「そう言えば、こうやってお話するの、初めてですよね?」

見透かされたのだろうか・・・先に彼女から言われた。

「そうなんですよね」

5年間通っても注文する時以外、会話をしたことがなかった。
つまりこれが、最初で最後の会話になる。

(No.552-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.215

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.302 早すぎたメール
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

ほぼ100%と言っても過言ではないくらいな話です。それにお互いのセリフや行動もリアルに再現させています。

あの時の自分は、言葉の意味こそ違えども、振り上げた拳を下ろすことができない状態でした。
急なメールに困惑したような感じに見受けられますが、実際は、意気揚々とハンドルを握っていた中での電話でしたからその落胆ぶりは半端なものではありませんでした。

小説では書いていませんが、電話を切った後、すぐに自宅へ引き返したわけではなく、そのまましばらく車を走らせ、気付けば彼女の家の近くまで来ていました。
この行動こそが意味こそ違えども“振り上げた拳を下ろすことができなかった”ことなんです。
今までもあの時の生々しさを覚えています。言ってしまえばそうなることは分かっていた・・・そして本当にその通りになってしまいました。

その結果は小説の通りです。
その夜、さすがに気になって、メールや電話をしてみましたが、彼女と通じることは出来ませんでした。
その後「メールも電話ももうしません」と一通のメールが届き全てが終わりました。
・・・でも、数ヵ月後に「No.25 受信フォルダ8」へと話が展開して行くのです。
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.551-2]憧れの麦茶

No.551-2

「・・・恥ずかしい?」

周りのみんなは、麦茶だった。

「うん・・・自分だけ違うし、それに」

玄米茶に対して年寄り臭い印象を持っていた。

「変な言い方だけど、妙にお茶っぽいし・・・」
「少し、酸味があるような味だし」

一方、麦茶は玄米茶ほどお茶っぽくないし、甘さを感じる。
友達の麦茶を飲ませてもらって、その差に気付いた。

「でも、分かる気がする」
「子供の頃って、そういうこと気にするもんね」

「だから、ある意味、麦茶に憧れてて・・・当時」

それを母親に言うこともなかったから、ずっと玄米茶で育った。

「そうなると・・・この流れからすれば中身は麦茶?」
「残念でした!」
「今になって、その良さに気付いたの」

麦茶よりもサッパリしているし後味も良い。

「中身は玄米茶よ」
「・・・恥ずかしくない?」
「当たり前でしょ!」

今週末はマイボトルと共に、母が待つ霊園を訪れる予定だ。S551
(No.551完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.551-1]憧れの麦茶

No.551-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ん?・・・マイボトル、始めたんだ?」
「うん、影響されちゃって」

職場ではいつの間にか、マイボトル率が高くなっていた。

「私って、いつも乗り遅れるんだよね」

携帯電話も持つのが遅かった。
けど、流行に鈍感というわけではない。
必要性を感じなければ、あえて流行に乗ろうとも思わない性格だ。

「で、使ってみてどう?」
「そうね・・・この季節、やっぱりありがたいわね」

どうせのどを潤すなら、冷たいほうがいい。

「ちなみに中身はなに?」
「中身?普通に、お茶だけど」
「そうじゃなくて、お茶の種類を聞いてるの」
「・・・あれ?」

以前もこんな会話をしたことを思い出した。
それも相当前に。

「なに?」
「ごめん、小学生の頃に似たような会話をしたことがあって」

当時も今と同じように、お茶の種類に話が及んだ。

「当時、我が家は玄米茶だったの」

それが、なぜだか恥ずかしかった。

(No.551-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.550-2]下流のごみ

No.550-2

「ただ、川を眺めながら歩いてるだけよ」

お世辞にも清流とは言い難い川でも、生き物であふれている。

「鳥とか、カメとか、得体の知れない大きな魚とか」
「得体のしれない!?」

特に夏場は生き物でにぎわっている。

「それと、ついでにゴミもね」

下流になればなるほど、ゴミが多い。

「そりゃそうでしょ、上流から流れてくるんだから」

いつものルートなら、さほどゴミを見掛けることはない。

「二駅前から歩くようになって気付いたんだ」

言いようのない、虚しさを覚えた。

「そんなにエコを気にするタイプだっけ?」
「ううん・・・そうじゃないけど」

例え目の前でゴミを捨てたとしても、数分もすれば視界から消える。

「そんなことでいいのかな?って思うんだ」

物思いにふける季節ではない。
けど、にぎやかな季節ほど、少し考えたくなるときがある。
S550
(No.550完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.550-1]下流のごみ

No.550-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
会社へ足が向かない日は、あえて通勤経路を変える。
そんな時は遠回りになるくらいが丁度良い。

「今日、ギリだったじゃない?」
「合コンからの・・・寝坊?」

“それはあなたでしょ!”と突っ込みたく気持ちを抑えた。

「単に遅くなっただけよ」
「でもさぁ、時々、ギリに来るよね?」

寝坊でも通勤途中のトラブルでもない。
二駅も前から下車すれば、必然的にそんな時間になる。

「色々あってね・・・」
「心配しなくても、遅刻はしないから」

時間は読めている。

「会社の近くに、小さな川が流れてるでしょ?」

会社は、その川の下流に位置している。
今日、私はさらに下流から歩いてきた。
二駅も前から下車するのは、それが目的だからだ。

「それが目的って!?」

友人がキョトンとしている。

(No.550-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年7月 | トップページ | 2014年9月 »