[No.548-2]財布を忘れた !
No.548-2
「思わず、サザエさんかっ!と突っ込みそうになったよ」
一言発した後、そそくさと逃げるように駅を後にした。
「・・・なんで助けてあげなかったのよ?」
確かにその時は一瞬、そうも考えた。
でも、声を掛ける間もなく、彼女は去って行った。
「大事な時に気が利かないんだから!」
もっともだと思いながらも、もし声を掛けていたらいたで・・・。
「それでその一連の動きが何とも可愛く見えたんだ」
「決して不幸を“笑った”わけじゃないからね」
今でもその光景を思い出すと、つい口元が緩んでしまう。
「彼女、大丈夫だったのかな?」
大事な用事に遅れたかもしれない。
「・・・で、あなたはなんで遅刻したの?」
「そ、それは・・・」
自分が遅れたことを棚に上げて、話を進めていた。
「ごめん・・・彼女を見てたら、指輪を忘れたことに気付いたんだ」
(No.548完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
| 固定リンク | 0
「(022)小説No.526~550」カテゴリの記事
- [No.550-2]下流のごみ(2014.08.17)
- [No.550-1]下流のごみ(2014.08.16)
- [No.549-2]犬の遠吠え(2014.07.10)
- [No.549-1]犬の遠吠え(2014.07.09)
- [No.548-2]財布を忘れた !(2014.07.06)
コメント