[No.543-2]彼の家
No.543-2
「家を新しくしたかもしれないし」
「彼・・・長男だったっけ?」
「よく覚えてるわね!」
友人が何を言わんとしているか、理解している。
「そうね・・・綺麗な奥さんと住んでるかもね」
「・・・まだ、未練でも?」
「まさか!ちょっと想い出しただけ」
彼の奥さんになろうとか考えたことはなかった。
まだ、そんな年齢ではなかったからだ。
「・・・のわりには、随分とひっぱるじゃない?この話題」
「そうじゃないけど・・・」
来月、実家に帰る予定がある。
でも、どうやら窓からは見ることはできないようだ。
「想い出がまたひとつ消えたようで」
気付けば、アルバムから随分と写真が抜け落ちている。
想い出と言う名のアルバムから・・・。
「抜け落ちたなら、また戻せばいいんじゃない?」
「・・・理屈の上ではね」
ただ、抜け落ちたもの拾い集めるほどセンチでもない。
「話してなかったけど・・・」
「ん?なにを?」
「彼、まだ独身よ」
今度はあえて探してみようと決意した。
彼の家と抜け落ちた写真を。
(No.543完)
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