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2014年6月

[No.546-2]やるじゃん!

No.546-2

(・・・後、15分くらいで終わるかな)

終了時刻の読みは慣れている。
それに合わせて会場に戻ってくるのはお手の物だ。

「・・・ん?」

入口近くの柱の陰に人影が見える。
それに、どうやら曲にあわせて動いているようだ。
防音に優れているからといっても、そこそこ音楽は聞こえている。

(・・・チケット、取れなかったんだろうな)

風貌からも、チケット代をケチッたようには到底見えない。
誰よりもそのアーティストのファンであることが伝わってくる。

「アーティスト冥利に尽きるよな」

もし、自分がアーティストなら・・・。
それでも会場に足を運んでくれたファンのことを大切に思いたい。
そんな気持ちにさせられた。

「あ・・・そろそろかな」

アンコールも終わり、どうやら“締め”に入ったようだ。 
帰りにあわせてドアが開けられたことで、より鮮明に聞こえてくる。
1階席、2階席・・・順番にお礼を言っているようだった。

“そして最後に・・・会場の外、ありがとう!!”

「やるじゃん!」
S546_2
(No.546完)
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[No.546-1]やるじゃん!

No.546-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「す、すごい列だな・・・」

予想以上の長蛇の列に圧倒される。

「そりゃそうでしょ!」

今はコンサートではなく、ライブと言うのだろうか?
とにかく、とあるアーティストのライブ会場に来ている。
会場の大きさに比例して来場者も多い。

「それだけ人気があるってこと」
「だけどさ・・・並ぶ意味ってあるわけ?」

座席は全席指定だ。
列車で言えば自由席を確保するのに、早くから並ぶ必要はない。

「わかってないなぁ~」
「そ・う・い・う・ものなの!」

ライブには行ったことがないので、そんな心境を理解し難い。
ただ、正確には言えば少し違う。
かなり行ってはいるけど、会場内に入ったことがない。

「とにかく、もうすぐ入口だから、列から抜けるぞ」

入口を目の前にして、いつもの通り戦線離脱する。
僕はいつも彼女の“お伴”として、会場に足を運ぶだけに過ぎない。

「じゃあ、後で!」

いつもの通り、しばらく暇をつぶすべく、会場を後にした。

(No.546-2へ続く)

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ホタル通信 No.212

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.280 赤ペン先生
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

久しぶりに実話度100%の小説をご紹介します。お約束通り、語り手は男性ですが、作者はメールを出した女性の可能性もあります。

さて、実話度はほぼ100%と言っても過言ではありません。ですから、読んで頂けた通りの内容が現実に起こりました。
“赤ペン先生”の表現自体は、ある意味、世間で認知されていると思います。別にそれをマネたとかではなく、社内では、赤ペンでコメントすることが慣例になっていたことが話のきっかけになっています。

かつて、コメントを書いた相手が、今ではコメントを書く立場になっている・・・時の流れを感じつつも、“先生”としては嬉しいものです。
“先生”は私だけではなく、他にも大勢いたのですが、私にだけメールしてくれたようでした。いろいろと、問題があった彼女たちでしたが、やはりそんな方が想い出に残っています。

ラストに何やら艶めかしい内容がチラリと書いてありますが、彼女の他にも日報に様々な想いを、綴っていた人が居ました。
私に対する愛の告白などではなく、ある程度先生として信用頂いた上での”恋愛相談”みたいなものでした。
ただ、あくまでも仕事上の日報ですから内容を把握した後は、書き直させました。

例え、企業における“先生”であっても、教え子というのはいくつになってもかわいいものです。
T212
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[No.545-2]ロボットの恋

No.545-2

「ロボットの彼?変だろそれ」

現実なら確かに変だ。
けど、あくまでも夢の中の話だということを忘れないで欲しい。
逆にこの程度なら、まだましな方だろう。

「夢なんだから、そんなこと言ったって・・・」

なぜ、そんな夢を見たのか、説明できないことが多い。
だけど、説明が付く夢も少なからずある。
今回の場合は後者の方だ。

「後者ってことは、説明できるんだ?」
「うん、できる」

悩み事や願望・・・そんなことが夢になって出てくることがある。

「今回の夢は願望なのかな・・・」
「ロボットに恋したいとでも?」
「それとも、ショーウィンドウの中に入りたいとか?」

いつもこんな感じだ。
鈍感だから、こんな夢を見なくてはならないのかもしれない。

「おいおい、俺のせいってことか?」

友人の問い掛けには答えず、話を続けた。

「そのロボットね・・・」
「ロボットなんだけど、あなたでもあったんだよね」
S545
(No.545完)
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[No.545-1]ロボットの恋

No.545-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
恋をした。
その相手はショーウィンドウの向こう側に居る。
いつもガラス越しに見つめている。

「・・・っていう話なんだけど」

昨日の夢を友人に話した。

「こんなにハッキリ覚えている夢なんて久しぶり」

夢なんて大抵、覚えていない。
起きた瞬間に忘れてしまうことがほとんどだ。

「タイトルを付けるとしたら、“ロボットの恋”だな」
「う~ん・・・微妙に違うような」
「そんなことないだろ?」

確かにロボットが出てくる。
そして、そこに私も居る。

「だろ?だから、ロボットが莉乃(りの)に恋をする・・・」
「ううん、そうじゃなくて」

実は立場が逆だ。

「逆?・・・じゃあ、恋をしたのは莉乃?」
「う、うん」

ショーウィンドウの中にいるのは私の方だ。
そして、ガラス越しにロボットの彼を見つめている。

(No.545-2へ続く)

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[No.544-2]反省中

No.544-2

「とにかく、怪我がなくて良かったよ」

残りのコップはすでに、リラックマの姿は見えない。
その事実を知らなければ、もはやただのガラスコップだ。

「だから、そう気を落とすなって・・・」

相当ショックのように見える。
俺が思う以上に大切なものだったらしい。

「また、キャンペーンがあったらお揃いにしような」
「・・・うん」

それでもまだ浮かない顔だ。

「ちょっと反省するわ」
「それは大げさだろ?いくらなんでも」

故意に割ったわけではない。
それに、仮に故意だったとしても・・・だ。

「・・・・」
「・・・なんだよ、急に無口になって?」

菜緒(なお)がおもむろに、何かを手渡してきた。

「・・・なんだよこれ?」

はんせい中と書かれたシールのようなものだった。
本気なのかふざけているのか・・・。
S544
(No.544完)
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[No.544-1]反省中

No.544-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ごめんな」
「ほんと、気にしないでいいから」

確か、コンビニのキャンペーンで貰った記憶がある。
商品に付いているシールを集めると貰える方式のやつだ。

「せやかて、お店には売ってへんやろ?」

非売品であることには間違いがない。
ただ、申し訳ない程度のワンポイントであいつが描かれている。

「でも、ほら・・・ほとんど、はげてるし」

そんな目で見ればかろうじて、リラックマと判別できるレベルだ。
一見すれば、ただのガラスコップに過ぎない。

「それより、怪我はなかった?」
「うん、それは大丈夫」

洗い物をしている時、手を滑らしたようだった。
とにかく、怪我がなくてホッとしている。

「でも残念や」
「残念・・・なにが?」
「お揃いやったやん!」

確かに同じコップを貰った。
貰った・・・という受け身ではなく、あえてそうした。
もちろん、お揃いにするために。

(No.544-2へ続く)

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ホタル通信 No.211

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.295 ボブカットの攻撃
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

話の主軸は、昔の彼女がボブカットであったこと、そしてそれが校則で決められており、嫌がっていたこと。

地元ではある意味、有名だったのかもしれません。もちろん、その髪型も理由のひとつです。また、失礼な言い方ですが、いわゆる女子のすべり止めの高校でした。
ですから、レベルは決して低いわけではなく、平均以上の学校なんですが、やっぱり、彼女もどこかそれを気にしていました。

校則は周辺のどの高校よりも厳しく、その最たるものが髪型でした。
今では、あえて制服で出掛ける人も多いと思いますが、その高校は休日でも基本“制服”なんですよ。ですから、制服と髪型が相まって・・・。
小説に書いた通り、当時の髪型の流行はアイドルを真似たものでしたから、そのギャップは大きなものでした。

当時も僕のためではなく、単に流行の髪型に近付けたかったから・・・だとは思いますが、小説にするにあたり、少し色気のある話に変えてみました。
もしかしたら、本当にそうだったかも、という思いも込めて。
もし、その彼女がこれを読んだら“もしかして私のこと?”なんて、思うかもしれません。赤川次郎の小説が好きでよく貸してくれましたよね。
T211
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[No.543-2]彼の家

No.543-2

「家を新しくしたかもしれないし」
「彼・・・長男だったっけ?」
「よく覚えてるわね!」

友人が何を言わんとしているか、理解している。

「そうね・・・綺麗な奥さんと住んでるかもね」
「・・・まだ、未練でも?」
「まさか!ちょっと想い出しただけ」

彼の奥さんになろうとか考えたことはなかった。
まだ、そんな年齢ではなかったからだ。

「・・・のわりには、随分とひっぱるじゃない?この話題」
「そうじゃないけど・・・」

来月、実家に帰る予定がある。
でも、どうやら窓からは見ることはできないようだ。

「想い出がまたひとつ消えたようで」

気付けば、アルバムから随分と写真が抜け落ちている。
想い出と言う名のアルバムから・・・。

「抜け落ちたなら、また戻せばいいんじゃない?」
「・・・理屈の上ではね」

ただ、抜け落ちたもの拾い集めるほどセンチでもない。

「話してなかったけど・・・」
「ん?なにを?」
「彼、まだ独身よ」

今度はあえて探してみようと決意した。
彼の家と抜け落ちた写真を。
S543
(No.543完)
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[No.543-1]彼の家

No.543-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(あれ・・・おかしいな)

ひょんなきっかけから、元カレの家を探し始めた。
ただ、探すと言っても地図上の話だ。

「確か、ここから見えていたんだけど」

最寄り駅に付く直前に、窓から彼の家が見える。
その方向になるように、地図を操作する。
遠い記憶では、茶色の家だった記憶がある。

「それなら、駅から道を辿っていけば?」
「それができたら苦労しないわよ」

昨日、探し出せなかったことを友人に話した。

「もしかして・・・」
「そう、そのもしかして」

彼の家は知ってはいたが、行ったことはなかった。
その理由は色々あった。

「唯一、電車の窓から見える家しか知らないの」

当時、あえて家を探したりはしなかった。

「どうしても、見つからないのよね・・・」

便利な世の中だ。
現地と同じ景色を家に居ながら、見ることができる。
だからこそ、それらしい家が見つからない。

「そりゃね、あれから・・・年もたってるんでしょ?」
「・・・うん」

単に引っ越ししただけなのかもしれない。
色々あるには十分な月日が経過しているからだ。

(No.543-2へ続く)

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[No.542-2]カタログギフト

No.542-2

「届いたよ、ありがとう」

かなり時間を掛けて調べた。
けど、結局“これぞ!”と言うものに巡り合えなかった。

「もう、めでたくもないかもしれないけど・・・」
「ううん、祝ってくれる人が居ればうれしいものよ」

単なる知り合い程度の関係しかない僕たちだ。
でも、そこには良い意味で微妙な距離感がある。

「いつももらってばかりだろ?この間だって・・・」

落ち込む自分に、“ほっこり”できる本を贈ってくれた。

「色々、悩んだんだけど・・・」

彼女が望むようなものを、なかなか見つけられなかった。
大阪と札幌・・・という距離も加わって。

「結局、それになってしまって・・・ごめん」

喜ばれる物を贈りたい。
けど、喜ばれなくても自分で決めることにも意味がある。
プレゼントとはそういうものだと思っている。

「色々、悩んだ・・・って言ってたじゃない」
「う、うん・・・」
「私のために、悩んでくれたその時間が、プレゼントみたいなものよ」
S542
(No.542完)
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[No.542-1]カタログギフト

No.542-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「どんなスイーツが好き?」

女子と言えば、スイーツだろう。
ただ、スイーツだけに“甘い”考えかもしれない。

「あんこものかな・・・」
「・・・だいふくとかお団子とか」

意外なスイーツに少し驚いた。
特にお団子は“送る”には不向きだ。

「へぇ~そうなんだ」

どう思っているだろうか?
どうしてこんな話をしているのか、理由は話していない。

「歳のせいかな?」
「おいおい・・・まだ30前だろ?」

(それにしても何を贈ろうか・・・)

「それもそうね」
「それじゃ、もうすぐ休み時間が終わるから」
「うん、じゃあまた」

急いでスマホを鞄の中にしまい込んだ。
ほどなくして、始業のチャイムが鳴り始めた。

(No.542-2へ続く)

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ホタル通信 No.210

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.206 いくつもの顔を持つ女
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

今はほとんど書くことがなくなった少し“ドロッ”とした内容です。書くことがなくなったのは、書きたくないからではなくて、書くためのネタがそれほどないからです。

ホタル通信の主旨からやや外れてしまいますが、執筆のことを書かせて頂くと、今も実話や実話をヒントにして書くスタイルはまったく変わっていません。
手前味噌にはなりますが、それこそ何でも書いていいのであれば、創作に困ることは恐らくないでしょう。
創作に困ることは、イコール現実であまり小説のヒントになるものが起きていないことに他なりません。

さて、話を戻しますが実話度の通り、ほぼ実話です。
ご両親の離婚の度に苗字が変わる・・・ただそれだけのことかもしれませんが、彼女の中の思い出はその苗字に支配されている・・・そんな気がしてなりませんでした。
何度かご訪問された方であれば、お気づきだとは思いますが、彼女はせいじゅうろうシリーズの菜緒なんですよ。

全体的に、決して明るめの話ではありませんので、ラストは少し明るめに・・・というより、ノロケたような感じに仕上げてみました。
ラスト10行目からの展開は、あえて説明しません。これまたホタル通信の主旨から外れてしまいますが、十分想像に値する内容ですから、間接的に感じとって頂けたら、と考えています。
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[No.541-2]見てない

No.541-2

横着して解答を見ながら、宿題をしたことがあった。

「で、これがバレちゃって・・・」
「え?だって、答えはひとつなんだからバレようがないでしょ?」

確かに、計算の答えはひとつしかない。
答えを見て書いたのか、考えて書いたのか区別はつかない。

「それが、一段ズレてて・・・」
「ズレる?」

解答を解答欄に書き写した。
ところが、その時に、一段ズレてしまった。

「つまり、1番の答えが2番目に、2番目の答えが3番目に・・・」

すぐにバレて、担任に呼び付けられた。

「もちろん、認めたんでしょ?」
「それが・・・」

担任から厳しく追及された。
でも、最後までそれを認めなかった。

「見てない!を押し通したんだ」

結局、時間切れと言うか、先生が根負けした形で幕を閉じた。

「・・・ということは、やっぱり見たの?」
「だから、見てないって!」

当時と似たような展開になってしまった。
S541
(No.541完)
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[No.541-1]見てない

No.541-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・見たでしょ?」
「み、見てないよ!」

そんな趣味もないし、見る理由もない。

「だって、スマホ動いてるじゃん」
「だから、テーブルにぶつかっちゃって!」

その衝撃でテーブルさえも動いてしまった。

「・・・本当に?」
「本当だって!」
「・・・なら、許してあげる」

許すもなにも、やましいことは一切していない。
けど、ここは素直に受け入れた方がいいだろう。

「あ、ありがとう・・・」
「・・・あ」

彼女の追及にもにたやりとりで、あることを思い出した。

「小学生の時な・・・」

宿題に計算ドリルが出た。
ただ、最後のページは解答になっていた。

「それじゃ、意味ないじゃん?」
「理由はわからないけどそうなってたんだ」

切り取ることは可能だったはずだ。
あえてそうしなかったのは、担任の意向もあったと思う。

「これが悲劇の始まりで・・・」

(No.541-2へ続く)

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[No.540-2]ネコの居場所

No.540-2

「時々出会うネコには悪いことしてるのかな・・・」

つい、歩み寄ってしまう。
逃げられると分かっていながら。

「なんかさぁ・・・居場所を奪ってしまっているようで」
「でも居なくなってしまうわけじゃないでしょ?」

確かに戻っては来ている。
よほどお気に入りの場所なのかもしれない。

「それとこんな話してて気付いたんだけど・・・」
「今は無理でしょ?」
「・・・なにが?」

友人が話を戻し始めた。

「冷蔵庫の上なら、今もありえるけど」
「テレビの上は・・・無理じゃない?」

言われて気付いた。
確かにそうだ。

「少なくとも私の家じゃ無理」
「自慢じゃないけど、私の家も無理よ」

もしかしたら、多くのネコの居場所を奪っているのかもしれない。

「いずれお気に入りの場所がなくなってしまうのかな?」
「そんなことはないよ」

なくなるものがあれば、新しく生みだされるものもある。

「お掃除ロボットの上に乗ってるネコ、見たことない?」S540
(No.540完)
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[No.540-1]ネコの居場所

No.540-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
朝、ごみ捨て場に向かう途中に、時々そいつに出会う。
出会うと言っても相手はブロック塀の上でジッとしているだけだ。

(そんなに気持ちいいのかな?)

陽の光を浴びて、何とも気持ちよさそうな顔をしている。
だから・・・つい掛け声と共に近づいてしまう。

「やっぱり、今日も逃げられたよ」
「当たり前でしょ、飼いネコだって苦労するんだから」

ネコ好き同士で話が盛り上がる。
ただ、今はふたりともネコは飼っていない。

「でもさぁ・・・ほんとネコって気持ちいい場所知ってるよね」
「あなたの家ではどこだった?」
「私の家?そうね・・・」

やや遠い記憶をたどる。

「・・・冷蔵庫の上、それと・・・」
「テレビの上じゃない?」
「そう!そこそこ!」

冬場になると、いつもそこに居た。
特にテレビの上はお気に入りのようだった。

「でも、しっぽが邪魔でさぁ~」
「わかる!わかる!」

しっぽが邪魔なこと伝えるために呼んでいるのに・・・
逆にしっぽだけが反応する。

「まぁ、それが可愛くもあるんだけど」

テレビ画面を、まるで掃除するかのようにしっぽが動いていた。

(No.540-2へ続く)

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ホタル通信 No.209

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.272 夏の微笑み
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

前回のホタル通信に引き続き、この話も非常に懐かしく思えます。それに、非常にほろ苦い思い出でもあります。

前半はほぼ事実です。ただし、作者が彼なのか彼女なのか、想像しながら読んでみてください。
前半の最後に書いてあるように、ふたりで遊園地に向かっていました。その遊園地は、今はもう閉園になってしまった大阪のエキスポランドなんですよ。
親に一度連れていってもらった微かな記憶だけを頼りにして、遊園地へ向かいました。もちろんケータイもインターネットもない時代の話です。

そんなものですから、最寄駅から“近い”と思っていたその場所は思った以上に遠く、結局1時間近く歩いていたような・・・そんな記憶があります。
疲れたとか、彼に対して腹が立ったとかではなく、また、彼に失望したということもありません。
小説にも書きましたが、男の意地とでも言いましょうか・・・懸命になればなるほど見ていられなくなりました。

話は前後しますが、登場人物は3人いて、前半は彼女と彼、後半は彼女とその友人(女性)という、やや複雑な構成です。
また、前半は回想シーンの位置づけです。
後半は全て創作であり、「当時、もしこんなことがあったら、違う結果になっていたかもしれない」という期待を込めています。
手前味噌ですが、そこそこお気に入りのラストです。

最後になりますが、タイトルである“夏の微笑み”は、ある曲のタイトルでもあります。
あの頃、よく聞いていました。まるで私たちのことを言っているようで・・・。
T209
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[No.539-2]映画監督

No.539-2

「写真って、もともとそんなんじゃない?」
「そうなんだけど・・・」

うまく表現できない。

「そんなことより、急がないと映画始まっちゃうよ!」
「そ、それもそうね・・・」

更新が途絶えてることを上手く、はぐらかされた感じだ。
ただ、本当に急がないと間に合いそうにない。

「久しぶりの大作だもんね、あの監督の」

映画そのものよりも監督の話題になることが多い私たちだ。
少なからず“映画通”を自負している。

「今回も全てが“ギュ!”と凝縮されてるよね!」

予告を見た限りでも、それが伝わってきた。

「そうそう!シナリオにしてもキャストにしても、ほんと“ギュ!”・・・」
「・・・あっ」
「それそれ!」

多分、考えていることは同じだ。
ある一瞬に全てを掛けてシナリオとキャストを決める。
そしてカメラのシャッターを押す。

「全部をひとりでこなす映画監督みたいなものね!」
S539
(No.539完)
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[No.539-1]映画監督

No.539-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「最近、ブログ更新してないでしょ?」
「うん・・・忙しくって」

私がブログを書き始めてから、もう5年がたとうとしている。
それに触発されたのか・・・最近、友人も始めた。

「その忙しい・・・ってのが曲者なのよ」
「よく5年も続けられるわね?」

続けるにはコツがいる。
私の場合、趣味ではなく、半ば仕事として続けている。
それが良い意味で、義務感を生む。

「私以外にも結構いるよ」
「それに・・・更新も頻繁な人」

続けるだけでも難しいのが現実だ。
加えて頻繁に更新するとなると、至難の業と言える。
決して大げさな表現じゃない。
今も身をもって、そう感じている。

「その人のブログ、写真がメインなんだけど」

同じカメラを使っても、私には同じ写真が撮れそうな気がしない。
単にテクニックだけじゃないからだ。

「なんていうか・・・」

その人の写真には、その一瞬に全てが“ギュ!”と凝縮されてる。

(No.539-2へ続く)

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