[No.530-2]さくらさく
No.530-2
いつのころからか、関係がギクシャクし始めた。
更に追い討ちを掛けるかのように、彼の転勤が決まった。
「向こうに行っても元気でね」
私たちにそれを乗り越える力はもう残されていなかった。
「桜を見るたびに、思い出すかもな」
「かもな、じゃなくて思い出すのぉ!」
「わ、わかったよ」
いつにもなく、会話が弾む。
もう、これっきりと分かっているからだろうか。
「まぁ、来年は違う人と桜を見るから心配しないで」
「お、俺だって、そうだよ!」
最後の最後で、子供のような意地の張り合いだった。
「じゃあ、これで・・・」
「・・・うん」
花びらが舞い落ちきた。
まるで私たちの別れを演出するかのように。
残念ながら、今年はひとりで桜をみることになった。
それ以外は、あの時と何も変わらず、桜は咲いている。
(No.530完)
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