« [No.530-1]さくらさく | トップページ | [No.531-1]宇宙の謎 »

[No.530-2]さくらさく

No.530-2

いつのころからか、関係がギクシャクし始めた。
更に追い討ちを掛けるかのように、彼の転勤が決まった。

「向こうに行っても元気でね」

私たちにそれを乗り越える力はもう残されていなかった。

「桜を見るたびに、思い出すかもな」
「かもな、じゃなくて思い出すのぉ!」
「わ、わかったよ」

いつにもなく、会話が弾む。
もう、これっきりと分かっているからだろうか。

「まぁ、来年は違う人と桜を見るから心配しないで」
「お、俺だって、そうだよ!」

最後の最後で、子供のような意地の張り合いだった。

「じゃあ、これで・・・」
「・・・うん」

花びらが舞い落ちきた。
まるで私たちの別れを演出するかのように。

残念ながら、今年はひとりで桜をみることになった。
それ以外は、あの時と何も変わらず、桜は咲いている。S530
(No.530完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| |

« [No.530-1]さくらさく | トップページ | [No.531-1]宇宙の謎 »

(022)小説No.526~550」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.530-2]さくらさく:

« [No.530-1]さくらさく | トップページ | [No.531-1]宇宙の謎 »