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2014年3月

[No.525-2]鶏が先か卵が先か

No.525-2

「どっちなんだろうね」

それが分かったとしても、何かが変わるわけではない。
でも、気になる。

「一目ぼれ・・・だったしな」

女友達の紹介だった。
会った瞬間、好きになった。

「だったら、やっぱりアイドルが先じゃ・・・」
「どうして?」
「知らないうちに刷り込まれていたんじゃない?」

そのアイドルはデビュー当時から知っている。
元カノに出会ったのは、それから2年くらい経過した後だった。

「確かに時間的な流れで言えばそうかもしれない」

でも、デビュー当時から好きだったというわけではない。

「鶏が先か卵が先か・・・みたいになっちゃったわね」
「・・・ところで私は?」

ある程度、予測された展開になった。

「元カノ似?それともアイドル似?」

いじわるな質問だ・・・どちらにも似ているからだ。
それに、どちらを選んでも似ているから好きになったことになる。

「・・・どうやら、新種が誕生したみたい」

たまたま、目に入った週刊誌の見出しを読み上げてみた。S525
(No.525完)
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[No.525-1]鶏が先か卵が先か

No.525-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
高校2年生の時に、初めて女性と付き合った。

「確か、当時のアイドルに似てたんだよね?」

流れで、元カノの話になった。

「うん・・・って、いう人だよ」

そっくりとは言えないまでも、雰囲気はそのものだった。

「だから、そのアイドルまで好きになって」
「・・・あれ?」
「どうかした?」

いまさらながら、引っ掛かるものがある。

「・・・どっちが先なんだろう?」
「どっち?」

彼女を好きになったから、アイドルも好きになった。
今まではそう考えていた。
でも・・・その逆もありえる。

「アイドルを先に好きになった?」
「・・・かもしれない」

好きになったタイミングは同じだ。

「どうやら、それが起源みたいだな」

自分ではあまり意識したことはない。
でも、付き合う女性は皆“顔的”に似ている。
今思えば、この時が始まりだったようだ。

(No.525-2へ続く)

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[No.524-2]元祖の存在

No.524-2

「外出するときは、カバンの中に入れといて」
「あぁ、今もそうしてる」

けど、他人には知られたくない。
秘密とまでは行かないまでも・・・。

「でも、何だか悪い気もする」

それこそ真っ暗なカバンの中に閉じ込めている感じだ。
そう感じること自体“危ない”のかもしれないが・・・。

「せやったら、やっぱりここやん!」

また、胸ポケットに入れた。

「おいおい・・・」

・・・とか言いながらも、本当はそうしたい。

「じゃあ・・・休みの日だけでもええから」
「・・・それなら、まぁ、多分・・・大丈夫」

胸ポケットから顔が出ないようにすればいいだろう。

「よかったやん!せいじゅうろう!」

日曜日、菜緒(なお)と出掛けた。
もちろん、せいじゅうろうを胸ポケットに入れて。
幸いにも顔は出ていない。
ただ、俺のポケットに話しかけるのはやめて欲しいが・・・。Image_12
(No.524完)
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[No.524-1]元祖の存在

No.524-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
本来、せいじゅうろうと呼んでいいのは、こいつだけだ。
それだけ特別な存在でもある。

「随分、増えたやん!」

菜緒(なお)が言う通り、確かに増えてきた。
そのため、数日前に収納ボックスを買った。

「散らからないように箱へ入れるようにしたから」

透明だから、中身はよく見える。

「せやね!でも、せいじゅうろうだけは入れたらアカンよ」

せいじゅうろうとは、菜緒が名付けたリラックマの名前だ。
でも、全てがそうではない。
あくまでも、こいつだけが“せいじゅうろう”だ。

「それなら、どこに置いておくの?」
「せいじゅうろうは、ここ!」
「ここ!って・・・」

俺のワイシャツのポケットの中に入れた。

「今はここ」

よく意味が分からないが、都度移動させるらしい。

「着替えたいんだけど?」
「せやったら、ここ」

机の上に、チョコンとせいじゅうろうを乗せた。

(No.524-2へ続く)

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ホタル通信 No.201

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.240 平行線
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

ご存知の通り、作者である“ホタル”は、年齢や性別などの一切の情報は伏せています。だからこそ時には男性に、時には学生に・・・なったつもりで作品が作れます。

実話度は限りなくゼロです。平行線というキーワードだけが事実でその他は創作です。
平行線というキーワードを耳にした瞬間に、話の展開は「これしかない!」と考えていました。考えたあげくに舞台が学校、学生になったというより、不思議とこれ以外考えられませんでした。
そんな背景もあって、かなり短時間で完成した記憶があります。

“不思議ちゃん”と思われるかもしれませんが、小説を作るというより、小説上の登場人物が自ら話を展開させ、作者はそれを遠目で見て、その状況を小説にしている・・・という感じです。
他人の皆様はもとより、自分自身に対しても固定概念を植え付けないように、今でも正体不明で通しています。

話の展開は、自分でもよく使う“勘違い”で話が展開するタイプです。
試験範囲と思っていたら、最終的に「告白だった」につながります。単純明快に、死語かもしれませんがキャピキャピ感がでるように作ったつもりです。
それに、動きと言いましょうか、躍動感あふれる話にも仕上げたつもりなんですよ。
T201
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[No.523-2]気の早い桜

No.523-2

「それにしても、まだ早いよね?」

動き出した車の中で、さきっきの光景を振り返った。

「そうね、確かに」

自宅の周辺に、ちょっとした桜の名所がある。
それを見る限り、そんな気配はまるでない。

「それにしても気が早い桜だね」
「でも、気付けてよかったじゃん」
「気付けて?・・・それもそうだね」

鮮やかに咲いていなければ気付かなかっただろう。
ましてやあの場所だ。

「主張したかったのかもしれないね」

誰よりも早く咲くことで、存在を知らしめたのかもしれない。

「・・・ねぇ」
「私もそう考えてたところ!」

なぜだか、お互い答えを言わなかった。
それでも答えは同じはずだ。
友人が車をUターンさせたからだ。
S523
(No.523完)
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[No.523-1]気の早い桜

No.523-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
信号待ちの交差点で何気なく、窓の外を見た時だった。

(ん?)

ひときわ目を引く“ピンク色”がそこにあった。

「ちょっと、あれ見て・・・」

視線の先を指差した。

「えっ・・・本物?」

あまりにも鮮やか過ぎて、作り物のように見えなくもない。

「・・・だと思う、地面から伸びてるから」

ただ、観賞用に植えられたような気がしない。
放置されている・・・そんな雰囲気が漂う。

「確かに場所が場所だもんね」

その桜はゴミ捨て場所のすぐ脇に植えられていた。

「ちょっと、かわいそうな気もするね」

ゴミの山に囲まれた桜が、不憫に見えた。

(No.523-2へ続く)

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[No.522-2]プレゼント

No.522-2

「プレゼントありがとう」

最近はもっぱらラインでやりとりしている。

「ホッコリすることも必要ですから」

それを贈ってくれた理由は、何となく分かってはいた。

「そうだね、今の自分に必要かも」
「結構、いいこと書いてあるもんな」

そのキャラクターが登場する自宅のカレンダーもそうだ。
毎月、格言めいたことが書いてある。
プレゼントされた本は、まさしくそれを目的としたものと言える。

「そうなんだよね、偉人の格言じゃなくて・・・」
「リラックマ・・・だもんな」

時には偉人を超える格言も少なくない。

「とにかく、ありがとう・・・気遣ってくれて」
「でも、お返しはキッチリ頂きますよ!」
「え、えっ~!?」

1ヵ月後、キッチリ、お返しをした。
元気を取り戻した自分の姿を見せることによって。
S522_3
(No.522完)
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[No.522-1]プレゼント

No.522-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
バレンタインデーにしては遅い。
だからと言って、3月中旬の誕生日にはまだ早い。

(何かな?)

多分、仕事に関係するものではないだろう。
根拠は無いが、経験上そう思えた。

「結構重いな・・・」

包装紙を開けていないので中身はまだ分からない。
ただ、見た目よりも重く感じる。

「今まではお菓子だったよな」

限定商品の発売に伴い、時々送られてきた。
お菓子の場合は逆に、見た目よりも軽い。

(とにかく開けてみるか・・・)

一応、周りの目を気にしながら包装紙を開けた。
色んな意味で“万一”ということも有り得るからだ。

「・・・ん?」

そこに、見慣れたキャラクターが現れた。
彼女から送られてくるとは想いも寄らなかった。

(No.522-2へ続く)

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ホタル通信 No.200

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.300 天空のホタル
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

表面上の実話度はそれほど高くはありませんが、バックグラウンドには実話度以上のリアルな世界が広がっています。

切り番・・・No.100とかNo.200には、あえて当ブログに関係の深い作品を発表しています。
加えて、これらの作品に登場する人物は設定こそ違えども全て同じ人です。もちろん、実在します。

シリウスは、小説上の彼女にとっても僕にとっても、非常に重要な存在です。
その証拠にブログを始めて間もない頃に「No.006 四つのシリウス」という作品を発表しているくらいです。
彼女にとって、星たちは心を許せる存在と言いましょうか、唯一素直になれる対象だったのかもしれません。シリウスの話をする彼女の目は、それこそシリウス以上に輝いていました。

冒頭に記載した通り、表面上の実話度は低めで、会話などはほぼ創作です。あえて、実話度を下げてオブラートに包んだような作品に仕上げました。
従って、このような話につながることが、バックグラウンドにあったということです。
ただ、表面上のロマンティックさとは程遠く、どちらかと言えば、ドロドロしていました。

そんな現実がありながらも、そうなればいいな・・・的な想いがラストには現れているのかもしれませんね。今も・・・シリウスを見上げていますか?
T200
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[No.521-2]奥の細道

No.521-2

「ところで、なんで怒ってるわけ?」
「そ、そうだった!」

ついさっきも出た、新参者との攻防が昨日もあった。

「明らかに私の場所に置いてるのよ!」

盗難防止のチェーンも置いてある。
だから、その場所に先客がいることはわかるはずだ。

「頭に来たから、思いっきり、よけてあげたわ」
「・・・ここは私の場所!ってね」

そうこうしながら、ようやく今の場所に落着いた。

数日前から少し気になっていた。
あれだけの攻防を繰り返して来た駐輪場に空きが目立ち始めた。
特に私の隣に至っては、今は一台も置かれていない。

(・・・もしかして)

最近、引越しの車を見掛けることが多くなった。
おそらく、時期的にもそれが大きな理由だと思う。

「もう居ないんだ・・・」

なぜか、急に寂しさを感じた。
ふと、松尾芭蕉が詠んだ句を思い出した。
S521
(No.521完)
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[No.521-1]奥の細道

No.521-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・減ってる?)

それが確信に変わったのは数日後だった。

「ほんと、頭にきちゃう!」
「ど、どうしたの!?朝から・・・」
「昨日さぁ・・・」

住んでいる賃貸マンションの駐輪場での出来事だった。

「盗まれたの!?」
「それはあなたでしょ・・・」

いつも同じところに駐輪している。
でも、場所が決められているわけではない。

「早い話、どこに置いてもいいんだけど」
「ほら、暗黙の了解というか・・・」

みんな決まった場所に置く。

「引越してきた当初は苦労したわ」
「ある日、見慣れない自転車が・・・というパターンね」

友人の言う通りだ。
新参者扱いで、居場所を確保するまでしばらく彷徨った。

「逆に同じ新参者に追い出されたことも」

そんな情けないこともあった。

(No.521-2へ続く)

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[No.520-2]今日の運勢

No.520-2

「停滞していたことが動き出す・・・」
「・・・信じて進めば道は切り開かれる」
「そして・・・悩みごとが次々解決!だって」

彼女がスマホを見ながら、読み上げてくれた。

「今の僕に必要なことばかりだな」

逆に考えれば、今の僕の状態を全て言い当てている。

「すごい占い結果だな・・・どこのサイト?」
「とっておきのサイトだから秘密だよ!」

彼女は気付いているのだろうか?
本当は・・・一日違いで、“みずかめ座”だ。

「教えろよ」
「い・や・だ!」

いつもこんな調子だから、一見するとガサツに見える。
けど、それは一種の照れ隠しなのかもしれない。
それが今、分かったような気がする。

「ところで、もうひとつ書いてなかった?」
「なんて?」
「“助けてくれる女神あらわる”ってだよ」
S520
(No.520完)
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[No.520-1]今日の運勢

No.520-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、何座だったっけ?」
「なにざ?」
「・・・星座がなにって聞いてるの!」

なぜか僕が怒られている。
彼女はいつも何の脈略もなく、唐突に話を切り出してくる。

「・・・うお座だけど」
「良かったじゃん!」

あえて小難しく言えば主語や目的語がない。

「“なにが”だよ?」
「決まってるじゃん!」

もう一度言わせてもらえば、主語や目的語がない。

「今日の運勢、一番良いよ!」

もし、周りの人が聞き耳を立てていたとすれば・・・。
散々、引っ張っておいて“それかい!”となるだろう。

「良かったね」

さらに結論がそれだ。
大阪流で行けば、この瞬間に全員がズッコケルだろう。
ただ、今の僕には何よりも朗報だった。

(No.520-2へ続く)

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ホタル通信 No.199

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.245 四次元の世界
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

今でも、小学生の頃に見ていた番組のことを鮮明に覚えています。それだけ子供心には衝撃的でした。

ある人が、四次元の世界に迷い込んでしまう。でも、そこは自分が居た世界となんら変わりはない。
唯一、違うのは自分を知る人が居ないこと・・・そう、自分の居た世界でいう親も兄弟も、自分のことを知らない。
幽霊などの直接的な怪奇現象よりも、よほど怖くて、それが頭から離れませんでした。
ただ、これが実話に基いた話だったのか、フィクションであったのかは覚えていません。
結局、その人がどうなったのか、残念ながらこれも記憶にはありません。

それでは内容に少し触れさせて頂きますね。
この会話は車の中で交わされています。前半の最後の2行でそれを表しています。車がトンネルに入ることによって、四次元の話がスタートしたようなものです。
でも、急に思い出したのではなく、常々恐怖心を持っており、それがトンネルだけでなく、ゲートとかも・・・というのが後半に出てきます。

それを隠すために、またゲートを通らないようにするために、タバコを買いに行くように見せかけて、そこを避ける。
自分で言うのも変ですが、このタバコの下りは今読んでみても、最初はどのような意味があるかピンときませんでした、お恥ずかしながら。

ラストは少し強引で、それこそ「だ・か・ら何なんだよ」という感じです。当時、このふたりは一般人という設定でした。でも、これまた強引に考えると、芸能人カップルなんて設定が似合うのかもしれませんね。
誰も、僕達を知らない・・・だ・か・ら、マスコミに騒がれることもなく、愛を育める、ってことでしょうか。
T199
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[No.519-2]聞けない歌

No.519-2

「・・・当時、付き合ってはいなかったんだけど」
「ちょっと複雑な関係の人が居て・・・」

興味津々の顔をしている。
でも、その興味の先は間違いなく歌ではない。

「・・・で、そのふたつの歌が心境というか状況というか・・・」

当時の自分を代弁していた。

「ふ~ん・・・」

肝心な所が聞けず、明らかに不満な顔をしている。

「だから、そのふたつは今でも聞けずにいる」

もちろん、偶然、耳にすることはある。

「耳を塞いでる・・・とか?」
「・・・結果的にはそうなるね」

極端に言えばその場から逃げ出したことさえある。

「・・・ただ」
「ただ?」

つい最近、そのひとつを受入れた。

「YouTubeで何の気なしにアニメの主題歌特集を聞いていたら」
「・・・それに含まれてた?」

時間がそれを解決してくれたようだった。
S519
(No.519完)
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[No.519-1]聞けない歌

No.519-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
誰にでも想い出の歌のひとつやふたつはあるだろう。
けど、想い出は決して楽しいことばかりじゃない。

「・・・俺か?」
「ひとつくらいはあるでしょ?」

女友達がここぞと言わんばかりに突っ込んでくる。

「私なんか、彼と別れるたびに」
「・・・で、いくつあるの?」
「そうねぇ・・・」

指折り数えだした。

「この話って、新手の“モテ自慢”か?」

どうやら、両手の指を折っても足りないらしい。

「わ、わかったから!僕はとりあえず“ふたつ”だよ」
「なんて歌?」

しぶしぶ歌のタイトルを答えた。

「それ知ってる!ドラマの主題歌だよね?」
「もうひとつは・・・アニメの主題歌としても使われたよね」

さすが音楽通の彼女だ、幅広く知っている。

「まぁ、何があったのかまでは聞かないけどね」
「・・・とか言いながら、何だよ、その顔・・・」

乱暴な言い方をすれば“言えよ”という顔だ。
話せなくもないが、結構辛い時に聞いた歌だった。

(No.519-2へ続く)

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[No.518-2]静かな日曜日

No.518-2

とにかく日曜日の朝は、驚くほど静かだった。

「それこそ街から誰も居なくなったみたいだったな」

それに車の姿も見えなかった。

「まぁ、その日だけたまたま・・・だったかもしれないけど」
「普段と違う行動ゆえの発見ですね!」
「まぁ、そのきっかけが仕事・・・というのは勘弁だけど」

でも、静かな朝に、ホッコリしたわけではない。
むしろ、妙な緊張感があった。

「緊張感?」

何となく空気が張り詰めているよう思えた。

「そう考えると雑踏って、大切なのかもしれないな」

もしかしたら、毎日空気は張り詰めているのかもしれない。

「それを雑踏がうまく緩和している・・・」
「おもしろい考えですね」

それに気付かずに僕らは生きている。

「・・・かもしれないっていう、説なんかどうかな?」
「ちょっと、強引じゃありませんか?」
「そうかな」

月曜日は朝は、何かとザワザワしている。
どうでもいいような話が飛び交うことも多い。

「みんなそれを知ってるからこその行動だとすれば?」S518
(No.518完)
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[No.518-1]静かな日曜日

No.518-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(案外、静かなんだ・・・)

日曜日の、それもこんな朝早くに外出するは久しぶりだ。
ただ、外出した理由はイマイチだが・・・。

「昨日、店に出てたんですか?」
「あぁ、どうしても片付けないといけない仕事があって」

店長とは言え、定休日である日曜日は休んでいた。
言わばその均衡が昨日崩れた。

「毎日遅いんですから、休みの日ぐらい休んでくださいね」

自分の中でもそのつもりだった。
現実、今まで日曜日に仕事をしたことはなかった。

「ありがとう」
「・・・で、仕事は大丈夫なんですか?」

幸いにも仕事は、はかどった。
ある意味、定休日は仕事をしやすい。

「仕事は全部片付いたよ」
「静かだったから集中できたし」

あえて朝早くから仕事をした。
午前中に仕事を片付けたかったからだ。

「日曜日の朝って、静かなんだよね」
「・・そうなんですか?」
「イメージだと、行楽に向かう人でザワザワしてそうだけど」

逆に、日曜日くらい家でゆっくりしたい・・・。
そんな人が多いのかもしれない。

(No.518-2へ続く)

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ホタル通信 No.198

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.257 差し延べる手
実話度:★★★☆☆(40%)
語り手:女性

これこそ冬のホタルの真髄である“日常”を切り取った小説と言えます。

朝の小学生たちの行動は概ね事実です。話の中心であるひとりだけ歩いていた女の子も事実なのですが、その子が転校生だったのかは不明です。
ひとりだけ歩く女の子、そしてスクール帽の色・・・この事実を目の当たりにした時、この小説を思い付いたのです。

転校生という設定にすれば、なんとなく話のつじつまが合いますし、サクサク、話を作ることができました。
いつもの通り、ラストは考えていませんでしたが、幸いにも転校生という設定が良い方向へ進んだと考えています。
なぜ、その女の子が転校生だと思ったのか・・・それは自分がかつてそうだった・・・これがラストを決定したと思います。

・・・とは言うもの、ラストはちょっと商業的でベタな終わり方です。まぁ、そつなく終わっても自分的には生々しさがなく、物足りなくも感じます。話のテーマは違えども、よくあるパターンだと思います。
ですが、知っててそうしたわけではありません。あくまでも、話の展開上、そうなったに過ぎません。
何度か書いたこともありますが、なんせ1話(前半、後半)は仕事の昼休みの小一時間で作っているものですから、余り深くは考えていません。

今でも、目の前を小学生が駆け抜けて行きます。相変わらずみんな元気ですよ。誰一人残ることなく。
T198
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[No.517-2]疎遠

No.517-2

「理由?」
「だって、スマホのアドレス知らないし・・・」

素直に聞けば済むことかもしれない。

「つまり、その距離感ってやつ?」
「そう・・・」

聞いてしまえば、その距離感が良くも悪くも影響してしまう。

「話がズレてきてない?」
「あっ、うん・・・で、最近メールしてないんだ」

送らないから来ないのか、来ないから送らないのか・・・。

「今どき、小学生だってそんな消極的じゃないわよ?」

色々あって、タイミングを逸してしまっている。

「それでズルズルと?」

気付いてみれば、やりとりがなくなって一年が経とうとしている。
それが独り言として出たのかもしれない。

「・・・好きなんだ?」
「な、なんでよ!?」

でも、完全に否定はできない。

「とにかく送ってみるよ」
「案外・・・急激に進展するかもね」
S517
(No.517完)
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