[No.516-2]雪景色
No.516-2
胴体はサッカーボールより、ひとまわり小さいくらいだ。
「こうして、頭を乗っけたら・・・」
もう、完成が目前だ。
「楽しそうね?」
「だって、滅多にないことだもん」
友人はあることに気付いていない。
東京で生まれ育ったのに東京タワーに行ったことがない。
例えるなら、それに似ている。
「暇だから私も作ろうかな」
よくよく考えなくても、雪だるまを一度も作ったことがない。
雪質が違うのが大きな理由だ。
ここの雪と違い、サラサラすぎて、そのままでは固まらない。
「おっ!プロの出番ね」
それに、あえて作る人も居ない。
自分もそうだった。
実際、観光客が作ったであろう以外は、見たことがない。
「・・・案外、下手ね」
「だって、初めてなんだから・・・」
「・・・えっ!?」
それぞれが作り上げた雪だるまが並ぶ。
「あはは!情けない顔ね、あなたもそれも」
「だって、うまく作れなかったんだもん!」
午後の陽射しで、雪だるまの顔も溶け始めていた。
(No.516完)
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