[No.515-2]デスティニー
No.515-2
本来、病院に向かうはずだった。
でも、私は亡くなった彼女と共に家にいる。
「・・・深夜に急変して」
看取ってくれた友人のひとりがポツリとつぶやいた。
「それでもあなたが来るまで頑張っていたのよ」
何度と無く、乾いた機械音がけたたましく鳴り響いていたらしい。
それこそ、ドラマでよく見るシーンそのものだ。
「本来なら、とっくに亡くなっていてもおかしくなかったって」
「あなたが来ることを伝えたら、意識がないはずなのに・・・」
体がピクピクと反応していたらしい。
「あなたに迷惑を掛けたくなかったんじゃない?」
「金曜日までに、もし死ぬようなことになったら・・・」
「・・・そうね」
それこそ、どうしてよいか分からなくなるだろう。
仕事と人の命を天秤に掛けるつもりはない・・・でも・・・・。
「彼女も、仕事人だったから・・・」
「あなたの立場を一番よく分かっていたと思うよ」
「だから、今日まで頑張ったと思うの」
その言葉を聞いた途端、嗚咽した。
涙はここに来るまでに、もう枯れてしまった。
彼女が倒れる少し前に、偶然ある歌を耳にした。
“見えない糸に操られている”
このフレーズが妙に印象的だった。
「・・・ありがとうね」
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