[No.513-2]行きと帰り
No.513-2
「でもね、帰りは違ったの」
この橋を渡り終えた時、もう涙は消えていた。
「だって・・・ね」
海と空の構図が帰りには、街と空に替わった。
「なんだか、急に現実に戻された気がしたの」
行きは悲劇のヒロインにでもなった気で居たのかもしれない。
「しっかりしなきゃいけない・・・そう思ったの」
「・・・らしいな」
空港での滞在時間は30分もなかった。
たったそれだけなのに、行きと帰りでは大きく気持ちが変わった。
「だから不思議なの・・・ただ橋を渡っただけなのに」
「・・・色んなドラマがあったんだろうな」
「そうね、その時の私たち以外にも」
時を経て、また私はこの橋を渡ろうとしている。
「今回はどんな気持ちになるんだろう・・・」
「帰りが・・・ってことか?」
ただ、あの時とはシチュエーションが異なる。
帰りは私ひとりじゃない。
「うん、涙は涙でも・・・」
「きっと、うれし涙で橋を渡れるさ」
行きも帰りもふたりで橋を渡る。
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