[No.513-1]行きと帰り
No.513-1
登場人物
女性=牽引役 男性=相手
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海上の空港につながる一本の橋がある。
この橋を渡る時、色々な想いが巡る。
「どうした・・・何か物憂げな表情だけど・・・」
「えっ!そんな表情してた?」
軽く、とぼけてみた。
「悩みごとでも?」
「ううん、悩みごとではなくて・・・」
とぼけた意味がなくなった。
遠まわしに物憂げな表情を認めたことになる。
「不思議なんだよね、この橋」
「・・・不思議?ただの橋だろ」
空港に向かって橋を渡る。
その時、車中からは一点透視法のような構図の海と空が見える。
「景色が、ってこと?」
「あのね・・・」
数年前、この橋を元カレと渡った。
転勤を機に別れることになった彼を見送るために。
「その話なら聞いたことあったよな?」
「確か、転勤が原因じゃなくて・・・」
「そう、転勤が背中を押しただけ」
運転する私に、彼はいつになくやさしかった。
そんな私を気遣えば気遣うほど、涙が溢れ出してきた。
「空港に向かう時は本当に辛かったわ」
この橋を越えれば、いよいよ別れの時を実感せざるを得なかった。
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