« [No.512-2]LINE | トップページ | [No.513-2]行きと帰り »

[No.513-1]行きと帰り

No.513-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
海上の空港につながる一本の橋がある。
この橋を渡る時、色々な想いが巡る。

「どうした・・・何か物憂げな表情だけど・・・」
「えっ!そんな表情してた?」

軽く、とぼけてみた。

「悩みごとでも?」
「ううん、悩みごとではなくて・・・」

とぼけた意味がなくなった。
遠まわしに物憂げな表情を認めたことになる。

「不思議なんだよね、この橋」
「・・・不思議?ただの橋だろ」

空港に向かって橋を渡る。
その時、車中からは一点透視法のような構図の海と空が見える。

「景色が、ってこと?」
「あのね・・・」

数年前、この橋を元カレと渡った。
転勤を機に別れることになった彼を見送るために。

「その話なら聞いたことあったよな?」
「確か、転勤が原因じゃなくて・・・」
「そう、転勤が背中を押しただけ」

運転する私に、彼はいつになくやさしかった。
そんな私を気遣えば気遣うほど、涙が溢れ出してきた。

「空港に向かう時は本当に辛かったわ」

この橋を越えれば、いよいよ別れの時を実感せざるを得なかった。

(No.513-2へ続く)

| |

« [No.512-2]LINE | トップページ | [No.513-2]行きと帰り »

(021)小説No.501~525」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.513-1]行きと帰り:

« [No.512-2]LINE | トップページ | [No.513-2]行きと帰り »