[No.511-2]手を振る子供
No.511-2
「言っとくけど、子供が嫌いなわけじゃないからね」
「知ってるわよ、言われなくても」
私の場合は逆に電車ではなく、人だった。
人に対してバイバイと告げた。
「まるで・・・3年前の自分を見ているようで」
ただ、邪念だらけの“バイバイ”だった。
「怒りや悲しみ・・・色んな感情が入っていたと思う」
もちろん、感謝の気持ちがなかったわけではない。
「・・・で、純粋な子供に嫉妬?」
「かもしれない、恥ずかしいけど」
電車の発車を告げるアナウンスが流れてきた。
それに呼応するかのように、子供の声がより大きくなった。
「手を振ってあげたら?」
「だって、電車にバイバイしてるんだよ?」
「そう?なら、私が手を振る・・・」
そう言いかけた言葉をさえぎり、私が手を振った。
「バイバイ!」
その瞬間、子供と目が合い、私に手を振り返してきた。
あの時とは違う瞬間だった。
(No.511完)
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