[No.508-2]男女の違い
No.508-2
「寒い朝だったね」
「ほんと、息が真っ白だったよ」
以前の僕たちなら、交わすことがなかった会話だ。
でも、今ならごく自然に話すことができる。
「ねぇ、初めてのデート、覚えてる?」
「なんだよ、急に・・・」
「覚えてないの!?」
「バカ言うなよ、今でも鮮明に覚えてるよ」
この後、なぜか、ふたりで大笑いした。
騒がしい空港のロビー内だ。
多少、大きな笑い声でも雑踏にかき消される。
「あの頃は楽しかったね!」
「今だって楽しいさ」
「・・・だね」
また、ふたりで大笑いした。
それからも楽しい時間が流れた。
「・・・行くね」
「そろそろ、時間だもな」
いつのまにか出発の時刻が迫っていた。
「・・・じゃぁ」
「うん」
その言葉を最後に僕へ背中を向け、出発ロビーに消えて行った。
一度もこちらを振り返ることもなく。
(No.508完)
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