[No.506-2]野良猫
No.506-2
「それにしても昨日も会ったんだって?」
「私も割りと時間に正確なので」
猫は決まった散歩コースを持つと聞いたことがある。
散歩というより、縄張りを“点検”しているとも聞いた。
「昨日も今日も、少し離れた所で振り向いたんだよ」
呼び掛けてもいないのに、まるで分かっているかのように振り向く。
昨日も今日もほぼ同じシチュエーションだった。
「悩みごとでもあるの?」
「別にそんなんじゃないけど・・・」
平凡な毎日に退屈しているのかもしれない。
そこに来て、自由気ままな野良猫だ。
「そう見えるだけかもしれないよ」
「彼らだって、それなりに大変だと思うな」
「・・・そうね、今度会ったら聞いてみるよ」
それから3日後に、例の猫が目の前を通り過ぎた。
やはり時間に正確なところが似ている。
「ちょ、ちょっと待って!」
猫の歩みが止まる。
言葉を理解したわけではなく、私の声にただ反応しただけだ。
そして徐に振り向いた。
「ねぇ、なに考えてる?」
表情を変えることなく、すぐに前を向いて歩き出した。
私の存在などまるで無視するかのように。
(No.506完)
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