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2013年12月

ホタル通信 No.192

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.291 ブルー・スカイ・ブルー
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

洒落のつもりではありませんが、雲が題材になっているだけあって、雲を掴むような話です。

全体的な雰囲気としては、何かにターゲットが当たっているようないないような感じがあります。格好良く言えば、それを狙って仕上げています。
午後の公園、静寂と子供のハシャグ声。これらの組合せは自分の中では、アンニュイな象徴なんですよ。・・・なので、この話はロマンティックと言うよりも、少し気だるい中での会話だと思ってください。
擬音で表すならキャピキャピのカップルではなく、倦怠期ではないにせよ、モヤモヤした状態のカップルをイメージしています。恋人同士なんだけども友達のようでもあり、単なる仲間もようでもあり・・・。

話のきっかけは、ご想像通り、“雲”です。
いまさら雲の形が「あれに見える、これに見える」とパターンは、自分にとっても普通過ぎるのですが、これに心境が加わった時、少し別の展開が見えてきました。
流される雲・・・流れる雲に対して、流されない心。何がどうしたというわけではないのですが、そんなことをフっと考えていました。
実際には公園ではなく、部屋(マンションの7階)から見える雲を一人でボンヤリ見ていました。

最後にタイトルに触れておきますね。
タイトルと内容に、これといった関係は特にありません。荒っぽく言えば適当にネーミングしていますが、有名な歌のタイトルからとったのは間違いありません。
ただ、適当とは言っても、どこかで繋がっているような・・・そんな気がしたものですから。
T192
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[No.505-2]私に行けと・・・

No.505-2

(久しぶりね・・・)

何年か振りに、古川橋に降り立った。
目の前に目指す大型スーパーがある。
そして、すぐ近くには別れた彼が住む、マンションもある。
ただ、今もそこに住んでいるかは分からない。

「こんにちわ」

いつもの店員に声を掛ける。
目的はポップコーンを買うことにある。
そうでもないと、ここには来ない・・・来る理由もない。

(・・・確かあれだったね)

すぐそこに例のマンションがある。
帰り道、自然と足がマンションに向う。

「1、2・・・7・・・」

声に出して、階数を数える。

昔、マンションの高層から見ていた景色・・・。
今そこに私が居る。

(私に行けということだったのかな?)

単なる偶然と分かっている。
とは言え、何らかの意志を感じずにはいられない。

ふんだんにキャラメルが振り掛けられたポップコーンを口にする。
その甘さのせいだろうか・・・涙が止まらない。S505
(No.505完)
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[No.505-1]私に行けと・・・

No.505-1

登場人物
女性=牽引役
-----------------------------
運命と言うほど大袈裟なものではない。
それは単なる偶然に過ぎない、でも・・・。

「また買いに来ちゃった」

顔見知りの店員に声を掛ける。
最近、評判になっているポップコーンを買いに来た。
私のお気に入りはキャラメル味だ。

「次はどこなんですか?」

いわゆる屋台のようにアチコチで販売している。
ただ、ある程度場所は決まっているし、事前に場所は分かる。
大型スーパーやショッピングモールがそれだ。

「・・・えっ!古川橋・・・」

ほとんど忘れかけていた地名を聞いた。

「そ、そうなんですか・・・」

確かにそこには大型スーパーがある。

(どうしよう・・・)

今、不思議な感覚に包まれている。
今までに経験したことがない感覚だ。

「私に・・・そこに行けと・・・」

まさかこの流れで、その名前が出るとは思ってもみなかった。
試されている・・・そんな気にもなってしまう。

(No.505-2へ続く)

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[No.504-2]年賀状

No.504-2

リラックマ・・・せいじゅうろうは最初、菜緒(なお)だけに送っていた。

「ある年、間違えてしまって・・・」

一枚だけ印刷するつもりが、全部、印刷してしまった。
仕方なく、会社の上司にもそれを送った。

「でも、意外に好評だったやろ?」
「まぁね」

その時、菜緒に相談していた。
どうしたものかと・・・。

「元旦早々、せいじゅうろうやで!」
「だよな」

説明になっていないけど、十分伝わってきた。
それ以来、菜緒だけでなく、全員に送ることにした。

「ええやん!せいじゅうろうも満足や」

面倒な年賀状にあっても菜緒の存在が、やる気を出させてくれる。

「今年も楽しみや!」
「正確には来年だろ?」
「せやったぁ!」

(どれにするかな・・・)

どのページを見ても、あいつらが揃っている。
今年も随分、楽しませてもらったし、助けてもらった。

「・・・これにするか!」
Image
(No.504完)
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[No.504-1]年賀状

No.504-1    [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今年も例の行事がやってきた。

「そろそろ、年賀状出さないと」

(出す前に作る必要があるけどな)

いつの頃からか、年賀状を出すのが面倒になってきた。
理由は色々あると思う。

「まだ出してへんの?うちはもう出したで」
「いっつも早いよね」
「やっぱり、元旦に届けたいやん!」

年々、年賀状よりもメールで新年の挨拶が来るようになった。
それもあって、年賀状の数が減って行った。
出す方も来る方も。

「菜緒(なお)の世代なら、メールじゃないの?」
「うちは、年賀状派」

小中学生の頃は、年賀状に一喜一憂した。
思わぬ人から届いて、歓喜の声をあげたこともあった。

「社会人になると、何だか・・・」

会社関係が増えて、社交辞令とも言える内容にうんざりし始めた。
それはお互い様だろうが・・・。

「それはうちも同じ」
「せやかて、その中でも待ち焦がれている一枚がある」

「もしかして、あれ?」

彼女に送る年賀状は、いつもせいじゅうろうがそこに居る

(No.504-2へ続く)

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ホタル通信 No.191

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.236 朝靄のユーロスター
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この小説、実話度は20%ですが、実は少し評価し難い部分があります。

書くきっかけとなったのは、知人とのメールのやりとりでした。
簡単に言えば、その知人の夢を、冬のホタル風にアレンジしています。
小説のタイトルである「朝霧のユーロスター」も、メールの中に書いてあった文章を拝借させて頂きました。今でも好きなタイトルのひとつです。これだけでも、様々なイメージが膨らんできます。

さて、小説の内容は、その知人のメールを随所に引用させて頂いています。不安なのか期待なのか、それに今、自分がどこに居るのかさえ、はっきりしない・・・。
それにユーロスターは外国の列車です。夢の舞台が日本ではないことも、よりモヤモヤ感を高めていると思います。
・・・夢ですから、理屈もヘッタクレもありませんが、時に何よりも、自分の心境を表現してくれることがあります。

なので、実話度が100%に近いと言えば近いのですが、あくまでも“夢”がベースになっているので、あえて低めに評価しています。
話は戻りますが、好きなタイトルのひとつです。あまり、タイトルには拘らないタイプなのですが、時々、自分的に「これは」と思うタイトルに出会うことがあります。
現在、約500話ある話の中で、好きなタイトルを三つあげるとすれば次のようになります。

朝霧のユーロスターブルーメの丘非常階段のシンデレラ

・・・なんですよ。
T191
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[No.503-2]ファンクラブ

No.503-2

「スター?随分と持ち上げてくれるよな」
「だから、あくまでも例えだよ、たとえ」

くやしいけど、そう見えてしまう。
けど、素直にそれを口にしたくない。

「その時は結構、冷やかされたんだぜ」

なかば公認の中であってもだ。

「だから、そんなノリで撮ったんだよ」

いわゆる堅苦しい記念写真風ではない。

「・・・それより、どの人?」
「冷やかした人か?」

分かっているくせに、彼がとぼけた返事をかえしてきた。

「・・・わ、わかったよ、この人だよ、この人」

私のプレッシャーに負けたのか、すぐに状況を理解した。

「ふ~ん・・・なかなか綺麗な人じゃない」

なかなかどころか、高校生にしてこの魅力だ。
悔しいけど、完全に負けている。

「・・・というのは冗談で、本当はこの人」
「えっ・・・」

よく考えれば分かる。
彼女と記念撮影なんだから、となりに居る人が彼女だ。

「さっきの人は顧問の先生だよ、彼女の学校の」
「・・・負けたと思った?」
「もう!しらない!」

しっかりと手を握るふたりに、心地よい嫉妬を感じた。
S503
(No.503完)
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[No.503-1]ファンクラブ

No.503-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「何なのこの写真!?」
「ん・・・どれ?」

昔のアルバムを見せてもらっていた。
その中に気になる一枚を見つけた。

「見ての通り、クラブ活動の集合写真だよ」

確かに学校名らしきものが入ったジャージを着ている。

「高校2年の秋の大会だったかな?」

風景が写っていないので、季節までは判断できない。

「そうじゃなくて、なんで女子に囲まれているの?」
「あなた女子校に通ってたっけ?」

理不尽な質問だとは分かっている。
けど、そうも言いたくなる。
彼以外、全員女子だからだ。

「・・・みたいだな」
「みたいって・・・」

女子に囲まれた、彼の満面の笑みが憎らしい。
これだけの女子に囲まれ、さぞご満悦のことだったろう。

「撮った時は、こんなに居るとは思ってなかった」
「だって・・・」

彼が写真を撮るに至る経緯をしゃべりはじめた。

「たまたま彼女と写真を撮ることになって、そしたら・・・」

付き合っていた人も学校は違えども、バスケ部だったらしい。

「周りに隠してなかったから、なりゆきで」

ただ、見ようによっては、ファンに囲まれたスターにも見える。

(No.503-2へ続く)

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[No.502-2]地元の名物

No.502-2

「もしかして・・・知らない?」

ほとんど初めて聞くものばかりだ。

「うん、情けないけど」

確かに地元だから絶対に知っているとは言えない。
ただ、僕には知らない理由が分かっている。

「これから・・・って時に」

卒業後、地元を離れて仕事をすることになった。
社会人になったら、今までとは違う世界が見えていたはずだ。
地元の名物だってそれなりに知る機会もあっただろう。

「そうかもしれないね」
「ちょっと言い訳がましいけどな」

意外な名物に驚きながらも、何だか嬉しくもある。

「変な言い方だけど、地元を見直したよ」
「離れているからこそ・・・ということもあるよね」

ラジオの声に“そう!そう!”と同意できない。
でも、偶然とは言え、知れて良かった。

「帰りどうする?」
「もちろん、食べて帰る・・・でしょ?」

その前に、大切なイベントが待ち構えているが・・・。
S502
(No.502完)
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[No.502-1]地元の名物

No.502-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「地元の名物って、なんだか知ってる?」
「私の地元ってこと?」

車のFMラジオから、故郷の地名が聞こえる。
どうやら名物の話しているようだった。

「あぁ、確か・・・だったよね?」
「そうだよ・・・が、一番有名かもね」

その知名度は、地元のみならず全国区だ。

「それ、美味いんだよな!」
「あなたの地元は?」

答えは簡単だ。
さっきから、ラジオが答えてくれている。
彼女もそれを聞いていたはずだ。

「そう言えば、今、聞こえているところだよね?」
「う、うん・・・そ、そうだよ」

ぎこちない返事には理由がある。

「まさか・・・」

気付かれたかもしれない。

「食べたことがない?」

それなら、まだましなほうだ。
それ以前の問題だった。

(No.502-2へ続く)

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ホタル通信 No.190

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.294 白い時
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

多分、話のきっかけになったのは、“白”だとは思いますが本当にそうだか覚えていません。

さて、小説の内容に触れて行きますね。
実話度が示す通り、ほぼ創作であり、それゆえに、商業的な出来栄えになっています。悪く言えばクセがありません。
後半の終盤に「さっき、ちょっと答えが出てた・・・うん、そのまさか」のくだりがあります。
この答えとは前半の中盤あたりの“純白を基調とする、汚れなき高潔な色だと思う。それからイメージされるのは、もちろん花嫁だ”になります。

一旦、話は変わりますが、冬のホタルでは「 」で交わされる会話もあれば、それ以外・・・つまり一人称小説における主人公(当ブログでいう牽引役)の語りの部分もひとつの会話として成立させていることが多くあります。例をあげると・・・。

「ねぇ、どう私の手料理の味は?」
返事に困る。
でも、正直に言ったほうが彼女のためだ。
「そうなんだ・・・ごめんね、煮込み時間が短かったのかな?」

彼女に対して、「ちょっとかたいかも」「煮えていないかも」のような言葉を省略しています。
超短編を売りにしているので、文章が長くなることを防いだり逆に言わないことで、読み手に考えてもらったり・・・そんな効果を狙っています。

最後に、ちょっと表現的には淫靡なイメージに聞こえるかもしれませんが、白って汚されるイメージもあります。
ただ、私が思う“汚される”とはストレートに泥などで汚れるイメージであり、例えば白いネコが“薄汚れた”状態です。
たくましくもあり、少しせつなかったり・・・白という色は時よりそんな表情も見せてくれます。
T190
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[No.501-2]車いすの少女

No.501-2

「お、おはよう・・・」

明らかにぎこちない、あいさつをした。
脳が考えているうちに、口が勝手に動いてしまった。
仕方なく一旦、自転車を止めた。

「・・・」

彼女がこちらをジッと見る。
ただ、不思議と驚いている様子はない。

「・・・げんき・・・元気出さなきゃね!
「えっ!?」

僕が彼女に言う前に、彼女が僕にそのセリフを言った。

「前を向かなきゃね、わたしもそうするから」

時間にして数秒もなかったように感じる。
その言葉を残して、車いすは再び動き出した。
けど、その言葉に驚きはしない。

「・・・かもしれないな」

ここ1年、仕事が上手くいってない。
だから気持ちを切り替えるために、通勤の時間帯を変えてみた。

「うつむき加減は・・・僕も・・・か」

彼女を見ていたんじゃない。
うつむき加減の目線の先に、たまたま彼女が居ただけだった。

それから2日後に、彼女とすれ違うことになった。
僕の目線の先に彼女はいない。
S501
(No.501完)
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[No.501-1]車いすの少女

No.501-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
少女と呼ぶには、失礼なのかもしれない。
だけど、どこか幼さが残っているように見える。

(今日も元気ないな・・・)

毎日ではないが、通勤途中に彼女とすれ違う。
彼女は車いすで僕は自転車だ。

彼女とすれ違うようになったのは、1年くらい前からだ。
僕が通勤の時間帯を変えたためだと思う。

当初から、気になっていた。
うつむき加減で、車いすに乗っている彼女のことが。
それもそのはずだ。
僕を含めて、多くの自転車が彼女とすれ違う。
交通量の多さに遠慮もあるだろう、それに・・・。

(そんなつもりはないんだけど)

車いすと自転車の関係で、何となく上から目線になってしまう。
特に僕の自転車はスポーツタイプだ。
加えて、前傾姿勢が威圧的に見えるのかもしれない。

(考え過ぎかな?)

そう考える自体、気持ち的に“上から目線”なんだろう。
いつにも増して反省する自分がいる。

遠くに彼女の姿が見える。
昨日に続いて今日も彼女とすれ違うことになる。

(今日は元気かな?)

余計な心配をする自分が居る。
でも、その心配が的中しそうだった。

(・・・思い切って声を掛けてみようか?)

けど、一歩間違えば“怪しい人”になってしまう。
へたすれば警察沙汰だ、でも・・・。

(No.501-2へ続く)

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[No.500-2]待つ気持ち

No.500-2

「でも、そんなに長い時間、退屈だろ?」
「そうでもないで」

携帯をいじっている姿を一度も見たことがない。
改札を真っ直ぐに見つめている・・・そんな姿が印象的だ。

「・・・なら、いいけど」

聞きたいことが聞けずに話が終わった。

「そういうことや!ほな、早よ行こ!」

そう言うと、腕をグイグイと引っ張る。

(なにを考えてたんだろう・・・)

偶然、あの時と似たシチュエーションになっている。
ただ僕は、スマホで暇をつぶそうとしている。

「純粋に僕を待ってくれていたのかな?」

もともと微妙な関係の僕たちだった。
友達でも恋人でもない。
利害が一致する者同士・・・そんな言い方が似合う。

(単なる義務感もあったかもしれないな)

彼女がどんな想いで僕を待っていたのか、もう知る由はない。
今になって、胸にこみ上げてくるものを感じた。

『気にせんでええよ!』

あの元気な声が聞こえてきた。
S500
(No.500完)
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[No.500-1]待つ気持ち

No.500-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(ちょっと、早すぎたかな?)

待ち合わせの時間になるまでには、あと30分もある。

(まっ、暇でもつぶすか・・・)

今の時代、スマホがあれば十分、暇をつぶせる。
つぶせるどころか、逆に足りなくなる場合もあるくらいだ。

「とりあえず、このあたりで」

スマホに熱中し過ぎて、相手に気付かれないと大変だ。
改札から、一目で見える位置を陣取る。
これなら、たとえ下を向いていても気付くはずだ。

(ん?なんだ・・・この変な感覚は・・・)

陣取ったのはいいけど、妙な気分になった。
体が何かを思い出したからだ。

「ごめん、待った?」
「待ったけど、待ち合わせの時間の30分前やで」

いつもこんな調子だった。
待ち合わせの時間よりも、お互い早く到着する。
それに彼女の方が僕よりも更に上を行く。

「それもそうだよな」
「だから、全然気にせんでええよ」

とは言うものの、いつも1時間前には到着しているらしい。
僕が到着するまでに、彼女は何を考えているのだろう?
ふっとそんな疑問を投げ掛けたくなった。

(No.500-2へ続く)

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ホタル通信 No.189

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.269 幻の女
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

打ち間違いによる“堀井美里”さんの出現は事実です。たまたまそうなったようですが、あるんですね、こんなことが。

彼曰く、パソコンで“保有率”と打ったつもりで変換したら、なぜかしら“堀井美里”さんになったとのことでした。
その時、相当急いでキーボードを打っていたせいだとも話してくれました。
狙っても、都合よく“堀井美里”さんにはなってくれません。
偶然の産物とは言え、まさしく、幻の女という表現が似合う出来事でした。

さて、実話度ですが、この打ち間違いと言う事実以外は全て創作です。
打ち間違いや聞き間違いなどをネタにした話は他にもあるのですが、これは特に印象に残りました。
この話を聞いた時、小説のタイトルや展開がすぐに頭に浮かび、いつにも増して短時間で書き上げることができた記憶があります。
ただ、打ち間違いで盛り上がる終盤をよそに、締まりのないラストになっています。もっと気の利いたラストに出来そうな気もしますが、なぜだか・・・これを選択したようですね。
自分でもちょっと謎です。

打ち間違いによる、ちょっとしたイザコザ以外、見所は少ない話です。心情的になにか深く考えさせる部分もなく、良い意味で気楽に読める作品です。
打ち間違いという事実をもとに、これを彼女が見たらどうなるか・・・という、“もしも”的な話に仕上げています。
T189
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[No.499-2]空き箱

No.499-2

「でも、色んな空き箱があるわね」

そう言うと、友人が箱を一箇所に集めだした。
確かに大きいものから小さいものまで様々な箱がある。

「何に使うわけ?」
「何に、って・・・」

意識していなかったわけだから目的や理由があるはずもない。
けど、何かあるはずだ。
無意識にそうしてしまう理由が・・・。

「別に小物を入れたりするわけでもないでしょ?」
「そうね・・・空き箱のままみたい」

自分のことなのに、なぜか他人行儀な口調になった。

「これだけあると、ベタなロボットくらいはできそうね」
「ほんと、これなんか胴体に丁度いいサイズ・・・」

思い出した・・・。

「無くて苦労した経験があるからなんだ!」
「な、なによ急に・・・結論!?」

小学生の時、夏休みの宿題で工作があった。
毎年、その時に限って空き箱がなかったことを覚えている。
空き箱を求めて、家中探し回ったこともある。

「空き箱が無くて、中身を出してもらったこともあった」

母に頼んで無理やり空き箱に仕立てた。

「もしかしたら、その時のトラウマなのかな?」

そう思いながら、石鹸の空き箱をひとつ手に取る。
想像力をかき立てる、何かがこみ上げてくる気がした。S499
(No.499完)
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[No.499-1]空き箱

No.499-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ちょっと気になってること言っていい?」

もしかして・・・。

「ごめん、ごめん!やっぱり匂う?」

今朝、朝食に魚を焼いた。

「匂い?ちがう、ちがう!」

そう言うと、部屋の数箇所を指差した。

「気のせいか、箱、多くない?」
「箱?」
「ほら、お菓子の箱とか石鹸の箱とか」

自分の部屋なのに、改めて辺りを見渡す。

「・・・ほんとだ」
「けど、ちょっと違うけどね」

自分の部屋だけに内情は一番よく知っている。

「空き箱なの、ほとんど」

つまり、中身は入っていない。

「捨てられない主義?」
「そうでもないんだけどなぁ・・・」

どちらかと言えば、まだ使えるものだって、捨てる派だ。

「だよね、それ以外はキチンと片付いているし」
「・・・なんでだろう?」

今まで全く意識をしたことがなかった。

(No.499-2へ続く)

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[No.498-2]つなぐ

No.498-2

電車の音だけが、車内にこだましている。
タイミングが悪く、車内には僕らの他、数名しか居ない。

どれくらいの時間が経過した頃だろうか・・・。
マネージャーが再び口を開いた。

「・・・ねぇ、今日、練習どうする?」

(今日?試合が終わったばかりだろ?)

「試合の日は、いつも練習はしないだろ?」
「なに言ってんのよ!練習不足が招いた結果でしょ!」
「・・・ふ、ふざけん・・・」

言い終わる前に気付いた。
マネージャーが泣いている。

「・・・だよな・・・もっともっと練習が必要だよな!」

その涙には色々な理由があるのだろう。

「そうよ、練習しなくちゃ!みんなも」

その言葉に、ようやく皆の顔が上を向いた。

「ありがとう・・・さすがマネージャーだよな」
「なに言ってんのよ!特にあなたとあなた!・・・」

僕とあいつを指す。

「わ、わかったから!」
「わかってんなら・・・」
「たっちゃん、私を全国大会に連れてって」

どこかで聞いたことがあるセリフに、ようやく皆に笑顔が戻った。S498
(No.498完)
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