[No.491-2]ナビの通りに
No.491-2
「それもあるけど、それ以前に“どこ”で買うのか分からなかったの」
確か・・・ビルの7階くらいに映画館があった。
普通に考えれば、7階にチケット売り場があるはずだ。
「・・・なかったの?」
「ううん、普通に7階にあったよ」
けど、それは今だから冷静に言えることだ。
初お付き合い、初デート、初映画館・・・。
初物続きの私たちに平常心を持てと言う方が酷だった。
「でね、7階じゃなくて1階で買おうとしたの」
「1階?・・・またなんで?」
1階に今で言うインフォメーションセンターがあった。
「もしかして・・・」
「・・・そう」
彼が、そこの“お姉さん”に声を掛けた。
「大人2枚って・・・」
私も知らなかっただけに、口を挟むことができなかった。
「ここじゃないって知って、ものすごく恥ずかしかったよ」
今のように簡単には下調べできない時代だった。
何も分かぬまま、ドキドキしながら、映画館に向かった。
そして、映画を何とか見終えた充実感ときたら・・・。
「半端なかったな・・・お互い」
「だろうね、なんだか私まで汗かいてきちゃった」
あらためて、当時の私たちの顔が脳裏に浮かぶ。
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