[No.476-2]気付かない
No.476-2
「その時、ようやく無くなってることに気付いたの」
その店は角地にあった。
本来なら、大いに気付けるはずだった。
でも、小さい店だっただけに、そんなに違和感は感じなかった。
「もともと、そこに何もなかったように」
すっかり、周囲に溶け込んでいた。
「確かにそうね・・・良いんだか悪いんだか」
その居酒屋には想い入れも何もない。
そもそも入ったことすらない。
「昨日、驚きの声を上げたのは」
「無くなっていたことより・・・」
「気付けなかった自分に対して・・・でしょ?」
数ヵ月も気付けない自分・・・。
それが情けなくもあった。
「気にするようなことじゃないよ」
「でも・・・」
「実はね、私もしばらくしてから気付いたの」
「それに気付くきっかけもあなたと同じ」
聞けば、同じように缶ビールを片手にしたおじさんが居たらしい。
「でも、お互い良かったじゃない」
「私もビールが飲みたい!に繋がらなくて」
もしそうなっていたら、私たちはまだ気付けなかったかもしれない。
(No.476完)
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