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2013年9月

[No.483-2]続・行く手をさえぎる者

No.483-2

「それより、なに・・・ウンチって!?」
「シィィー!声が大きいよ・・・」

今朝の出来事を話した。

「つくづく、ハトに縁がある人ね」
「言っとくけど、私から近付いているわけじゃないからね!」
「まぁ、とにかく、良かったじゃない」
「落とされずに済んで」

確かにさっきは、早とちりとは言え驚いた。
本当に肩の上に落ちていたとしたら・・・。

「その時は取ってくれる?今日みたいに」
「じょ、冗談言わないでよ!?」

けど、落とされるのは時間の問題のように思える。
実際今日も、強行突破した瞬間・・・

「ボトッ・・・って、鈍い音が聞こえてきた」
「リアルぅ!」

次の日も前日と同じ光景だった。
ただ、よく見ると、人ひとり分が通れるだけの隙間がある。
それに昨日ほど、ビッシリとは並んでいない。

「気を使ってるつもり?」

有り得ないことだが、そう見えなくもない。

(・・・そういうことに、しといてあげる)

そう考えると、何だか彼らがかわいく見えてきた。
S483
(No.483完)
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[No.483-1]続・行く手をさえぎる者

No.483-1 No.345 行く手をさえぎる者

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(今度は上か・・・)

最近、地面に群れていた奴らが電線に止まるようになった。

「さながら、嫌がらせだよね」

向うに行くには、目の前の小さな橋を超える必要がある。
もちろん、他にも橋がないわけじゃない。
ただ、他の橋使うと、かなり遠回りになってしまう。

「頼むから落とさないでよね!」

橋の上には電線が数本、走っている。
その電線に、ハトが一列に並んでいる。
それも、隙間無く、ビッシリと・・・。

「えぇぃ!強行突破よ!」

「ちょっと・・・肩・・・」

会社に着くなり、同僚が私の肩を指差す。

「ん?・・・えっ、まさか!?」

すぐにピンときた。

「うそ!やだぁ!ハトのウンチついてるの!?」
「ウンチ!?」
「・・・ただの枯葉よ!?」

同僚が手に取ってみせてくれた。
日中はともかく、朝夕は少し肌寒い。
カーディガンを羽織ってきたせいで、それに絡んだみたいだった。

(No.483-2へ続く)

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[No.482-2]次の恋

No.482-2

「・・・本当に?」
「あぁ、あえて言うなら、今の君を見たかっただけ」

卒業後、地元の友人を通じて彼女のウワサを耳にした。
年上の男性と付き合い始めたとか・・・。

「気になる?」
「・・・少しは・・・な」

年上が好きだったのは、前から知っていた。

「あなたも少しは変わったようね」

少し、馬鹿にされているような気もした。
けど、そうなのかもしれない。
女性は精神的にもどんどん先に進んで行ってしまうからだ。

「・・・付き合ってはいないよ」
「片想いなだけ」

付き合っていると言われた方が良かった。
片想い・・・明確に誰かに好意を寄せていることになる。
ある意味、実にリアルに聞こえる。

「あなたは?」
「えっ・・・」
「・・・好きな人、できた?」

正直、まだ次の恋に進めずにいる。

「い、いや・・・まだ、君・・・」
「今くらいの強引さがあるなら、捕まえられるよ・・・次の恋を」
「君もその候補に入れていい?」
「・・・好きにしたら」
S482
(No.482完)
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[No.482-1]次の恋

No.482-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
高校を卒業してから初めての夏休みだ。

「・・・じゃなくて、夏季休暇だな」

もう、学生じゃない。
とはいえ、まだ社会人にもなりきれていない。

(あいつ、来るだろうか・・・)

夏季休暇を利用して地元へ戻ってきた。
それにあわせて、卒業を目前に別れた彼女を呼び出した。
約束は・・・明日だ。

「・・・感じが変わったよな?」
「そうかな?」

見た目はそんなに変わっていない。
でも、何かが違う気がする。

「来ないかと思ったよ」
「あれだけ書いてたら、来ないわけにはいかないでしょ?」

電話するのは気が引けた。
正直に言えば、直接話す勇気がなかった。

「アドレス、変えてなかったんだ?」
「面倒でしょ、いろいろな意味で」

そのメールアドレスには僕の名前も含まれていた。

「・・・だよな」
「で、用件はなに?メールには書いてなかったけど」

あえて書かなかった僕、それに聞いてこなかった彼女。

「別に・・・目的はなにもない」

(No.482-2へ続く)

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ホタル通信 No.180

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.125 気の早いタンポポ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

これから秋をへて冬に向かおうとしている時期にあって、少し時期外れなホタル通信になります・・・と言っても小説もこんなパターンの話でしょうか?

街角に置いてある無料の情報雑誌。特集こそ組まれてはいませんでしたが、でかでかと写真が掲載されていたのは事実です
加えて言うなら小説ではそれが放置されたまま時期外れになっている設定ですが、実際はそうではありませんでした。
ちゃんと4月に4月号みたいな感じになっていました。

蒲公英の写真をヒントに、それを読めない漢字に展開させています・・・とは言うものの、いつもの通り、ラストは考えずに話を進めて行きました。ただ、後半を書き進めるうちに、自然にラストの展開を思い付いた記憶があります。
季節外れ、季節の先取り・・・など、今現在とのギャップのような言葉を並べ立てて、少し混乱をあおっています。
そんな時に、足元にタンポポが・・・なんてオチです。私が良く使う表現で言えば、商業的な小説ではありますが

心情を描くことが多い冬のホタルも時より、そこに特別な想いを乗せていない小説を発表することがあります。
この小説もそのたぐいなのですが、ほんの少しだけある想いを含ませています。それは皆さんで感じとって頂ければ。

タンポポに出会うのは、まだ随分先のことですよね。ようやく夏が終わろうとしている段階ですから・・・と、書きながら春を待ちきれない気の早い自分が居たりして
T180
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[No.481-2]電話の向こうで

No.481-2

「1ヵ月くらい前、事務所に来たでしょ?」
「・・・あっ!そうですね」

すっかり忘れていた。
確かに彼女が働く事務所に立ち寄ったことがあった。
そこで初めて彼女を見た。
ただ、彼女に用があったわけじゃない。

「・・・それだけよ」
「他に用件がなければ切りますが?」
「す、すみません・・」

なぜか謝ってしまった。

(なんで俺が謝るわけ??)

話を続けようとしたのは彼女の方だ。

「この前はご挨拶せず、すみません」

(なに言ってるんだ、俺?)

「別にいいわよ、みんなそんな感じだから」

幸い俺だけに不愛想なわけじゃない。
誰に対してもそうだ・・・たとえそれが偉い人であってもだ。

「いや、そんなつもりじゃ・・・」

初めて彼女を見た時、想像していたそれと違った。
もちろん、良い意味でだ。

「・・・で、もう切ってもいいですか?」
「あっ、長々とすみません」

また、謝ってしまった。

「プッ・・・」

今、彼女が笑ったように聞こえた。

相変わらず彼女の不愛想は変わらない。 
それは僕に対しても同じだ。
ただ、あの日以来、何かが違う気がしている。
電話の向こうは見えないけれど。
S481
(No.481完)
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[No.481-1]電話の向こうで

No.481-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(参ったな・・・)

電話を掛けなければならない相手がいる。
けど、ちょっと苦手な相手だった。

(しないわけにはいかないし・・・)

今の時代、メールで済ませることも可能だ。

(仕方ないかぁ・・・)

メールでは伝わらない複雑な案件だったからだ。
いつも通り、受話器から聞こえる呼び出し音が緊張感を高める。

「・・・はい」

(うっ!・・・相変わらず無愛想だな)

心には思っても、決して口にしてはならない。

「・・・」
「あの、ですね・・・」

言葉使いが悪いとか暴言を吐くとか、そんなことは一切ない。
とにかく、不愛想極まりない。
電話だから、余計にそれを感じる。

「・・・はい・・・ええ・・・」

一応、相づちは打ってくれる。

「・・・ということで、よろしくお願いします」

何とか用件を言い終えた。

(ふぅ~・・・)

これで、ようやく電話を切ることができる。

「それでは、失・・・」
「この前、来てたでしょ?」
「えっ!?」

思わぬ問い掛けに、言葉を失った。

(No.481-2へ続く)

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[No.480-2]望遠鏡

No.480-2

「え・・・ええっっ!?」

思わず声が出た。

「やろ!」

待ってました、と言わんばかりの奈央(なお)の反応だった。

「こんなに見えるの!?」

雑誌の付録とあなどるなかれ・・・の性能だった。
月のクレーターが小さいながら確認できる。

「うちも、ビックリしてん」
「だから、呼んだの?」

呼び出された理由がようやくわかった。

(・・・こういうことだったんだ)

それから、ふたりで代わる代わる月を見た。

「はよ、代わって!」
「もう少しいいだろ?」

望遠鏡の奪い合いが始まった。
・・・というより、じゃれあっているのに近い。

「じゃ、半分づつ」
「それは無理だろ?」
「いいから、こっち来てん!」

頬と頬がくっ付く。
もう、月どころではなくなった。
S480
(No.480完)
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[No.480-1]望遠鏡

No.480-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
夜、奈央(なお)に呼び出された。
特に用事もなかったから、それに応えることにした。

「なにかあった?」

家に着くなり、一応、尋ねた。
呼び出した理由をまだ聞いていなかったからだ。

「今夜は星が綺麗やろ?」
「・・・そ、そっかぁ?」

僕にはいつもとの違いが分からない。
そもそも意識的に夜空を見上げたことがないからだ。

「せ・や・か・ら、これ!」

僕になにかを差し出した。

「これ!って・・・望遠鏡?」

見るからにおもちゃ感満載だが、ひと目でそれと分かった。

「せやで」
「買ったの?」
「うん、雑誌の付録なんやけど」
「・・・だよな」

最近流行の付録メインの雑誌とみてとれる。

「せやけど、月も見れるんやで」
「月ぐらいなら、肉眼でも見えるだろ?」
「ほんなら、見てみぃ」

軽く使い方の指南を受けてから、望遠鏡を月に向けた。

(No.480-2へ続く)

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ホタル通信 No.179

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.104 秋に想う
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

風景を心情に置き換える、逆に心情を風景に置き換える手法を時々使っています。

この作品は後者の心情を風景に置き換えたもので、当時の心情を綴っています。残念ながら、当時の心境をハッキリとは覚えていませんが、それでも読み直してみて感ずるところはあります

さて、ストーリーは分かったような分からないような、で・・・やっぱり、分からない展開をして行きます。
恥ずかしながら自分でも意味がよく分からない部分もありますが、そこは大目に見て頂ければ幸いです
心情を風景に置き換えたのは事実ですが、きっかけは、やはりその風景を目の当たりにしたからです。
夏の記憶として、入道雲は天高く昇っているような感覚を持っていました。だから、それを受け入れるために空は高いんだと・・・。
一方、目の前に広がるうろこ雲は果てしなく広がる感じから空が低く感じていました。

小説では女性同士の会話になっていますが、当時の心境の中に出てくるのは男女です。
一言で言えば、男性が女性に「生きる」ということを伝えたい、そんな心境が当時あり、それを風景に置き換えています。
このホタル通信を読んでも、なんかハッキリしないどころか、何を作者は言いたいのかよく分からないと思います。

生きることを諦めかけた人がいた。そして、そこにかかわってしまった人もいた。そのかかわってしまった人の心境がこの作品なんです
T179
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[No.479-2]次の返事は

No.479-2

「ん?まだ、なにか書いてあるぞ・・・」

添えられてカードに続きがあった。

“夏期休暇はゆっくり過ごせましたか?”

タイミング的にはあっている。
だけど、どうなんだろう・・・。
せっかくなら、北海道に居るうちに返事が欲しかったところだ。

(とにかく、届いたことを知らせよう)

とりあえず彼女にメールした。
返信はいつもの通り、期待はしていない。
けど、そんな時に限って、すぐに返事が返ってきた。

『あっ!もう届いたんだ』
『お菓子ありがとう、でもなんで?』

定番商品の地域限定品を見つけては送ってくれる。
単純に珍しいものを見つけたから・・・だけかもしれない。
ただ、そうではないようにも思える。
ちょっと、うぬぼれた考えだが。

「・・・だよな」

ひとりで納得した。
返事が来たからではない。
逆で、来なかったことへの納得だ。
いつものごとく、肝心なところでメールが続かない。

「次の限定品に期待するか!」

秋になればきっと彼女から返事が届くだろう。
S479
(No.479完)
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[No.479-1]次の返事は

No.479-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
わざわざ北海道からお菓子を送ってくれる人がいる。
お菓子とはいってもいわゆる銘菓ではない。

“限定品が出ていたので送りますね”

お菓子に添えられていたカードにはそう書かれていた。

「確か・・・これで二回目だよな?」

以前もこんなことがあった。
今回と同じで、社内便でそれが送られてきた。

『夏季休暇には北海道に戻ってくるのですか?』

以前、同じ職場で働いていた女子社員からメールが届いた。

『そのつもりだよ』

普通、自分が投げた質問に答えてくれたら・・・。
何かしらの反応をするのが一般的だ。
でも、この後、返事が返ってくることはなかった。

「相変わらずだよな」

たかがメールとはいえ、誤解を招きやすい。

「返事はいつになるのやら」

彼女のことは理解しているつもりだ。
同性からもやや毛嫌いされている。
少し、気難しいところがあるからだ。

「まっ、気長に待つとするか・・・」

その返事はメールではなく、違うもので届いた。

(No.479-2へ続く)

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[No.478-2]背を向けるわけ

No.478-2

「だよな・・・じゃ、あした!」

彼も私も背中を見送らない。
向き合ったまま、そのうち彼は人ごみに消えていった。

「そろそろ時間だろ?」
「うん・・・」

いつもなら、なごり惜しそうに向き合ったままで別れていた。
けど、今日は違う。
少なくともどちらかは背中を向ける。

「・・・もう、行けよ」
「うん・・・じゃあ、行くね」

言葉にした途端、何とも言えない気持ちになった。
思わず、彼に背中を向けた。

「行くね」

もう一度、声を掛けて私は改札に向かった。

「元気でな!」

振り向かずとも、彼が背中を見送っているのが分かる。
振り向きたいけど、振り向けない。
今の私の顔を見せたくないからだ。

「うふふ、『これでせいせいしたわ』って顔を・・・ね」
S478
(No.478完)
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[No.478-1]背を向けるわけ

No.478-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「本当にそんな日が来ちゃったね」

改札を抜ければ、もう二度と彼と逢うことはないだろう。

「ねぇ、覚えてる?」
「もちろんだよ」

あの日の会話が今、目の前で繰り広げられようとしている。

「・・・そりゃ、後ろ向きなら歩きにくいだろ?」
「全然、色気のない答えね!」

別れのシーンの表現には、よく“背中”が出てくる。
背を向ける、背中を見送る・・・。
さっき見た映画にもそんなシーンがあった。

「せめて『泣き顔を見せたくないから』って思わない?」

泣き顔を見せたくないから背を向ける。

「それに・・・これから前を向いて歩くために背を向けるの!」
「それなら、俺の答えと同じだろ?」
「違うわよ!あなたのは・・・」

彼が言う“前”は、単なる方向だ。
私が言う“前”は、前向きな心のことを言っている。

「まぁいいわ、そうならないようにしなくちゃね!私たちは」

(No.478-2へ続く)

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ホタル通信 No.178

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.132 いつもの歯ブラシ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

実話度はそこそこ高めですが、ちょっと飾りすぎた感が否めない作品です。

歯ブラシを取り替え忘れるくだりは事実です。加えて、それをゴミ箱に投げ込んだ時のへんな気持ちも事実です。
前述した「飾りすぎた感」はたったこれだけの事実を、恋愛に結び付けたことを指しています
でも、それぞれを強引に結び付けたのではなく、自然な流れとして結び付いたものです。

特に愛着もなく、極端に言えば単なるゴミに、妙に執着と言うか、それこそへんな気持ちを抱くことがあります。
急に捨てるのが惜しくなったり、捨てられなくなってしまったり。
そんな時って物を扱っているのではなく、そこに宿る何かを感じとっているのかもしれません。

さて、後半に歯ブラシを捨てた途端にケータイの着信が鳴ったシーンがありますが、これは単なる偶然として描いています。
確かに出来過ぎ感は否めませんが、これくらいならギリセーフと言ったところでしょうか・・・
ラストシーンから考えると純那(じゅんな)は、彼とよりを戻そうと考えたように見えますし、実際、そんな期待感を持たせた終わり方にしています。

・・・ですが、少しイジワルな想像を働かせて見てください
古い歯ブラシを元の場所に戻すと、どうなりますか?その隣には新しい歯ブラシが置いてあります。
「案外、悪くない」のは、ふたつならんだ歯ブラシのことであって二股を意味しているのかもしれませんネ。
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[No.477-2]罵声

No.477-2

「転倒!・・・はないか、1位だったもんね」
「・・・まさか相手が転倒?」

確かにそれなら、さえない返事になるだろう。
相手に勝ちを譲ってもらったとも言えるからだ。

「いいや・・・二人とも転倒せずにゴールしたんだけど」

最終コーナーで相手を抜くことができた。
その時、大歓声の中で、あるセリフが聞こえてきた。

「『なにぃ!!あの男ぉぉ!!!』だって」

まるで静寂の中で聞いているかのように、はっきり聞こえた。

「女子?」
「あぁ、抜いた相手が、野球部のスターでさ・・・」

実力もさることながら・・・。

「・・・加えて、イケメンというわけね」

あのセリフは悲鳴というより、僕には罵声として聞こえた。

「あの時は、ちょっとヘコんだな」

女子全員を敵に回したような気分でもあった。

「そうね・・・私がそこにいても罵声を浴びせていたかも」
「・・・だよな」
「『前を走る男!道を開けなさい!』ってね」
S477
(No.477完)
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[No.477-1]罵声

No.477-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「確か・・・陸上部だったよね?」
「そうだよ」

高校3年間、短距離の選手として続けることができた。

「そんなに速くはなかったけどね」

他校との力の差は歴然としていた。

「でも、普通の人よりは速かったわけでしょ?」
「そりゃ・・・ね」

だから陸上部に入部した。

「そう言えば・・・」

年に一度、体育祭があった。
その時、クラブ対抗のリレーも行われていた。

「白熱しそうね!」
「陸上部だからね、絶対、負けられない」

実際、創立以来、部として負けたことがないらしい。

「でも、高三のときはヤバかったな」
「なんで?」
「その年に限って、野球部に足の速い連中が揃っちゃって」

アンカーで走る自分の番まで、陸上部は2位に甘んじていた。

「・・・ということは、もしかして逆転でゴール!?」
「なんだけど・・・」
「・・・の割にはさえない返事ね」

リレーは大いに盛り上がった。
ただ、ゴール直前の最終コーナーを曲がった後にそれは起きた。

(No.477-2へ続く)

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[No.476-2]気付かない

No.476-2

「その時、ようやく無くなってることに気付いたの」

その店は角地にあった。
本来なら、大いに気付けるはずだった。
でも、小さい店だっただけに、そんなに違和感は感じなかった。

「もともと、そこに何もなかったように」

すっかり、周囲に溶け込んでいた。

「確かにそうね・・・良いんだか悪いんだか」

その居酒屋には想い入れも何もない。
そもそも入ったことすらない。

「昨日、驚きの声を上げたのは」
「無くなっていたことより・・・」
「気付けなかった自分に対して・・・でしょ?」

数ヵ月も気付けない自分・・・。
それが情けなくもあった。

「気にするようなことじゃないよ」
「でも・・・」
「実はね、私もしばらくしてから気付いたの」
「それに気付くきっかけもあなたと同じ」

聞けば、同じように缶ビールを片手にしたおじさんが居たらしい。

「でも、お互い良かったじゃない」
「私もビールが飲みたい!に繋がらなくて」

もしそうなっていたら、私たちはまだ気付けなかったかもしれない。
S476
(No.476完)
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