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[No.470-2]また次の夏も

No.470-2

「じゃ、どうしたの?」
「とりあえず、茎に掴まらせた・・・と言うか・・・」

一応、茎には掴まってくれた。

「・・・引っ掛かっているだけだと思う」

自力で茎を掴んでいるのではない。
脚の構造上、茎にくっ付いているだけに過ぎない。

「ただね、次の日には居なくなってた」

周辺をくまなく探しては見たものの、見付けられなかった。

「飛んで行った?」
「ううん、そんな力が残っていたとは思えない」
「おそらく・・・」

前日はいつになく風が強かった。

「・・・飛ばされた?」
「・・・と、思う」

あるいは力尽きた後、鳥に狙われた可能性もある。

「まっ、仕方がないことだけど」
「ねぇ・・・今日、カラオケ行かない?」
「なによ!唐突・・・」
「・・・そうね、行こうか!」

会社を出る頃には、セミたちの大合唱はすっかり終わっていた。
その代わり、私たちの大合唱が始まった。

「ねぇ・・・供養のつもり?」
「別にそんなんじゃ・・・」

ただ、届けるつもりで元気に歌った。
S470
(No.470完)
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