[No.470-1]また次の夏も
No.470-1 No.293-1 小さな命
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
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(水をあげないと・・・)
ベランダで育てている植物たちが何だか辛そうだ。
「・・・ん?」
ベランダに一歩踏み出した瞬間に気付いた。
プランターの前にセミが居る。
正確には“居る”と言えないかもしれないが・・・。
(死んでる・・・?)
人間でいうところの“仰向け”になっている。
つまり、羽を下にしてひっくり返っている状態だ。
「以前にも聞いたことがあるような・・・」
「そ、そうかな?」
はぐらかしながらも、覚えている。
確かに話したことがある。
「当然、ベランダからポイよね?」
「どうやって、それをつまんだかは別にしても」
どうやら、ベランダから投げ捨てたと思っている。
「ポイなんかしてないわよ、生きてたんだから!でも・・・」
“生きていた”と言うより“死んでいなかった”という表現が似合う。
ひっくり返ったまま元に戻る力さえ失っていた。
「地上なら間違いなく、ありの餌食になってたと思う」
恐らく、こうやって出会うこともなかっただろう。
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