[No.465-2]黒いモヤ
No.465-2
「あっ・・・いや、なんでもない」
タイミングを外したら、もう二度と言えないセリフだった。
「今回は本気で考えてみる」
「うん、分かった・・・何でも相談して」
結局、この話はいつもの通りここまでだった。
彼女をそうさせている理由・・・検討は付いていた。
「やっぱり・・・ごめんな」
「別にいいよ、謝られることでもない」
「いつか、ひとりで暮らしたいな」
「その時は、遊びに行くよ」
しばらく、沈黙が続いた。
電話の向こうで、彼女が泣いているのが分かる。
「せやな!絶対来てや」
「もちろんだよ!」
でも、二人の望みが叶うことはなかった。
黒いモヤは何となく人の形に見えた。
それに性別で言えば、男性のように感じた。
黒いモヤに包まれる彼女。
笑顔の中に言い知れぬ寂しさと、むなしさが見える。
「こうでもせえへんと」
そんな言葉が伝わってくるようだった。
あれから、もう4年の歳月が流れた。
夢の中の自分には悪いが、今も考え方は変わっていない。
そんな生き方だろうが、どんな生き方だろうが・・・。
生きていてくれればそれでいい。
| 固定リンク | 0
「(019)小説No.451~475」カテゴリの記事
- [No.475-2]食堂の匂い(2013.08.28)
- [No.475-1]食堂の匂い(2013.08.27)
- [No.474-2]迷子のコリラックマ(2013.08.25)
- [No.474-1]迷子のコリラックマ(2013.08.23)
- [No.473-2]私でした(2013.08.20)
コメント