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[No.465-1]黒いモヤ

No.465-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
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「まだ、そんな生き方してんだ?」

感情を極力抑えた言い方をしたつもりだ。
声を荒げるでもなく、冷たすぎるわけでもなく・・・。
けど彼女は答えてくれなかった。
そうこうしている内に黒いモヤのようなものが彼女を包み込んだ。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

その黒いモヤに包まれたまま、彼女がどんどん遠ざかって行く。
でも、彼女を追いかけるわけでもなく僕はその場に立ち尽くした。

(・・・夢か・・・)

夢の余韻が残ったまま目が覚めた。
夢とは言え、ついさっきまでドラマが繰り広げられていた。
生々しさが残る目覚めだった。

「部屋を借りたらどうかな?」
「うちもそうしたいんやけど・・・」

いつも煮え切らない返事だ。

「そろそろ終わりにしようよ、そんな生き方」

人それぞれの生き方に、特別興味はない。
ただ、彼女の場合はちょっと違う。

「そうやね、できればそうしたい」
「部屋を借りて、まずは落ち着こう・・・」

かれこれ、高校を中退してからずっと今の生活だ。
知り合いや知り合いとも言えない人の家に居候している。
居候と言えば多少聞こえが良い。
けど、実際は“転がり込んだ”という表現が似合う。

「なぁ、俺が・・・部屋・・・借・・・か?」
「・・・ん?なに」

肝心な所で、携帯の電波が途切れ途切れになった。

(No.465-2へ続く)

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