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2013年7月

[No.470-1]また次の夏も

No.470-1   No.293-1 小さな命

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
(水をあげないと・・・)

ベランダで育てている植物たちが何だか辛そうだ。

「・・・ん?」

ベランダに一歩踏み出した瞬間に気付いた。
プランターの前にセミが居る。
正確には“居る”と言えないかもしれないが・・・。

(死んでる・・・?)

人間でいうところの“仰向け”になっている。
つまり、羽を下にしてひっくり返っている状態だ。

「以前にも聞いたことがあるような・・・」
「そ、そうかな?」

はぐらかしながらも、覚えている。
確かに話したことがある。

「当然、ベランダからポイよね?」
「どうやって、それをつまんだかは別にしても」

どうやら、ベランダから投げ捨てたと思っている。

「ポイなんかしてないわよ、生きてたんだから!でも・・・」

“生きていた”と言うより“死んでいなかった”という表現が似合う。
ひっくり返ったまま元に戻る力さえ失っていた。

「地上なら間違いなく、ありの餌食になってたと思う」

恐らく、こうやって出会うこともなかっただろう。

(No.470-2へ続く)

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ホタル通信 No.174

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.138 心の込めて
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

仕事がら、文章を書く機会が多いため、今までその時々に感じてきた“想い”を小説にしました。

文字では伝わらないこと、文字だからこそ伝わること。メール全盛の時代だからこそ、色々考えさせられることがあります。
聞くと聴く、思うと想うなどが話の主軸なのは間違いありませんが、それこそ“想い”は別のところにあります。

思うと想う・・・
それぞれの意味を知っている人は、意図的にそれを使い分けると思います。
ちょっと話は飛びますが、時より文章の流れからして、どの漢字を使うのが適切が迷うことがあります。
・・・で、結果的に漢字を使うことをあきらめ、ひらがなでお茶を濁してしまう。文法的にはキチンとした答えはあるのでしょうがどうにもしっくりこなくて。実はこれが隠れた話の主軸なんです。

例えば好意を寄せている人には“想っています”なんてことになりますよね?
でも、そう書きたいけどそう書けない。だからと言って“思う”とは書きたくないから、仕方なく“おもう”を選択してしまう。
これらについて小説では一切触れていませんし、ラストも全く関係がない終わり方をさせています。
二者選択のような話と見せかけて実は三者選択・・・と言った具合です

皆さんが、“あえて”ひらがなにしたと思われる文字を受け取ったならそこから素敵なストーリーが始まるかもしれませんね
T174
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[No.469-2]雨女の真実

No.469-2

「タイミング・・・がね、どうしても・・・ね」

偶然がこうも続けば、偶然では済まなくなる。

「考えすぎよ」
「あなたと同じ時間に家を出る人・・・世の中にいっぱいいるよ?」
「例えば、わたしとか」

そう言えばそうだ。
平日の朝に限ってはそういうことになる。

「・・・雨女だったの?」
「実は・・・そうなんだ・・・って、違う違う!」
「あくまでも一例よ、い・ち・れ・い」

世の中の誰かが雨女で、その人と動きが重なっている。
ただそれだけのことかもしれない。

「でも、それも違うと思うんだ」
「雨女なんていないよ!もちろん、雨男も・・・ね」

「・・・偶然で片付けるの?」
「そうね、簡単に言えばそういうことになる」

それでは結論に至らない。
偶然が何度も続いている事実をどう説明すれば良いのか?

「じゃ聞くけど、家を出た瞬間に降ってきたこと、ある?」
「・・・そうね、それはない」
「でも、いつも数分後には降り出して来てる」

さすがに家を出た瞬間はない。
早くても数分後だ。

「自転車でしょ?それだけの時間があれば十分よ」

(No.469完)
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[No.469-1]雨女の真実

No.469-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
手のひらを空に向ける。
ほほに雨が当たった気がしたからだ。

「・・・」

この無言の中には、様々な想いが詰まっている。

(それにしても・・・)

どうして、こうも雨が降るのか・・・。
家を出てから、数分もしない内に。

「だから、雨降ってきたんだね」

褒められているのか、呆れられているのか・・・。
考えなくとも前者ではないのは明らかだ。

「ごめん・・・」
「仕方ないでしょ?雨女なんだから」

会社へ向かうために家を出る時間は、同僚とほぼ同じだ。
だから、時々、こんな風になる。

「それに、こんな空模様だから傘は持ってるのよ?」
「でも、降らないなら、それにこしたことはない」

服も濡れるし、泥もはねる。
俄然、雨が降らない方が良い。

「一応言っておくけど・・・冗談だからね、今までの話は」
「雨女なんて、あるわけないでしょ?」
「そうだとは思ってるけど・・・」

でも、狙ったように雨が降ってくる。
私が家を出て数分もすれば・・・今日と同じように。

(No.469-2へ続く)

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[No.468-2]雨宿り

No.468-2

「だから・・・今の私たちみたいに」
「どうして、隣に誰か居たと思うの?」

特に“誰と”居たとか居ないとか・・・そんな話はしていない。

「居たんでしょ?男性・・・じゃなくて、男子が」
「・・・それはそうなんだけど」

どうして分かったんだろう。
いくら女の感が鋭いと言ってもほどがある。
それとも、単に当てずっぽうなんだろうか?
カマをかける意味で。

「・・・どうして分かったんだろう・・・って顔ね」

(もしかして、顔に出てた!?)

「理由は簡単よ、一種の照れ隠しの行動でしょ、それ」

昔、今日と同じようなシチュエーションがあった。
隣には、当時好意を寄せていた男子が居た。
もちろん、片思いだった。

「そうね・・・話す話題もなくて、それで誤魔化してた」
「やっぱりね」
「でも、ほんとよく分かったわね!?」
「もしかして・・・あなたも?」

友人も同じようなことをしていた可能性が高い。

「わたし?ううん・・・わたしの場合は“男子が”だったけど」

かなり遠まわしに、自慢話をされた。
S468
(No.468完)
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[No.468-1]雨宿り

No.468-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「なにしてるの?」
「あっ・・・これ?」

徐々に雨の降り方が激しさを増してきた。
どうにも傘だけでは太刀打ちできない状況だ。
仕方なく、近くのコンビニの軒先に逃げ込んだ。

「・・・見ての通りよ」

軒先から、雨が滝のように落ちてくる。
それを傘で受けていた。

「小さいころ、やらなかった?」

傘に伝わる振動と音がなんとも言えない。
この“ボタボタ感”が幼心をくすぐった。

「特に今日みたいな大雨の日は・・・」
「絶好のチャンス?」
「そういうこと!」

ふいの軒先が、それを思い出させた。

「たしかに、こうして軒先に入るなんて」
「随分、久しぶりな気がするね」

ましてや傘を持っている。
こんな大雨ではない限り、軒先に逃げ込むこともなかっただろう。

「ねぇ、そのときは誰が隣にいたわけ?」
「ん?誰って・・・」

質問の意味を、すぐには飲み込めずにいた。

(No.468-2へ続く)

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ホタル通信 No.173

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.147 凸凹コンビ
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

この話に登場している男女は、冬のホタルでも珍しい組合わせになっています

読者の皆様は単なる「男女」の認識だと思いますが、この話にはモデルになる特定の男女が居ます。
冬のホタルでは様々な男女が物語を繰り広げますが、組み合わせはそんなに多くはありません。人間関係のある一定の範囲内で話が作られており、時々によって組合せが変わっています。
今回は発表した小説の中でも、数える程度しか登場したことがない男女の組合せです。

ホタル通信の趣旨から少し離れますが、もう少し話を続けさせていただきますね。
実話や実話をヒントにしている・・・これは今も変わらないスタイルですが、あまり近過ぎる人の“実話”を使うことはあまりありません。その人に気付かれてしまうから・・・ということではなく“近過ぎるゆえ小説にしようとする気になれない”のが正直な気持ちです
実際、小説に登場していただいた自分達は、どちらかと言えば作者と何らかの距離がある人たちです。
距離・・・と言えば、あまり良いイメージには聞こえないかもしれませんが、ここで言う距離とは、物理的、心情的に離れている状態ではありません。
言うなればその人たちとの関係です。単なる知り合いから、何とも説明し難い関係の人たちをさしています。

今回の小説は前述した通り、非常に近い存在の人との実話をヒントにしています。
ただ、このような会話が行われたのではなく、あくまでも“そう感じている気持ち”を小説として具現化したものです。
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[No.467-2]気を付けて!

No.467-2

「なんだかんだで、やっぱり好きなんじゃないの?」
「ただ、心配なだけよ」

自転車だけではない。
車の下で寝ている姿を見かけることも多い。

「確かに居る居る!そんな猫」

猫は居心地の良い場所を見つける天才だ。

「これからそんな猫が増えてくると思うよ」
「そうね、車の下って、なんだか涼しそうだもんね」

実際、ここ数日で何匹も目撃している。

「・・・と言うより、意識してるんでしょ?」
「別に・・・ただ、視界に入ってくるだけよ」

本当に意識はしていない。
ましてや車の下を覗きまわっているわけでもない。

「そりゃそうよ!そんなことしてたら通報されるわよ」

でも、危ないのは確かだ。
車が動き出す前に、気付いてくれれば良いのだが・・・。

「心配しなくても、彼らはちゃんと気付くわよ」
「ううん、気付かない猫も居るよ、大きな声で叫んでも」
「・・・叫ぶ?」
「だって、大きな声を出さないと、起きてくれないでしょ?」
S467
(No.467完)
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[No.467-1]気を付けて!

No.467-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「わっ!」

一匹の猫が行く手を遮る。
遮っているとは言え、別に私を待ち構えていたわけではない。

「ちょ、ちょっと・・・いつも言ってることだけど」
「気を付けてよね!」

もちろん、目の前の猫と私の会話だ。
他に誰も居ない。
逆に居れば私が“気を付ける”対象にならざるを得ないシーンだ。
ちょっと、危ない人だと・・・。

「・・・まったく、もう・・・」

自転車と衝突しそうになったのに驚いている様子はまるでない。
それどころか、道路に寝そべり毛繕いを始める始末だ。

「ほんと、困ったやつらよ」
「・・・とか言っちゃっても何だか嬉しそうよ?」
「そ、そうかな・・・」

猫は嫌いじゃない。
だからと言って好きとは言えない。

「でも、ほんとうに危なっかしいんだから!」

これまで何度も、自転車と衝突しそうになっている。
その度に、彼らに説教をした。

「説教!?」
「もちろん、聞いちゃくれないけどね」

(No.467-2へ続く)

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[No.466-2]鼻をすする

No.466-2

(・・・ん?)

すぐそばで、鼻をすする音が断続的に聞こえてきた。
・・・というより、彼女が鼻をすすっている。

(今回は・・・かぜ・・・だよな?)

映画を見ているわけでもなく、ただこうして歩いているだけだ。

「・・・かぜとか鼻炎とか・・・かな?」

なぜだか恐る恐る聞いている自分がいる。

「・・・どうして?」
「いや、その・・・ほら、前にもあっただろ?」

数日前のソファー越しの話をした。

「確かにそんなこと、あったわね」
「それに・・・」

夏とは言え、今夜は少々冷え込んでいる。
その影響も考えた上での発言だった。

「へぇ~、気を使ってるじゃない、今夜は」
「そう、からかうなよ」
「冗談よ、それにかぜでも鼻炎でもないよ」
「・・・じゃあ、何だよ?」

これには答えず、左手をスッと僕の前に突き出した。

「さっきの余韻で・・・ちょっと、ホロッと来ただけよ」
S466_3
(No.466完)
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[No.466-1]鼻をすする

No.466-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
(・・・ん?)

ソファー越しに、鼻をすする音が断続的に聞こえてきた。
数分間、それが続いたような気がする。

「かぜでもひいたのか?」
「えっ・・・なに、わたし!?」

そう言うとソファーの背もたれからチョコンと顔を出した。
・・・と同時に、鼻をすする音が聞こえた理由が分かった。

「・・・泣いてたのか?」
「うん、だって・・・」

そう言えば、さっきからひとりで映画を見ている。
確か、僕の嫌いな純愛ものだ。

「あまりにもこの女の子が・・・」

・・・と、色々言われても見ていないのでピンとこない。
ただ、涙は誘うらしい。

「てっきり、かぜをひいてるのかと思った」
「デリカシーがないわね、もう!」
「見えなかったから、仕方ないだろ?」

実際、ソファー越しで、しかも音しか聞いていなかった。

「そんなんじゃ、女性に嫌われるわよ!」

純愛ものを見ていただけに手厳しい。

「わかったから、そう責めるなよ」

(No.466-2へ続く)

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ホタル通信 No.172

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.178 夏の始まり
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

自分でもあまり意識していなかったのですが、海が舞台の時どうやら実話度が低い傾向にあるようです。詳しく調べたわけではありませんが

海が舞台になる時は、ある事実の舞台を海に置き換える・・・という手法は取らずに、海そのものから入って行きます。
多少なりとも事実から創作して行く当ブログの中にあって、異質と言えば異質な存在と言えます。
つまり、何の事実もなしに、海を題材にして“何か話を作ろう”と言うようなノリです。ただ、何の事実もなしに・・・とは書きましたが「海を題材にして書いてみたい」と思わせる、何かは存在しています。
その“何か”は、当時置かれていた自分の心情であったりすることが多いと自己分析しています

さて、話の内容ですが、とりたてて特徴がある話ではありません・・・と言うより、あえて際立たせた特徴を持たせていません。
ラストの一行が表している通り、“たわいもない”ことを描こうと考えていたからです。
ただ、“たわいもない”ことであっても“静”ではなく“動”にしたかったため、夏を目の前にした海の冷たさをややオーバー気味に表現させています。

“静”ではなく“動”であると前述しました。
でも、全体像はあくまでも“静”なんです。確かに2人だけの世界で考えれば“動”なのですが、海全体で考えた時、私たちもまた“人影もまばら”な一員なんですよね。
従って、この話は写真で言えば手前にピントが合っており、遠くの私たちはボケている・・・そんな話なんです
T172
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[No.465-2]黒いモヤ

No.465-2

「あっ・・・いや、なんでもない」

タイミングを外したら、もう二度と言えないセリフだった。

「今回は本気で考えてみる」
「うん、分かった・・・何でも相談して」

結局、この話はいつもの通りここまでだった。
彼女をそうさせている理由・・・検討は付いていた。

「やっぱり・・・ごめんな」
「別にいいよ、謝られることでもない」
「いつか、ひとりで暮らしたいな」
「その時は、遊びに行くよ」

しばらく、沈黙が続いた。
電話の向こうで、彼女が泣いているのが分かる。

「せやな!絶対来てや」
「もちろんだよ!」

でも、二人の望みが叶うことはなかった。

黒いモヤは何となく人の形に見えた。
それに性別で言えば、男性のように感じた。

黒いモヤに包まれる彼女。
笑顔の中に言い知れぬ寂しさと、むなしさが見える。

「こうでもせえへんと」

そんな言葉が伝わってくるようだった。

あれから、もう4年の歳月が流れた。
夢の中の自分には悪いが、今も考え方は変わっていない。
そんな生き方だろうが、どんな生き方だろうが・・・。
生きていてくれればそれでいい。

だから、生きることを諦めるな。
S465
(No.465完)
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[No.465-1]黒いモヤ

No.465-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「まだ、そんな生き方してんだ?」

感情を極力抑えた言い方をしたつもりだ。
声を荒げるでもなく、冷たすぎるわけでもなく・・・。
けど彼女は答えてくれなかった。
そうこうしている内に黒いモヤのようなものが彼女を包み込んだ。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

その黒いモヤに包まれたまま、彼女がどんどん遠ざかって行く。
でも、彼女を追いかけるわけでもなく僕はその場に立ち尽くした。

(・・・夢か・・・)

夢の余韻が残ったまま目が覚めた。
夢とは言え、ついさっきまでドラマが繰り広げられていた。
生々しさが残る目覚めだった。

「部屋を借りたらどうかな?」
「うちもそうしたいんやけど・・・」

いつも煮え切らない返事だ。

「そろそろ終わりにしようよ、そんな生き方」

人それぞれの生き方に、特別興味はない。
ただ、彼女の場合はちょっと違う。

「そうやね、できればそうしたい」
「部屋を借りて、まずは落ち着こう・・・」

かれこれ、高校を中退してからずっと今の生活だ。
知り合いや知り合いとも言えない人の家に居候している。
居候と言えば多少聞こえが良い。
けど、実際は“転がり込んだ”という表現が似合う。

「なぁ、俺が・・・部屋・・・借・・・か?」
「・・・ん?なに」

肝心な所で、携帯の電波が途切れ途切れになった。

(No.465-2へ続く)

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[No.464-2]ぶたカバン

No.464-2

「私たちのカバンは、ペシャンコなんだよね」

それもそのはずだ。
少なくとも教科書は入っていないからだ。

「それにペシャンコをキ-プするために・・・」

少し大きめのクリップでカバンが広がらないように挟む。

「側面の、じゃばら部分ってこと?」
「そう、そう!」

不良とは言えなかったけど、ちょっと悪ぶっていた私。

「それに当時はペシャンコがおしゃれだとも思ってた」
「だから、ぶたカバンは絶対無理だった」
「まぁ、若い時はへんなところに拘りをもつからね」

自分なりの青春だったのかもしれない。
それに反抗心もあった。
ただ、何に対してかは・・・自分でもよく分からなかった。

「だから青春なんでしょ?」
「そうかもね」
「かばんはペシャンコだけど・・・」
「それなりに何か詰まってたみたいね」

そうかもしれない・・・入りきらないくらいに。
S464
(No.464完)
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[No.464-1]ぶたカバン

No.464-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「なにそれ・・・あだ名?」

もし、それがあだ名だったとしたら結構失礼だ。

「違うよ、私を見たらわかるじゃん」
「昔はどうだかわからないでしょ?」
「そりゃ・・・ね、ってこらぁ!」

納得しながらも、冷静に考えれば笑えない。

「あだ名じゃないなら、なにさ?」

高校生の時だった。
教科書を持ち帰らず学校に残しておく・・・。
私たちの定番の行動だった。

「重いし、面倒だったこともあるけど」

一番の理由は別のところにあった。
逆に教科書を持って帰る人も少なくはない。
そうすると、必然的にカバンが分厚くなる。

「当時、それがみっともなく感じたの」
「それに、真面目な人・・・とも思われたくもなかったし」

真面目な人と言うより、良い子ぶっていると思われたくなかった。

「その分厚いカバンを“ぶたカバン”って呼んでたの」
「それなら、一種のあだ名じゃん!」

そう言われるとそうかもしれない。
間接的にその本人をからかっていることに近い。
それにぶたカバンを持つ人をどこか冷ややかな目で見ていた。
つまり、良い子ぶっていると・・・。

(No.464-2へ続く)

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ホタル通信 No.171

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.94 やっかいな恋
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

初期の作品に時々見られたムーディな話です。ムーディとは言っても、それほど重々しい雰囲気はありません

友達関係だった彼を、異性として好きになってしまう・・・一般的にもよくある話だと思います。
ただ、事実は友達関係ではなくどちらかと言えば“知り合い”と言った関係ですが、単なる・・・と言うこもなく、非常に説明し難い関係でした。
深い関係でありながら、ある一面では非常に希薄な部分があったり。その希薄な部分が、いわゆる“好意”だったのかもしれません。これらを小説上、分かりやすくするために、一般的な話に摩り替えています。

さて、そんなチョットだけドロッとした話なのですが、それを波紋を軸に据えた話にしたのは、実際にそんな感覚を覚えたからでした
「好意は持っていた」「でも、特別な気持ちはなかった」のは、小説の通りです。それこそ最初は小さな波紋だっと思います。それが、いつしか大きくなって・・・。
もしかしたら、自分の気持ちに嘘を付いていたのかも・・・そう思うこともあります・・・好きになったらいけないと。
小説上では、女の友達のしゃれた一言を含めてハッピーエンドで終わっていますが、現実は違います。

現実はバットエンディングだし、友達は背中を押すどころか、私を引き留めたほうです。ただ、バットエンディングとは言っても告白したからではありません。
前述した“希薄な部分”から自然にふたりの関係が壊れ始めやがて終焉を迎えました
今となっては良い思い出ですし、“冬のホタル”に大きな影響を与えた経験です。
T171_2
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[No.463-2]蜜の味

No.463-2

「そうだけど?」

男子ならいざ知らず、女子の行動とは思えない。

「まぁ、昔のことはいいから、まずは吸ってみて!」
「えっ~!?そこに着地するの!?」

その女子とは思えない行動を、私に“しろ”と言う。
女子ではなく、もう女性な私に。

「無理無理!!」
「結構、美味しいのよ?」

別に潔癖症ではないけど無理な話だ。
さすがに雨ざらしの花を口にする気にはならない。
ましてや、その蜜を吸うなんて。

「絶対、むりぃ~!!」
「強情ね」

そう一言言うと、なんのためらいもなく、花を口にした。
それから、ほっぺを一瞬へこませた。

「あ~、やっぱり美味しい!」
「・・・」

友人ながら若干、引いた。

「この手の話、合コンで男性にはうけるのよ?」

友人らしい積極的なセリフだった。
でも、この場合友人は肉食系?それとも草食系?
S463
(No.463完)
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