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2013年6月

[No.463-1]蜜の味

No.463-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「ねぇ、この花、知ってる?」

友人が目の前の赤い花を指差す。

「名前は知らないけど、学校とかに咲いてた記憶がある」
「・・・うふふ、学校ねぇ~」

どうやら、ど真ん中に玉を投げ込んでしまったらしい。

「この花の蜜なんだけど」
「・・・みつって、あの?」
「そう!甘いって知ってた?」

一般的に、蜜は甘いものだと思う。

「その花はどうか知らないけど、普通甘いでしょ・・・」
「・・・と言うか、何で甘いって知ってるわけ?」

聞き返した割には、答えの予想は付いている。

「だって、吸ってたんだもん!」
「あっ、やっぱり・・・」

ところで、この会話の着地点はどこになるのだろう。

「で、それが?」
「たくさん吸うとそれなりに、満腹感があるんだよね」

男性と昔話しているなら、まだわかる。
男子なら、いかにもしそうな行動だからだ。

「別に、食べる物がなかったわけじゃないからね」
「そうじゃなくて・・・一応、当時女子だったわけじゃん」

(No.463-2へ続く)

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[No.462-2]ありがとう

No.462-2

「まぁ、気持ち的にだろ?」
「いいや、耳を近付けてみて?」
「こうか?」

“馬鹿馬鹿しい”と拒否をしない自分が案外好きだ。

(ありがとう・・・)

小さく聞き覚えのある声がする。
もちろん、声色は変えてはいるが。

「本当だ!聞こえた・・・」
「やろ!」

もちろん、声の主はせいじゅうろうではない。

「買ってもらえて喜んでるんや」

せいじゅうろうの喜びはイコール、菜緒(なお)の喜びだ。
これが菜緒流の喜び方でもある。

「来週は広島だから、また探してくる」
「広島なんや・・・そしたら・・・」

(・・・あったぁ!)

あいつが他のキャラクターと共にぶら下がっていた。
ひとつ手に取り、レジに向かう。

(ありがとう・・・)

「えっ!」

なんとなくそんな声が聞こえたような気がした。
Image
(No.462完)

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[No.462-1]ありがとう

No.462-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
それを受け取り、そそくさとカバンにしまい込む。
今月はそんなことが2回あった。

「出張した時の定番になったな」

出張先で、ご当地リラックマを物色する。
あくまでも“ついで”なため、物色先はいつも駅の売店になる。

「お陰でずいぶん、にぎやかになったやん」

大の大人が、リラックマを手に取り・・・。
冷静に考えれば、ちょっとキモイ。

「今でも緊張するけどな」

売り手は多分、何も気にしていないと思う。
趣味だろうが誰かへのプレゼントだろうが関係ない。

「うちが店員なら気になるわぁ~」
「えっ~!?そう言うなよ」

そうだと、ますます買い難くなる。

「冗談やん!逆に嬉しくなる」
「嬉しい?」
「だって、せいじゅうろうを買ってくれはる人やから」

売り上げがあがったから嬉しいのではない。
純粋に買ってくれた行為に対しての嬉しさだろう。

「それに、せいじゅうろうも喜んでるし」
「こいつもか!?」

思わず顔を覗きこんだ。

(No.462-2へ続く)

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ホタル通信 No.170

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.92 嘘?・・・本当?
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

久しぶりに出ましたね・・・実話度100%のお話です。いつものお約束で語り手は男性ですが、作者とは限りません

実話度100%の作品の中でも、かなり実話に基づいています。
唯一違うのはラストの数行程度です。
ある意味、メールの恐ろしさを知った出来事でした。恐ろしいと言っても、ホラー的なものではないのは読んで頂いた通りです。
もともとメールの返事が遅かった彼女ですが、この時は特に遅かった・・・と言うより、小説にも書いた通り、何となく避けられていたと思います。
「ごめん、ケータイ放置してて」このメールも嘘ではないと思うのですが、無理してる・・・そんな感じがしました。

一般論にすり替えるつもりはありませんが、そんな経験ありませんか?
自分が納得できるところでメールのやり取りが終わってほしいと。このメールには返信が来て終われる、あるいはメールを送って終われる・・・本来、返信が来るはずの内容に返信がなかったり、そのことに触れていなかったり・・・。
この時感じる温度差は何とも言えないものです。けど、これが自分のペースを相手に押し付けてしまう原因だと考えています。

この話に登場する景子(けいこ)は、他の小説にも度々登場した人物です
ただ、知り合いで居られた期間が短かったせいか、エピソード自体はそんなに多くはありませんが、検索フレーズランキングのいつも上位に位置している「豆電球ネックレス」(同名の小説はNo.55)は彼女が登場する話のひとつです。
T170
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[No.461-2]見覚えのある電車

No.461-2

「京橋行き?」
「よく覚えてたわね」
「そりゃね、何度も聞かされたから、彼とのことは」

大阪環状線内回り。
目指すはいつも京橋だった。

「意識せずに乗ったから、ちょっとビックリした」

その電車に導かれたような気がしてならない。
馬鹿げたことだとは思っているけど。

「でも、あるんじゃない?そんなこと」
「ほら、この間も・・・」

目的の電車に乗り遅れ、仕方なく次の電車を待っていた。
そうしたら、学生時代のクラスメートと10年ぶりにバッタリあった。

「・・・うん、確かにあの時は驚いたよね」
「もし、目的の電車に乗れてたら、そんな出逢いもなかった」

昨日、わたしが乗り遅れたのにも意味があった・・・そう思いたい。

「・・・で、乗り遅れた結果、出逢いとかあったわけ?」
「ううん、単にその電車に乗っただけみたい」

特別、イベントが発生したわけでもなく、ただ電車に揺られた。
あえて言うなら、その日は彼の25回目の誕生日だった。
もし、彼が生きていたとすれば。
S461
(No.461完)
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[No.461-1]見覚えのある電車

No.461-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
(ギリ間に合ったぁ~!)

思わず声に出そうになった。
今まさに、背中越しにドアが閉まったからだ。

(あれ?この電車・・・)

おかしな表現だが、見覚えのある電車だ。
アナウンスだけを聞いて、とりあえず電車に飛び乗った。
それが偶然にも・・・

「この電車で行ったっけなぁ」

もう、電車は動き出している。
多少の独り言も電車の音で、十分掻き消されている。

意図的にこの電車を避けていたわけではない。
別の路線もあったため、それでこと足りていた。

今回この電車に乗ったのは偶然の産物だ。
まず、本来乗る予定であった電車に乗り遅れた。
その時、直近に発車する電車のアナウンスが流れた。
何も考えず、ただその電車に飛び乗った。

(それが、この電車なんだもん)

偶然とは言いながら、神秘的な力を感じずには居られない。
・・・と言うより、そうあって欲しいと願っている。
何かの力によって、その電車に導かれたのだと。

(No.461-2へ続く)

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[No.460-2]かばんに手紙

No.460-2

でも、隠していたのではない。
気持ちの上では、“入れている”ことにしていた。

「慌てて、他のカバンも確認したよ」

個人情報のような大袈裟なものじゃない。
けど、あまり人には見られたくない代物だ。

「何もなかった?」
「あぁ・・・全てのポケットを確認したよ」

結局、メッセージカードどころか、なにも出てこなかった。

「・・・なんだよ?」
「まだ残ってる!」

そう言うと、僕のカバンを指さす。

「これか!?あるわけないだろ?」

ただ、この言葉を素直に受け入れてくれるとは思えない。

「じゃ、見てろよ」

目の前で隅々まで見せれば納得するはずだ。

「・・・ほらな・・・何もないだろ?」

さっき、大見得をきったものの、内心ドキドキものだった。

「安心したか?」
「うん、安心した・・・私が贈ったメッセージカードが入ってなくて」

・・・意味がよく分からない。
女友達のカードならいざしらず、どうして・・・。

「どういう意味だ?」
「だって、私のカードが入っていたら・・・」
「それを見せたくない相手が身近に居ることになるでしょ?」S460

(No.460完)
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[No.460-1]かばんに手紙

No.460-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
いわゆる“タンスの肥やし”を作りたくない。
だから、時々、不要なものをまとめて捨てることがある。

(・・・ん?何か入っている)

一応、捨てる前には隅々までチェックする。

「あっ、これ・・・」

思いもよらなかったものが出てきた。

「・・・手紙?」
「正確にはメッセージカードかな」

2、3行のメッセージがそこには書かれていた。

「内容はともかく、なんでカバンの中なの?」
「一言で言えば、隠してた」
「見つからないように?」
「あぁ」

こう答えると、次に聞かれる内容は予想できる。

「誰に・・・だろ?」

顔にそう書いてある。

「前の彼女に隠してた、一緒に住んでたし」
「・・・それは知ってるけど、じゃぁ・・・」
「それは違う」

別に浮気相手のメッセージカードじゃない。
ただ、あらぬ疑いを掛けられないように伏せていたのは事実だ。   

「相手はただの女友達」
「仲が良かったのは否定しないけど」

捨てるわけにもいかず、部屋に置いておくわけにもいかず・・・。

「その時、使っていたカバンに目立たないポケットがあって」

(No.460-2へ続く)

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ホタル通信 No.169

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.167 パラレルワールド
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

もはや初期の作品と言えないのですが、まさしく狙いすぎな作品です。その影響が全体的に話を分かり難くしています。

実話度から言えば、話の主軸である“らせん”について実際に会話があったわけではございません。ただ、らせんを思わせる出来事はありました
つまり、人と人との出会いをふたつのらせんの交わりに例えて表現してみました。例え話であれば、別にらせんを使わずとも他の言葉で表現できたのですが、小説の冒頭「結局、住む世界が違ったのよね」が物語るように、少し異質な存在の人との出会いがあったため、らせんに決めました
そのあたりのエキスを、ちょっとカッコ付けて振りまいたせいでしょうか、いかにも狙いすぎな作品に仕上がってしまいました。

当時はほんとうにこんな気持ちでした。
でも、こんな気持ち・・・と私が書くと私が麻由(まゆ)と言うことになってしまいますが、実はそうなんです。
つまり、私自身の出来事を第三者的な視点で振り返って描いた小説です。
当時、ほんとうに別世界からやってきたと思わせる、そんな人と出会いました。平々凡々と生きてきた私にとって、それは衝撃的な出会いになりました。
ただ、小説を読んで頂ければ分かるように、出会い・・・そして別れました。

話は戻りますが、それぞれ別のらせんを歩んできたふたり。
ある時、それが交わりあい出会う。ただ、その交わりは一瞬で再び、それぞれのらせんを歩き始める。
私たちは今、それぞれのらせんを歩いている。また出会える時を信じて
T169
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[No.459-2]空が無い

No.459-2

「そんな時間も・・・」
「・・・場所もない?」

空がないわけじゃない。
こうやって見上げれば、いつでもそこに空はある。
ただ、青空に見えてもどこか淀んでいる。
それは、夜になればよく分かる。

「ほんとは、空一面に星が輝いているんだよね」

星が見えないのが、逆説的な証拠だ。

「どこまでも澄んだ空なら、癒してくれるかもね」
「・・・都会じゃ、無理かもしれないけど」

澄み切った青空はそれだけで十分だ。
そこに何があるわけじゃないが。

「あ~ぁ、青い空に出逢いたい!」
「仕方ないわね・・・そこまで言うなら」
「連れて行ってくれるの!?」

数分後、その場所に到着した。

「・・・どこにあるの、その青い空は?」

なんの変哲もない住宅街に連れて行かれた。
これなら、さっきの場所と何も変わらない。

「ほら、アレよ、アレ・・・」

友人がある所を指差す。

「あっ・・・本当だ・・・って・・・もう!」

駐車場を知らせる表示版に、澄んだ青の“空”があった。

(No.459完)
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[No.459-1]空が無い

No.459-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
(ふぅー・・・)

「ため息なんて珍しいわね?」
「えっ・・・声出てた!?」
「ううん、そんな行動に見えたから」

それは否定できない。
声には出さなくとも、確かに肩で大きく息をした。

「悩みごと?」
「どうだろう・・・」

具体的な悩みや心配事があるわけではない。
仕事、恋愛・・・そこそこ順調だ。

「よく分かんないんだけど」

漠然としたも脱力感がある。
でも、特別気分が沈んでいるわけでもない。

「夏バテ・・・にはまだ早いか」
「そうね、確かに急に暑くはなってきたけど」

時々、こんな時がある。

「そうね、あるんじゃない?誰しもそんなとき」

いわゆるマリッジ・ブルーに似ている。
本来、幸せな時期に、あることないこと考えてしまう。
言い知れぬ不安・・・

「なにも考えず、ボケっとしたら?」
「・・・けど、あまり期待できない」

できれば、澄んだ青空の下で、ボケっとしたい。

(No.459-2へ続く)

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[No.458-2]プチ家出

No.458-2

「最寄り駅から電車に乗って・・・」

約30分、電車に揺られて行き着く先はいつも決まっていた。

「それから駅のデパートをウロウロして」

また家に戻ってくる。

「家出と言える?」
「気持ちの上では家出だったのよ」

ケンカした後、子供ながらにその悔しさを納められずに居た。
だから、可能な限り遠出することで、それを鎮めようとした。
明らかに“家出”と言う意識を持って。

「最寄り駅で、いつもお菓子買ってたっけな」

買うお菓子はいつも決まっていた。
レモン味の、見た目はジューCに良く似ていた。

「デパート、お菓子、夕飯には戻る・・・」

これらがわたしの中で、家出の定番だった。

「まぁ、これが唯一の武勇伝かな・・・インパクトは弱いけど」

結局、誰にも知られることはなかった。
今、こうして話をするまでは。

「何もなかったかのように、夕食も食べてたし・・・」
「それに、いつもタイミングよく、夕食にあり付けるんだよね」

夕食の時間が決まっていなかった我が家において・・・
偶然にも食事どきには戻れていた。
それが、気付かれなかった理由でもあった。

「偶然か・・・本当にそうなのかな?」

(No.458完)
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[No.458-1]プチ家出

No.458-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
学生時代の話になると、武勇伝合戦に至る場合がある。
やれ不良だったの・・・。

「ねぇねぇ、由紀(ゆき)は?」
「えっ!わたし?」
「・・・あるわけないか、マジメだもんね」

決して誉められているわけじゃないだろう。
悪く言えば“つまらない人”と聞こえる。

「そ、そんなことないわよ!」
「あるの?ほんとに!」
「あっ、その・・・それほどじゃないけど」

期待が大きくなり過ぎる前に、歯止めを掛けた。

「もちろん、聞いていいわけよね?」

無難に生きて来たわたしにとって唯一とも言えるエピソードだ。

「小学生までさかのぼるんだけど・・・」
「そんな頃からワルだったの!?」

なぜだか、嬉しそうな顔だった。

「別に悪いことしたって言ってないでしょ?」

小学2、3年生の頃だったと記憶している。
母親とケンカしては家出を繰り返していた。

「充分、ワルだよそれ!」
「家出って言っても・・・」

夕飯の頃には家に帰ってくる。
だから、家出していること自体誰も知らなかった。

(No.458-2へ続く)

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ホタル通信 No.168

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.90 公園の片隅で
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

勢いだけで書いている・・・そんな雰囲気がありますね。けど、その勢いに、読み物としての“質”がついて来ていません

実話度の高さについて補足させて頂きます。
小説上の“今”・・・つまり、ふたりが公園で待ち合わせていたことや繰り広げられる会話は全て創作です。
それであれば実話度ゼロになってしまいそうですが、公園は実在し、その昔、ふたりでこの公園をよく訪れていました。
週一くらいで学校帰りに、暗くなるまで色々なことをおしゃべりしたのを覚えています。
従って、“今”については実話度ゼロですが、その背景になるものはほぼ事実です。

さて、冒頭に書いた読み物としての“質”は、ちょっと問題ありのレベルで、大変分り難く、申し訳ございません。
これも補足すると、孝之と公園で待ち合わせしていた私。まずは駅を降り、公園へ続く道をひとり歩く。
「全然、変わっていない・・・」このセリフは、公園と言う場所に向けられたものであり、同時に待ち合わせていた、孝之にも向けられた言葉でもあります

後半の「ほんと、変わらないね」「今度は、どっちが変わんないんだよ」は、前半があったからこその会話です。
そんな、変わった、変わっていないを繰り返しながら、最後に本気とも冗談とも言えるセリフを孝之が言います。
昔なら重すぎて言えないことも言えるようになった・・・孝之の成長を認めながらも、それを“真摯”に受け流すことができる自分の成長をも認めたのがラストシーンです。

他人事のような書き方ですが、このふたりはよく小説の中に登場しています。尚、“せいじゅうろうシリーズ”のふたりではありません。
これからも、このふたりにはまだまだ活躍してもらわなければならない、当ブログの大切な登場人物です。
T168
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[No.457-2]才能

No.457-2

「それで、その絵がどうしたの?」
「あぁ・・・展覧会で賞を取ったんだ」

先生がその絵を何らかの展覧会に出した。
それが見事・・・

「金賞!?」
「いや・・・何だったか覚えていない」

ただ、町内会とかそんなレベルではなかった。
確か大阪の美術館に展示されたとか、されないとか・・・。

「す・・・すごいじゃない!?」

手前味噌ながら、大人になった今でもその片鱗は残っている。

「小さい頃から、そんな才能だけはあったな」

悪く言えば、夢見がちな少年だったと言える。
でも、だからこそ夢のような世界を描くことができたのかもしれない。

「表彰状もあったんだけど」

気付けば見当たらなくなっていた。

「先生が僕の絵を取り上げてくれなかったら」
「賞を取ることもなかったからね」

だから、これにも感謝している。

「すごい才能ね」
「・・・だろ?見直した?」
「ううん、あなたじゃなくて」

ただの絵を、ただの絵として扱わなかった・・・
そんな先生の才能が凄いのか。
S457
(No.457完)
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[No.457-1]才能

No.457-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
毎日ではないにせよ、勝手に家へ帰ってしまう。
他人事のようだけど、僕の幼稚園での苦い想い出だ。

「登校ならぬ、登園拒否?」
「いいや、単に家が恋しかっただけ」

特別、甘えん坊だったわけじゃない。
けど、簡単に言えば・・・ホームシックと言える。

「ホームシックって・・・」
「たかが数時間程度でしょ?」

何度も先生が家へ迎えに来てくれた。
・・・というより、連れ戻しに来た。
とにかく、幼稚園の先生には随分迷惑を掛けた。

「感謝してる?」
「そりゃもう!それに・・・」

感謝することが他にもある。

「他になにを、しでかしたのよ!?」
「そっちじゃなくて!」

ある、お絵かきの時間のことだ。
先生が僕が書いている絵をマジマジと見つめていた。

「何の絵だったの?」
「なんて説明したらいいのかな」

具体的な対象物を描写したものではない。
SF的と言うか何と言うか・・・つまり・・・。

「・・・そうだ!ダリだよ、ダリ!」

そこまでおどろおどろしくはないが雰囲気はそっくりだ。

「今でもどんな絵か覚えてはいるんだけど・・・」
「不思議と書けと言われたら書けない」

(No.457-2へ続く)

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[No.456-2]ちらし配り

No.456-2

「チラシ自体はうざいんだけど」
「入れる側に罪はなし?」
「あぁ・・・それに全員とは言えないけど、前、居合わせた人は・・・」

何の根拠もないけど、一生懸命さが伝わってきた。

「事務的じゃなく、なんかこう・・・」

うまく言えない。
けど、少し後ろめたい気持ちになるほどだった。

「後ろめたい?」
「だって、この後、ゴミ箱にポイ!するわけだろ?」

目の前でそうしなくとも、結果そうする。
大袈裟に言えば偽善者だ。
さも、大事に持って帰るように見せかけて、実は・・・。

「・・・確かに大袈裟かも」
「でもな、その時は少なくともそう感じたんだ」

それからと言うもの、何となくチラシが捨てられなくなった。
正確に言えば、捨ててることには変わりはない。
ただ、しっかりチラシを見るようになった。

「なんか悪いだろ?なにも見ずに捨てるのも」
「あなた、らしいね」

ほとんどが住宅関連で、今の僕には全くもって必要ない。
けど、時々エッチなチラシに目を奪われることもある。

「・・・聞き捨てならないわね」
「じょ、冗談だよ!エッチな・・・」
「それじゃなくて、その前の話!」
「住宅関連・・・がなにか?」

この数年後に、僕たちは住宅展示場を訪れることになる。

(No.456完)
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[No.456-1]ちらし配り

No.456-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・ったく、うざいよな」

毎日のこととわかっていながら、つい口に出てしまう。
うざい対象は、このチラシだ。
それが郵便受けの中に大量に入っている。

「めんどうなんだよな」

帰宅したら、郵便受けを見る。
僕だけではなく、大勢がきっとそう感じているだろう。

「そんなにめんどうかな?」
「見ることが・・・じゃないぞ」

めんどうなのは一緒に入っているチラシだ。
チラシしか入っていない日も結構多い。

「間違って、郵便物を捨てたこともあったし」

ゴミ箱の中のゴミを捨てる時に、たまたま視界に入った。
それでことなきを得た。

「確かに見分けがつかないものも多いよね」
「それに大量に入ってるだろ?」

チラシの間に紛れ込んでいることも多い。

「ガサッ!といっぺんに捨てられたら・・・」

それなら、そんなにめんどうに感じない。

「そうね、配ってくれる人には悪いけど」
「・・・そうだ!」
「配ってくれる人と言えば・・・」

たまに、チラシを入れているその瞬間に居合わせることがある。
それを入れる側、そして捨てる側・・・。
何とも言えない空気を感じる。

(No.456-2へ続く)

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ホタル通信 No.167

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.117 予言の書
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

実際は作文ではなく、卒園する時に先生から頂いたメッセージカードです。卒園というくらいですから、メッセージカードの舞台は幼稚園になります。

実家から届いた荷物には間違いないのですが、先日・・・のような最近ではなく、かなり前に届けられていました。それをタンスの中を整理した時に見つけたことがきっかけです。
また、直筆で「将来こうなりたい!」と書いていたのではなくて先生が「○○になりたいのね!」と書いてくれていました。
そこには他にも、自分の手形や友達の名前、その友達と一緒に写した写真が貼られていました。

ちょっとしたタイムカプセル的な懐かしさがこみ上げてきたので逃さず、それを小説にしてみました。
いつもの通り、オチは考えず話を進めてみました。今でもキーボードを打つ手が軽やかだったことを覚えています。内容がシンプルなせいもあるからだと思います。
結果的には、世の中に存在しそうな話に仕上がっていますが一応、オリジナル作品です

作文に書いてあったことが現実にも起きている。単なる偶然でもあり、潜在意識がそうさせたかもしれない・・・これは小説にも書いた通りです。あまり、SFっぽい展開を期待させないために、生意気にも読者に釘をさしています。
書いてあることが現実になっている反面、書いてないことへの不安が起承転結で言う“転”の部分で、“結”はなんとか幸せになれたみたいですね。

最後に「○○になりたいのね!」の○○には、えかきさん(絵描きさん)が入ります。つまり、画家です
手前味噌ながら、確かに絵が好きで、そこそこの賞を取ったこともありました。
時は流れ残念ながら、えかきさんにはなっていませんが、絵筆を違う筆に持ち替え、こうして小説を描いているのも全く無関係とは思えません。

 

No
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[No.455-2]ネオンカラー

No.455-2

「僕もまだ若かったから」

決して流行を追ったつもりはなかったが、結果的にそうなった。
それに、それが似合う年齢でもあった。

「へぇ~そうなんだ」
「今でも覚えてる、その服」

服の種類はどう言えばわからない。
上はタンクトップ風で、下は何らかの生地のズボンだ。
色は・・・。

「上下共に、ペパーミントグリーンだった」
「わぁ!それは目立つね」

その服を着て、彼女と海へ出掛けた。

「・・・微妙?」
「今、思い返すと微妙・・・かな」

周りもそんな感じだったから、僕だけ突出していたわけではない。
ただ、彼女はどう思っていたのだろう・・・。
当時は考えたこともなかった。

「やっぱり、微妙だったのかな?」
「どうだろう・・・」
「良く言えば、彼女もネオンカラーだったかもしれないよ」
「・・・彼女はそんな色じゃなかったけど?」

彼女の服の色もなんとなく記憶がある。
少なくてもネオンカラーではないことは確かだ。

「バカね!服の色じゃなくて」
No

(No.455完)
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