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2013年5月

[No.455-1]ネオンカラー

No.455-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
今年はネオンカラーが流行だと知った。

「・・・知ってた?」
「もちろんよ」

僕は“もちろん”ではない。
ただ、その言葉通りであればイメージはできる。

「カラフルな色?」
「そうね・・・明るく、パッ!と目立つ色と言った感じね」

聞けば、単なる原色ではないらしい。
淡さを基調にしながらも、目を引く色。

「だから、ネオンカラーだと言われてると思う」

さながら夜の街を彩るネオンサインと言ったところだろうか?

「でも・・・そんな流行に敏感だったっけ?」
「たまたま、朝の情報番組でチラッと見かけただけだよ」

朝に放送している情報番組で紹介されていた。

「ふ~ん・・・なにかあるでしょ?」
「なんだよ、その疑いの眼差しは・・・」

けど、鋭い。
普段話題にしないようなことを口にしたせいもあるだろう。

「高校の時な・・・」

昔、似たようなカラーが流行ったことがあった。
当時もネオンカラーと表現していたかは定かではない。

(No.455-2へ続く)

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[No.454-2]写真の中の私

No.454-2

「元カレも居た?」
「ううん、私、全部捨てちゃうタイプだから」

もしかしたら、一番大切な想い出なのかもしれない。
けど、自分の中では懐かしむ対象だとは思っていない。
その理由は・・・。

「満面の笑みが逆に・・・こう、なんか・・・」

写真の中の私・・・とても幸せそうだ。

「まぁ、そもそも写真を取る時なんて、そんな時だもんね」

特に恋人同士なら、なおさらだろう。

「それを後で冷静に見るのが辛いこともあるし」
「だから、処分するの?」
「・・・かもしれないね」
「なるほど・・・キチンと整理してるわね」

冗談にもマジメなようにも聞こえるセリフだった。

「逆にね、今でも温かい気持ちになれる写真もあるんだ」
「へぇ~・・・・どんな?」

実家で飼っていた、ネコの写真。
数は多くないが、傍らに私が写っている写真が何枚かあった。

「一人暮らしを始めてから、1年くらい経過した頃かな・・・」

静に息を引き取った。
誰よりも私になついていたのは、離れてからも変わらなかった。
むしろ、余計に愛情が深まったようにさえ感じた。

「写真の中の私、とても幸せそうなんだよね」

何年経っても見るのが辛くなることはない一枚だった。

(No.454完)
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[No.454-1]写真の中の私

No.454-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------

こうなることは分っていた。

(懐かしいな・・・)

写真を一枚手に取るごとに、作業の手が止まる。

連休を利用してアルバムの整理をしようと考えた。
もう何年も整理していない写真が引出しの奥に眠っている。

「時代を感じさせるな~」

つい、恥ずかしさのあまり声に出でしまった。
髪型しかり、化粧しかりだ。

「アルバム整理って思ったほど、進まないんだよね」

結果的に連休中に整理はできた。
でも、かなりの時間を費やした・・・もちろん“整理に”ではない。

「懐かしむことに時間を取られちゃって」

頭の中ではなく写真の中にだけ存在する想い出もある。

「そうそう!それに案外、面倒だったりするよね」

確かに面倒だ。
ただ、友人の面倒と私の面倒はニュアンスが違う。

「あなたは“めんどくさい”で私は・・・」

几帳面すぎて、キチンと整理しないと気持ち悪い。
だから、整理しだすと止まらなくなる。
でも、そのお陰で、色々と想い出すことができた。

「忘れかけていたことも随分あったしね」

(No.454-2へ続く)

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ホタル通信 No.166

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.190 恋は経験
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この小説は文中にもある“辛い恋を経験したら、次はきっと・・・”
が主軸になり、これに肉付けされた構成になっています。

恋愛と経験。この2つのキーワードで構成されている話は他にもあります。世間一般に言われているから・・・と言うより、実体験が色濃く影響しています。

さて、今回の話は比較的に軽めのノリで進んで行きます。
恋愛、それも恋愛の経験が役に立つ、立たないの会話が交わされラストに繋がります。
テーマとしては目新しいものではないため、会話自体はわりと自然に書き上げることができましたが、ラストはどのような締め括りにすれば良いか、キーボードを打つ手が止まったことを微かに記憶しています

何度もご紹介させていただいた通り、ラストは考えずに話を創って行きますので、気の利いた締め括りにならない場合があります。そのため、話を作り替えることも少なくはありませんが、基本的には、何とかオチを絞り出している状態です。
この話は後者の方で、今までの話の流れから、オチを考えています。

成功も失敗も、経験と言えば経験です
ただ、私たちはいつも失敗の経験談であり、それだけでは次に生かされない・・・そんなオチになっています。
話そのものは創作なのですが、当時“恋愛と経験”を強く感じるできごとがあり、それがきっかけとなっています。
No
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[No.453-2]えっへん!

No.453-2

「ほんとだ!かわいいね」

きゅうりとは違って、葉も茎も細かった。
何とも居えないその弱々しさが、逆に育てる意欲を駆り立てる。

「無事に全部、顔を出してホッとした」

プランターは全部で4つある。
ひとつのプランターに付き、2つの種を蒔いた。

「トマト、食べ放題だね!」
「そうなるといいけど・・・」

トマトを育てること自体は初めてじゃない。
昨年、プチトマトの苗を買い、育てたことがある。

「去年は散々だったからな・・・」

今年は無謀にも別の品種で種からチャレンジした。

「じゃぁ・・・私のも見てもらおうかな」
「今はまだ、チューリップとか育ててるんだ」

メールと共に色とりどりなチューリップの写メが付いていた。
他にも様々な植物が写っている。

「わぁ~すごいな!さすが家庭菜園の先輩ぃ!」

彼女の影響で、僕は家庭菜園を始めたからだ。
メールを送った直後にすぐ、顔文字だけの返信があった。

        <( ̄^ ̄)>

(No.453完)
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[No.453-1]えっへん!

No.453-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
まだ、寒さが残る3月下旬頃だった。

(ちょっと早いかな~)

そう思いながらも、プランターに種を蒔いた。
本来なら苗から行きたい所だったが・・・。
とにかく、こうして今年の家庭菜園は幕を開けた。

「始めたよ!」

短いメールとともに写メを送った。

「始めたんだね!」

これも短い返信が返ってきた。
それもそのはずだ。
写メを見ても、話が盛り上がるものは何も写っていない。
そこには土が入っただけのプランターが写っていたからだ。

「今年はトマトから始めたよ」

芽が出るのは、相当先になるだろう。
少なくとも2週間は、ただの土を見ることになる。

「何か変化があったら教えてね」
「そうする!」

この時は、とにかく居ても立っても居られずメールした。

「ようやく双葉が生えてきたよ」

予測通り、2週間を過ぎた頃に、ようやく土から顔を出した。

(No.453-2へ続く)

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[No.452-2]カウントダウン

No.452-2

「彼と付き合い始めた時にね・・・」

誕生日が数日前だったことを知った。
だからと言って、あらためてお祝いすることはなかった。
なにも、したくなかったわけじゃない。

「まだ、付き合い始めたばかりだから・・・なんかね」

照れくささもあった。

「・・・かもしれないね、お互いの好みもまだ分からないし」

プレゼントするにしても、どこかで食事するにしても・・・だ。

「それより・・・来年、ちゃんとお祝いしよう!ってなったんだ」
「それって、もしかして・・・」

勘のいい友人がすでに気付いている。

「そうね、その来年は来なかった」
「それも後数日を残して」

つまり、誕生日を目前に私たちは別れることになった。
結果的に・・・色々、ムダに終わった。

「もう少しだったのにね」
「ううん・・・もう少しだったからこそ別れたんだと思う」
「そっか、深いね・・・その言葉」

結局一度も彼の誕生日を祝ってあげられなかった。
それは偶然から始まり、必然で終わった。

「今年は無事、迎えられそう?」
「そうね・・・どっちも」
S452
(No.452完)
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[No.452-1]カウントダウン

No.452-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「ねぇ、聞いてもいい?」
「ん?何を?」

友人が思わぬ質問を投げかけてきた。
細かいと言えば細かい。
よく見ていると言えば見ている。

「あぁ・・・アレね・・・」
「前から気になってたんだけど、そろそろでしょ?」

秘密にしたいなら、隠せば済むことだ。
あえてオープンにしている以上、そんな質問も出るだろう。

「そうね、もうすぐだね」
「そもそも何の日のなの?」

自分のブログに設置している、とあるブログパーツ。
記念日に流れ星が現れる機能が付いている。
もちろん、記念日は自分で設定する。

「・・・まぁ・・・その・・・」
「・・・何となく分かったわよ」
「とりあえず、誕生日?」
「うん・・・」

記念日には、元カレの誕生日を設定している。
今日から数えると11日後の5月17日だ。
しばらく前からそれに向けてカウントダウンが始まっていた。

「珍しいわね、引きずるなんて」
「1年も付き合ってなかったでしょ?」

確かに友人の言う通りだ。
後数日で1年が経過しようとしていたその矢先だった。

「でも、何でいまさら誕生日なの?」

(No.452-2へ続く)

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ホタル通信 No.165

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.83 さがしもの
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

小説全般を通して、卒業文集の記事が主軸となっていますがきっかけはそれではありません。

当時はこのような“謎解き風”の小説を作ることがそこそこありました。でも、最初からそれを目的に作るのではなく、結果的にそうなることがほとんどです

さて、本来全く関係がない卒業文集が主軸にそえられているのには、ちょっとした理由があります。
この小説を書いた頃、会社で定年を迎えられる方々へ、いわゆる“寄せ書き”を書く機会が非常に多くあったため、気の利いたメッセージを考えていることが多くありました。
そんなことが続くうちに、ふと高校時代を思い出し、昔書いた卒業文集のことを思い出しました。

だからと言って小説のようなことを書いたわけではありませんが、卒業文集・・・というキーワードが妙に頭に残りました。
・・・でこれに加えて、丁度その時、ある探し物が思わぬところから出て来ました。
卒業文集と探し物からどうしてこんな話になったのかは、自分でも分りませんが、青春の探し物は、恋や友情だとでも考えて居たんでしょうか?

後半の中盤を過ぎたあたりに「わぁ!こんな所にあったの」の部分からシーンが変わっています。
当時は今のようにマークを入れていませんから、わかり難くなっています。
つまり、時々卒業文集を読み返しては答えがわからず、気付けば5年が経過していた。それから時々読み返してみても、結局いつもの通り、答えはわからずじまい。
そんなある日、見つからなかったピアスを見つけた・・・時間的な流れはこんな感じです

謎解き風とか言いながらも、謎解き自体はちょっと強引な出来栄えで何とも恥ずかしい限りです。大部分が創作ですから、麻衣と私は実在しません。
最後に、麻衣と私は仲直りできたのでしょうか?その答えはふたりにしかわかりません。
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[No.451-2]スカイツリー

No.451-2

「明日、帰るわ」

仕事は無事に終了したらしい。
行きとは反対に仕事モードはすでにOFFしているようだ。
関西弁がそう物語っている。

「お疲れさま!」
「疲れたわ~ほんまに今回は」
「そんなにハードだったの仕事!?」

今回はイベントのモデル・・・のような仕事だと聞かされていた。

「ちゃうねん!仕事より、観光が!」
「えー!」
「今、スカイツリーから帰ってきたばかりやねん」
「そっち!?」

(そう言えば、スカイツリーに行くって言ってたしな)

・・・と言うことは、きっと彼らと一緒に行ったに違いない。
もちろん、彼らとはせいじゅうろうたちのことだ。

「ところでせいじゅうろうたちは?」
「みんな寝てはるよ」

ベットに横たわるせいじゅうろうたちの写メが付いてきた。

「プッ!確かに」

寝ていると言えば寝ている・・・完全に目は見開いているが。
けど、そこは突っ込んではいけない。

「せいじゅうたちも疲れたんやろ」
「スカイツリーに登っとったし」

(登った・・・?展望台に上がったということだよな?)

「その時の写メ送るわ」
Image

(No.451完)
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[No.451-1]スカイツリー

No.451-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「行って来ます!」

菜緒(なお)からメールが届いた。

「気をつけてな」
「うん、お土産買ってくるね」

少しだけ調子が狂う。
いつもならメールであっても関西弁だ。
仕事モードはもうすでに列車の中から始まっている。

「ところで、せいじゅうろうたちは?」
「連れて来たよ」

返信と共に、以前プレゼントした彼らの写メも送られて来た。
ただ、カメラではなく窓の外を見ている写メだった。

「あはは!・・・らしいな」

後ろ姿だけで笑いを誘える奴らは他にはいない。

「仕事、頑張れよ!」
「うん、ありがとう」

東京での仕事にはお互い暗黙の了解がある。
付いて行くとも言わないし、付いて来てとも言わない。

「・・・それと、せいじゅうろうたちにもよろしくな」
「せいじゅうろう以外は初めてだろ、東京?」
「そう言えばそうだね」

今の東京は何かと話題に事欠かない。
目新しい観光スポットが目白押しだ。

「スカイツリーには絶対、行ってくるから!」
「だよな!」

菜緒のことだ・・・きっと何かの笑いを届けてくれるに違いない。

(No.451-2へ続く)

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[No.450-2]ハトのフン

No.450-2

「ほら、SF映画とかであるじゃない?」
「ほんの少し先の未来が見えたりするやつ」

確かそんな映画があった・・・はずだ。

「その時は、ほんと当たる!って感じたのよね」

ハトが私の近くを飛び回ることなんて、よくあることだ。
けど、今まで一度もそんな気配を感じたことはない。

「理屈では説明できないけど、あるんじゃない?そんなこと」
「やけにあっさり、同調するじゃない?」

この手の話にはあまり興味を示さない同僚だ。

「珍しいわね・・・同じような経験があるとか?」
「そうね・・・なくもない」

この流れは、聞けと言うことだろうか?

「でも、ハトのアレの話じゃないわよ」

ランチ中ということもあって、さっきから言葉を選んでいる。

「じゃぁ、どんな?」
「そのうち、わかるわよ」

それから1週間後、その答えを知ることになった。
目の前で、お酒に酔った同僚が延々と失恋話を続けている。

「見えたのは失恋?それともこのお酒の席?」

(No.450完)
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[No.450-1]ハトのフン

No.450-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
SFっぽく言えば、数秒先の未来が見えた。

「もぉ・・・朝から最低よ!」
「なにそんなに怒ってるのよ!?」

会社へ向かうために交差点で信号待ちをしている時だった。
数羽のハトが私の方へ飛んで来るのが見えた。

「その展開って・・・」
「そう!考えてる通り」

その時、嫌な予感がした。
普段、あまりそんなことを感じないタチだ。
けど、その時は強く感じた。
感じた・・・と言うより、そうなる先が見えた気がした。

「でもね・・・見えたわりには避けきれなくて」

巨大な塊が当たったわけじゃないのに、それなりの衝撃があった。

「ドーン!って感じで」
「もちろん・・・アレだよね?」

私の左肩にソレは当たった。
完全に避けきれなかったけど、それでも少しはかわしたつもりだ。

「何もしなかったら、それこそ頭に・・・」
「それは無理!」

でも、あの時の感覚は何だったんだろう・・・。

(No.450-2へ続く)

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ホタル通信 No.164

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.78 上を向いて
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:男性

実話度はゼロですが、明確なテーマはあります。読んでいただければわかる通り、ひまわりとそしてもうひとつ・・・

ひまわりは冬のホタルに時々登場します。ただ、花そのものとしてではなく、擬人化したり、元気の象徴として登場させています。
この作品はそのどちらも含ませていますが、なぜ、このような話になったのかは記憶が定かではありません。
それでも、初期の作品に良く見られた応援歌的な雰囲気が全体に漂っています。

それでは内容に触れて行きます。
まず、前半の終盤「食べ過ぎたよ~」以前とそれ以降との間には時間が経過しています。つまり、冒頭のちょっとしたケンカを鎮めるために甘いものをおごらされ、その結果「食べ過ぎた」に繋がります。
この辺りの展開は特に伏線でもなく、何かを狙ったものではありません。いわゆる冬のホタル流の展開で、登場人物が自分たちの想いで話を進めています

後半は一転して、何かを狙った作りにしています。
単にひまわりを擬人化するつもりで中盤のひまわりの挙動を描いたのですが、これが偶然にも前半に繋がることになりました。
~ひまわりは、僕から目をそらし、そっぽを向いた。
 そして、風が止むと、僕と目が合った~
このくだりを書いた時、それこそ小説と同じように、似たようなことがあったのに気付きました。つまり、それが前半の展開だったのです。
従って、前半は後半の伏線の意味で作ったのではなく、偶然そうなっただけに過ぎません。たまに、そんな都合良く話が出来上がることがあります。

最後に、最初に書いた明確なもうひとつのテーマについて触れておきますね。それは「生きる」ということです。
直接的な表現はおろか、重々しいくだりも無いに等しいのですが、話の節々に出てくる様々な「風」に複雑な想いを託しています。
「ひまわり=京香」であり、京香がさまざまな風に吹かれている様子を描いたものです
ある意味、実話度100%と言えるのですが、作者的にはその裏返しのような作品と捉えていますので、実話度はゼロにしています。
T164
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[No.449-2]制服

No.449-2

「そうかな?別に悪くないと思うけど・・・」
「デザイン的なことじゃなくて」
「ほら・・・髪型のこともあるし、全体的なイメージが・・・ね」

色々なことが重なり、学校自体そんなに印象が良くなかった。

「だから、あの制服を着ているだけで・・・」

なにとか男子から、からかわれたりした。
制服は当時の私たちを憂鬱にさせる象徴でもあった。

「でもね、私はそれでも良かったんだ」
「私は?」
「当時ね、付き合っていた彼が居たの」

クラブ活動を通じて、他校のとある男子と知り合った。
もちろん、私がどこの学校に通っていたか知っていた。

「週1くらいで一緒に帰っていたんだけど・・・」

からかわれる対象が私に加えて彼にも及んだ。

「聞こえはしないけど・・・」
「コソコソこちらを見ながら何かしゃべってるんだよね」

彼も気付いていたけど、特に何も言わなかった。
見てみぬふり・・・ではなく、私を気遣ってのことだった。

「ただ、それが私には辛くて」

私と付き合っているだけで、陰口を叩かれる。
それがだんだんと重荷に感じるようになった。

「・・・で、それで別れたんだ?」
「ううん・・・卒業までちゃんとお付き合いしたわよ」
「!?」

おかしな話に聞こえるけど、別れる理由は他にあった。

「“少なくても制服が原因で別れたくなかった”って」
「・・・だから、卒業まで?」

それが彼なりのやさしさだったのか、今となっては分らない。
ただ、目の前を歩く彼女の隣の男子が彼と重なって見えた。S449
(No.449完)
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[No.449-1]制服

No.449-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
友人と少しだけ遠出することになった。
目指している先は美術館だ。

(この制服・・・)

駅に着くやいなや、ひとりの学生に視線が移った。
思い入れのある制服を着ていたからだ。

「どうしたの?」
「・・・私が通った女子高の制服なんだ」

私たちの前を歩く学生に、目立たないように指をさした。

「そうなんだ・・・懐かしい?」

返事に困る。
決して懐かしくないわけじゃない。
でも、どちらかと言えば苦い想い出ばかり記憶に残っている。

「もしかして・・・いじめ・・・とか?」
「ううん、そうじゃなくて」

私の通った学校は、いわゆる“すべり止め”の学校だった。
もちろん、もともとそのつもりで入学した人も居る。

「私はね、前者のほうだったの」

ある意味、レベルが高い学校でもあった。
ただ・・・。

「校則が厳しかったんだよね」
「・・・どんな?」
「例えば・・・髪型」

今で言うボブカットだ。

「・・・なら、別に変じゃないでしょ?」
「今・・・ならね」

当時は、単なる“おかっぱ”としてしか見られていない。
世間ではアイドルを真似た髪型が人気だったことも影響した。

「それにね」

加えて、目の前の制服だ。
すこぶる男子のうけが良くなかった。

(No.449-2へ続く)

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