[No.443-2]疾風のごとく
No.443-2
「・・・でな、昨日帰りも会ったんだよ、それも、初めて」
行きは時間帯が同じだから、会う確率が高い。
けど、帰りになると別だ。
向こうは分らないが、少なくとも僕の帰りの時間はマチマチだ。
「運命的な出逢い!なんて言うんじゃないよね?」
「まさか」
(まぁ・・・確かに、そうあることではないけど)
「・・・帰りにも会ったことより・・・」
「なにかあったの?」
特別、何もない。
何もないどころか、向こうは僕のことを気付いてもいないだろう。
「いや・・・ね・・・随分、表情が穏やかだったんだよ」
「穏やか?」
「笑顔・・・とまでは行かないまでも」
そんな顔を見たのも初めてだった。
なんせいつもは、例の“形相”しか見ていない。
「こんな顔できるんだぁ~って、思った」
「その子が聞いたら、怒るわよ」
その時、思った。
やっぱり、あの形相は、急いでいるからなんだと。
同僚が言う通り、習慣を変えることは難しい・・・そう言うことだ。
相変わらず、もの凄い勢いですれ違う。
でも、あれ以来、ちょっと変わった気がする。
・・・そう、僕が彼女を見る目が。
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