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2013年4月

[No.448-2]悩んでいても腹は減る

No.448-2

あれから更に1週間が経過した。
相変わらず、解決の糸口は見えない。
それどころか、余計に酷くなっている。

「・・・やつれてるわよ」

それもそのはずだ。
食欲は更に落ちるし、眠れぬ日々も続いた。

「わかるけど、まずは食べなきゃ!」
「・・・そうなんだけど、喉を通らなくて」

それこそ、綺麗な話ではないが、ちょっと“もどし”そうになる。
心と言うか・・・気持ちがそれを受け付けていない気がする。

「もうすぐ、昼休みだし、ランチおごるからさ」
「ありがとう・・・でも、食べれないよ、多分」

その時だった。
“グゥ~キュルキュル”と言う擬音が似合う音がした。
俗に言う“腹の虫”だ。

「あっ・・・ごめん」

鳴ったのは私ではなく、同僚の方だった。

「悩んでいてもお腹は減るみたいね」

(No.448完)
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[No.448-1]悩んでいても腹は減る

No.448-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
確かに恋愛の悩みほど辛いものはない。
けど、仕事も案外・・・。

「どうしたの!?深刻な顔しちゃって・・・」
「・・・うん、実は・・・」

大きな仕事を任されて意気揚々としていた。
1ヶ月前までは。

「何か問題でも発生したの?」
「それが大有りなんだ・・・」

一言で言えば、机上の論理だったと言うことになる。
正確に言えば机ではなく、“企画書”にはなるが・・・。

「考えていた通りにことが運ばなくて」
「進まないし、だからと言って戻れないし・・・」

今の所、解決の糸口は言えない。
それが影響してか、ここ1週間ほど何も手に付かない状態だ。

「食欲も全然ないし・・・」
「あなたがそう言うくらいなら、よっぽどね」

普段なら、ここでつっこみ返す会話の流れだ。
でも、今はそんな気持ちには到底なれない。

「あ~!本当にどうしよう・・・」

どうこうしても無常に時間は流れて行く。

(No.448-2へ続く)

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ホタル通信 No.163

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.88 虹のマーチ
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

アダルトと言うより、大人・・・と、言ったほうが似合う作品です。
ほぼ創作で、実話度は限りなくゼロです。

今となってはなぜこのような作品になったのか、よく覚えていま
せんが、今までも虹がテーマになった作品があり、恐らくこれも
そのひとつだと思っています。
内容は創作ですから、そのままと言えばそのままで、そんなに
ひねりもありません。実話度が低い分、ある意味読みやすいの
かもしれません
全体的な雰囲気はまさしく、小説の冒頭に書いた通りです。

 カウンターで交わされる女性客とバーテンダーの会話。
 ドラマで見たことがあるその光景。
 ちょっと憧れもあった。

また、おしゃれな雰囲気を出してはいるのですが、実際に小説
のようなカクテルが作れるかどうかは不明です。実在している
カクテルを参考にしているわけではなく、カクテル自体も創作し
ています。
一見すると無色透明だけど、それぞれが混じり合わない状態
でグラスの中に存在している。それを揺らすと濃度などの違い
によって、それぞれがユラユラと揺れて見える・・・そんなつもり
なんですが

ラストは半ば強引と言いますか、俗に言う伏線がない状態で
の結論になっている感は否めません
もともと、ラストを考えずに話を進めて行くのが、冬のホタル流
で、だからこそ作成スピードが早いのも特徴です。1話(前半と
後半)は会社のお昼休みの1時間で作っているんですよ。
けど、常にうまくオチるわけでもなく、慌てて話を遡って作り直
すこともしばしばあります。
T163

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[No.447-2]折れない心

No.447-2

「ねぇ、順調?」
「もちろん、この通り、順・・・」
「違うわよ!あなたのことじゃなくて」

どうやら、トマトのことを聞いているらしい。
両手で双葉を作ってみせてきたからだ。

「それが・・・」
「えっ!枯れちゃったの?」
「そうじゃないんだけど」

4つ蒔いた種全てに芽が出た。
けど、それが2cmほど成長した時だった。

「ほら、一昨日、風が強かっただろ?」

一応、風が当たらない場所にプランターを置いたつもりだった。

「一本、折れてたんだ」

倒れているのではなく折れていた。

「え~!?それでダメになっ・・・」
「それがな・・・そうでもないんだ」

今でも折れたままだ。
でも、今でも成長は続いている。

「まぁ・・・他の3本よりかなり成長は遅れてるけど」

あの時、もうダメだと思い引き抜こうとした。
ただ、何かがそれを思いとどまらせた。

「毎日、心配だけど楽しみでもあるな」

頑張れよ!
在り来たりな言葉だけど、そう声を掛けずにはいられない。
そこに、今の自分を重ねながら・・・。
S447
(No.447完)
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[No.447-1]折れない心

No.447-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「ん!?これは・・・」

なんだか、芽のようなものが生えてきた。
もちろん、そのつもりで植えたものではあるが・・・。

「ようやく、芽が出たんだね!」

種を蒔く時期が早かったせいなのかもしれない。
なかなか芽が顔を出さなかった。

「昨日、ようやく、ヒョロヒョロっと・・・」

まさしくこの擬音の通りだった。
シャープペンの芯のような細さの茎に申し訳なさそうな双葉。
その弱弱しさといったら・・・。

「そりゃそうよ、生まれたてなんだもん!」
「そうか?きゅうりの時はもっとしっかりしてたけどな」

今年はトマトの種を蒔いた。
もちろん、初めての試みだ。
だから、どんな芽が出るのかは、出てからのお楽しみだった。

「とにかく線が細いから、心配だな」
「ふ~ん、やけにやさしいじゃない?」

別にトマトに限ったことじゃない。
だからといって、きゅうり・・・ということでもない。

「単に僕がお節介なだけだよ、何に対しても」

そのせいで、随分しんどい想いをしたこともあった。
ただ、今回は人じゃなくてある意味、良かった。

(No.447-2へ続く)

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[No.446-2]桜散る

No.446-2

「話は戻るけど、思ったほどじゃない・・・って?」
「それがね、思ったほど散ってなかったんだよね」

あの風の勢いからすれば、全ての桜が散ってもおかしくない。
実際、そんな木もあった。
でも、そうではない木の方が多かった。

「生命力と言えばいいのかな?」
「たくましさを感じたの」

こちらの心配をよそに、自然は自然なりに生きている。

「そうね・・・傘でさえ曲がってしまうくらいだもんね」

“桜散る”どころか、桜は散らなかった。
不吉な言葉から、一気に縁起物に変わった気がした。

「受験生にうけそうな話題ね!」
「言ってなかったけど、私も受験生なのよ?」
「先週、資格をとるために試験受けたんだ」

資格のことは話していたが、試験の時期は知らせていなかった。
結果は、もう少し先になる。

「そうだったんだ・・・で、桜はどうなりそう?」

そう言うと、歩道の花びらと頭上の花びらを交互に指差した。

「なかなか、粋なことするわね」
S446
(No.446完)
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[No.446-1]桜散る

No.446-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
桜散る・・・軽々しく口に出来ない言葉だ。
特に受験や就職を控えた学生に対しては・・・。

「昨日、風・・・凄かったよね!」

予報通り、台風並みの春の嵐が通り過ぎた。

「でも、思ったほどじゃなかったね」
「うそ!?かなり凄かったと思うけど」
「私なんて、傘が裏返って・・・」
「ごめん!風のことじゃなくって」

思ったほどではなかったのは、桜だ。
正確に言えば、桜の散り具合だ。

「桜?・・・」
「ほら、前日まで満開だったじゃない」

満開の一言に尽きる、咲きっぷりだった。

「だから、予報を聞いた時、真っ先に心配になって」

まさしく、“桜散る”にならないか不安だった。
それは見た目であり、言葉の響き・・・でもある。
桜散る・・・決して、良い意味では使われない。
特に学業の世界では。

「だから、気をつけなきゃね」

気遣いは必要だ。
誰が聞いているか分らない。

(No.446-2へ続く)

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ホタル通信 No.162

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.194 通り過ぎる人
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

この小説は実話度よりも色々な話にリンクしている点に注目して
頂ければと思います。

冬のホタルではもはや定番と言える朝のワンシーンを描いたもの
です。朝のワンシーンとは、通勤であり、通学であり・・・です。
作者は様々な人物に置き換わりますので、時にはOLであったり
学生であったり・・・

さて、本題に戻りますね。
まず、前半に登場する女子高生はこの後、「No.270 成長」で再び
登場し、さらに「No.361 続・成長」にも登場します。
基本的に続編は作らない主義で、作ったとしても続編とは思わせ
ないようにシチュエーションを変えたりすることが多いのですが、
No.270とNo.361に関しては完全に続編です。

次に後半に登場する“おしゃれメガネちゃん”は、最近発表した小
説「No.443 疾風のごとく」の主人公にあたる人です。
初登場から考えると、随分と時間が経過していますが、この人は
過去形ではなくて、現在進行形の人なんです。つまり、今でも朝
すれ違っています。

以前にもホタル通信に書いたことがありますが、冬のホタルに登
場する人物はそう多くはありません。恐らく、両手があればこと足
りるくらいの人数です
ですから、逆に単独の話が少ないと言ったほうが良いのかもしれ
ませんね。

最後に、通り過ぎる人達・・・皆さん、いつもありがとうございます。
ご迷惑だとは思いますが、勝手に小説の主人公にさせて頂いて
おります。
主人公と言ってもかなり抽象的で、どこの誰だか分かることはまず
ありませんが、念には念を入れるということで作者を正体不明とし
て推測させることを防いでいます。
でも、その逆の気持ちもあるのも事実です。ある人にだけは知って
欲しい・・・恐らくその人なら読めば自分のことだと分かってくれると
そんな期待もあります

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[No.445-2]目線

No.445-2

「写真だけに流れる独特の時間があるのかもね」
「なんで?」

そんな風に思える写真を見たことがあるからだ。

「私のブログに来てくれる人のブログがそんな写真なんだ」
「ブログ?そう言えば、短編小説書いてたんだっけ?」

私のブログへ頻繁に訪問してくれる人がいる。
自分で言うのもなんだが、何とも完成度が低いのが私のブログだ。
だから、訪問してくれるだけでも感謝している。

「色々な意味で奥行きを感じるんだ」

手前にピントが合っていて、奥がボケている。
単にテクニックだけを言っているのではない。
写真の中にだけ流れる時間をそこに感じる。

「だから、その瞬間を意図的に狙えるのかもしれない」

現実の過ぎて行く時間と写真の中で積み重ねられて行く時間。
ファインダー越しに見る風景は奥へ奥へと時間が経過している。

「何だか私も見たくなっちゃった」
「私なんか、その写真見てるだけで、小説書けそうよ」

嘘じゃない。
撮影者の感じたものが切り取られている。
言うなれば、写真が何かを語り掛けてくる。

「小説はイマイチだけど感受性は高いもんね、一応・・・」
「それ誉めてる?それともけなしてる!?」

その方の写真は実に不思議だ。
写真に引き込まれ、あたかもその中に居る気分になることもある。
時には人間であり、時には昆虫であったり・・・。
実に巧みな目線がそこにはある。
でも、その目線こそ、撮影者の感じたものなのかもしれない。

(No.445完)
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[No.445-1]目線

No.445-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・ちょっと、なにコレ!?」

最高の笑顔を作ったはずだった。
それなのに、それが写真に収められていない。

「プッ!ひどい顔」

その原因を作ったであろう張本人が、真っ先に笑った。

「ごめん、ごめん!でも私のせいじゃないわよ」

それは何とも言い難い。
間違いなくシャッターを押したのは友人だ。
ただ、ひどい顔を狙ったわけではないのは分っている。

「・・・もぉ!」

不満のはけ口が見つからず、軽く地団駄を踏んでしまった。

「お互いプロじゃないんだから、難しいわよ」

簡単に言えばシャッターチャンスを逃している。
お互いのシャッターチャンスがズレていた・・・とも言える。
だから、笑顔を作ろうとしているほんの一瞬が収められてしまった。

「でも、時々あるのよね」

確かに友人の言葉にはうなづける。
写真では意図しない思わぬ瞬間が撮れてしまうことがある。

「動画なら、そんなことないのに」

本来なら、動画こそそんな瞬間の宝庫のはずだ。
ただ、それに気付かないだけだ。
ある瞬間はあっという間に次の瞬間に掻き消されてしまう。

「そう考えると、写真って、すごいよね」

今、その瞬間だと思ってシャッターを切っても時すでに遅しだ。
意図的にその瞬間を狙うことはある意味、奇跡に等しい。

(No.445-2へ続く)

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[No.444-2]確率40%

No.444-2

「すごい理屈ね」
「だって、せっかく持って来たのに、手ぶらで帰るみたいでしょ」

自分としては、かさばる傘を、ワザワザ持ってきた感がある。

「それなら、折りたたみにすればいいじゃん」
「バカね、それなら意味がない」
「どう言うこと?」
「どう言う・・・って・・・・」

自分で発言しておきながら、上手く説明できない。

「と、とにかく、そう言うことなの!」
「まっ、いいけど、今日はどうやら降らなさそうね」

友人とそうこう話しているうちに、みるみる天候が回復している。

「・・・みたいね」

でも、やっぱり損した感がある。
大袈裟だけど、意を決して傘を持ってきたからだ。

「そうすねないでよ・・・今夜、頑張ればいいじゃん!」
「そうするぅ!!」

今夜、久しぶりに合コンに参加する。

「そうそう!手ぶらで帰らないようにね」
S444
(No.444完)
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[No.444-1]確率40%

No.444-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・どうしようかな」

天気予報によれば、今日の降水確率は40%らしい。
確率からすれば、降らないことに軍配が上がる。

「私?・・・持ってきたわよ」
「確率40%なら、降らない確率のほうが高いよね?」

私も50%以上なら、迷わず傘を持って出掛ける。
逆に、30%以下なら持たない。
40%と言う確率が、実に微妙なラインと感じている。

「だって、雨に濡れるよりはマシでしょ」
「けど、結局、降らなかったら?」
「ん?・・・別に何とも思わないけど」

確率50%なら、それこそ1/2の確率だ。
だから、どちらに転んでも案外、諦めが付く。
でも、40%ならそうはいかない。

「損した気分にならない?」
「逆に降らなくてラッキーだと思うけど・・・」
「それより、あなたは傘、持ってきたの?」
「私?持ってきたわよ」

自分とすれば降らない確率が高いにも関わらず傘を持って来た。
だから・・・。

「是が非でも、降ってもらわなければ困るんだよね」

(No.444-2へ続く)

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ホタル通信 No.161

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.169 重いな・・・
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

ホタル通信を書くにあたり、改めて小説を読み直してみると、
当時の記憶が鮮明に蘇ってきます。でも、それは単なる想い
出ではなく「決意」に他なりません

作者は彼か私(女性)のどちらかになります。つまり、おんぶ
している人かおんぶされている人のどちらかです。
そんなことは分かっていらっしゃると思いますが、これに前述
した「決意」を加えると重要な意味を持つことになります。
実話度は高めですが、おんぶしている、されている、と言った
シチュエーションは全くの創作です。では、何が実話度を高め
ているのかと言うと、前述した「決意」がまたしても大きく関係
しています

仮に作者が私(女性)だとすれば、彼が私の人生を、それこそ
過去までも背負ってくれようとした「決意」を察して書いた小説
と言うことになります。
逆に作者が彼であったとしたら、彼女の人生を背負おうとした
「決意」を書いたと言えます。どちらにせよ、その決意や過去の
重さを、おんぶと言う行為に置き換えて話を展開させています。
ただ、No.169として小説を書いた当時に、このような決意があ
ったのではありません。小説を書いた時には既に過去の出来
事になっていました。

最後に、冬のホタルでは様々な話が複雑に関連しているのも
特徴で、言わばこの小説の「答え」を書いた小説があります。
それは「No.173 イバラの道」であり、「ホタル通信 No.155」で
もあります。
「答えがそうであっても、その時は本気でそうしようと思ったん
ですよね、作者さん?」
T161

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[No.443-2]疾風のごとく

No.443-2

「・・・でな、昨日帰りも会ったんだよ、それも、初めて」

行きは時間帯が同じだから、会う確率が高い。
けど、帰りになると別だ。
向こうは分らないが、少なくとも僕の帰りの時間はマチマチだ。

「運命的な出逢い!なんて言うんじゃないよね?」
「まさか」

(まぁ・・・確かに、そうあることではないけど)

「・・・帰りにも会ったことより・・・」
「なにかあったの?」

特別、何もない。
何もないどころか、向こうは僕のことを気付いてもいないだろう。

「いや・・・ね・・・随分、表情が穏やかだったんだよ」
「穏やか?」
「笑顔・・・とまでは行かないまでも」

そんな顔を見たのも初めてだった。
なんせいつもは、例の“形相”しか見ていない。

「こんな顔できるんだぁ~って、思った」
「その子が聞いたら、怒るわよ」

その時、思った。
やっぱり、あの形相は、急いでいるからなんだと。
同僚が言う通り、習慣を変えることは難しい・・・そう言うことだ。

相変わらず、もの凄い勢いですれ違う。
でも、あれ以来、ちょっと変わった気がする。
・・・そう、僕が彼女を見る目が。

(No.443完)
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[No.443-1]疾風のごとく

No.443-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
時々、通勤途中にすれ違う女性がいる。
僕は徒歩で、向こうは自転車だ。
その女性は、いつも疾風のごとく、僕の横を通り過ぎて行く。

「・・・で、ついに衝突した!とか?」
「だったら、今日、会社に来てないだろ!」
「もし、そうだとしても、なんでそんなに嬉しそうなんだよ!?」

冗談と分っていても、つい言いたくなる。

「じゃ、告白でもされたとか?」

もし、そうなら話さない。
特に、目の前に居る同僚の女子社員には。

「・・・なわけないか!」
「まだ、何も言ってないだろ、まったく・・・」

その女性とは、いつももの凄い勢いですれ違う。
急いでいるのか、それが普通なのか・・・真相は不明だ。
ただ、かなりの形相であるのには間違いない。

「形相?」
「あぁ、必死と言うか、気合十分と言うか・・・」

確かに、笑顔は笑顔で怖いものがある。
その女性の場合、怒ってはいないが眉間にしわが寄っている。
・・・ように見える。

「それなら、やっぱり急いでるんじゃない?」
「そんなにいつもか?」
「そりゃそうよ、分っていても直らないものよ」

そう言えば・・・目の前の同僚も毎朝、息を切らしている。

(No.443-2へ続く)

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[No.442-2]満天の空に

No.442-2

「でもさぁ、宇宙の大きさに比べたら、人間なんて・・・」
「ちっぽけ?」
「・・・だろ?」

彼女の影響で、星や宇宙に関する知識が増えた。
ある時、星だけでなく、宇宙そのものの大きさを知る機会があった。
そこには、もはや人知が入り込める余地は微塵もなかった。

「それに悩みごとなんて、どうでもよくなっちゃうよ」

それは、決して悪い意味で言ったのではない。

「うちは、そうとは思わへん」

意外な返事が返ってきた。
むしろ、さっきの発言は彼女に向けたものだった。
星を見上げる時ぐらい無心になって欲しい・・・との想いを込めて。

「逆に、光栄に思える・・・宇宙の一員として」
「こんなうちでもな、こうして生きていられるんやもん!」

その言葉から色々な意味が伺える。

「なぁ、なにが見える?」

彼女の言葉に従って、空を見上げてみる。
さっきより、星がまたたいて見えるのは僕だけだろうか。

(No.442完)
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[No.442-1]満天の空に

No.442-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「なにが見えるの?」

夜空を見上げている相手に、失礼とも言えるセリフを言った。
そこに海や山が見えるわけではないからだ。

「もちろん、星に決まってるやん」
「・・・だよな!」

そうは言っても、肝心の星はあまり見えない。
街が明る過ぎるせいもあるし、空気も澄んでいないからだ。
テレビで時より見かける、満天の星空・・・。
それこそ、遠い異国の地でしか見ることができないのが現実だ。

「本当はもっと星があるんやで」
「ここじゃ、見えへんけど」

「それなら、見上げてもそんなに楽しくないだろ?」

見上げたその先には、数える程度の星が瞬いているだけだ。

「せやかて、落ちつくねん!」
「そんなもんかな・・・」

ただ、ロマンティックさを、そこに求めていないことは分かる。
星を見上げる目は、どこか物悲しいからだ。

大袈裟だけど、心のよりどころをそこに求めているようにも見える。

(No.442-2へ続く)

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ホタル通信 No.160

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.196 学習効果
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

冬のホタルとしては、かなりアダルトな部分に踏み込んだ作品
です。シチュエーション的に実話度が40%ではなく、男性が語
る話の内容が実話に近いものになっています。

その男性は実際にある女性から相談を受けていたようでした。
ただ、小説で匂わせている大人な関係には発展していません。
・・・けど、かなり後に「もしかしたら・・・」と、思わせる事態があ
ったそうです。その証拠にその出来事も小説になっています。

さて、彼が言う学習効果・・・何となく分かる気がします。
もともと男性と女性の考え方の違いとでも言えばいいのでしょ
うか?
良い意味で女性は自分自身を故意に騙すことができる。一方
男性は無意識に自分に騙される。どちらが良いとか悪いとか
ではなく、だからこそ、恋愛はスタートするのだと思っています。
勘違いする人、させる人・・・恋愛はそのバランスのもとで成立
するものでしょう。
つまり、そのバランスとは釣り合っているのではなく、どちらか
一方に傾いているという意味のバランスです。

手に入れたと思ったら、それはほんの一握りの砂・・・それこそ
一握の砂だったのでしょうか
それに、見る見る内に、手の中から零れ落ちてしまう・・・それ
をどうにも止めることはできなかったようです。

「えっ!語り手である私(女性)ですか?」
私は・・・実在するかもしれませんし、その男性が作り出した幻
かもしれませんね
そもそも、その男性が作者かもしれませんし、もしかしたら、相
談を持ちかけた女性かもしれませんね。
静かなバーに似合うように、真実を語るべきホタル通信にあって
も、たまには焦点をぼかしてみるのも良いかもしれません。160

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[No.441-2]引越しソング

No.441-2

「そうね・・・別に引越しがテーマじゃなさそうだし」

特別、別れを強調しているわけじゃない。

「それに、その歌自体に、そんなに思い入れもない」

でも、なぜだが、急に聞きたくなった。

「ただ、“想い出”とは全く無関係じゃなさそうな歌詞なんだよね」

荷物の整理とそれが重なったのかもしれない。
それに、さほど前向きではないけど、決して後ろ向きでもない。
そんな歌詞でもある。

「・・・不安から来るものかな?」
「そうね、それは大きかった」

新天地への不安・・・でも、それなりに期待もあった。
一言で言えないそんな状態が、歌詞にマッチしたのかもしれない。

「マッチというより、共鳴したんじゃない?」
「・・・かもしれないね」

何がどうした・・・という明確なものはない。
けど、その時は間違いなく、その歌が心に響いた。

「だから、今でもこの歌を聞くと、引越しを思い出しちゃって」
「あの時の気持ちが蘇ってくるの」

卒業ソングならぬ、引越しソングたる所以はここにあった。

「そろそろ、ゴールデンウィークね」
「・・・そうね」

今時期は、何かと卒業ソングの話題で盛り上がる。
ただ、辿り着く先は、人それぞれだ。

(No.441完)
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[No.441-1]引越しソング

No.441-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------

今時期は、何かと卒業ソングの話題で盛り上がる。
テレビやラジオがそれをテーマにすることが多いせいかもしれない。

「言うなれば、引越しソングね」

もとは友人と卒業ソングについて話していた。

「そうね、あえて言うなら」

今から6年前、永年住み慣れた街を後にすることになった。

「そっかぁ・・・もう6年なんだ」

ゴールデンウィーク明けに引越しが決まっていた。
そのせいで、ゴールデンウィークは荷造りで消えた。
でも、良いこともあった。
ひとつひとつ噛み締めるかのように、部屋の荷物が整理できた。

「想い出は、それらの中にもあるからね」

自分が写っていない写真、何だかよくわからないキーホルダー。
反面、思い出すのに苦労したものも多かった。

「わかる!わかる!」
「そのせいで、なかなか整理がはかどらなくて・・・」

ひとつ手に取る度に、その想い出を辿る。
辿り着けないものは、思い切って処分することにした。

「へぇ~、私なら絶対できないな」
「でもね・・・結局、持ってきちゃったぁ~!」

処分するために、一応それらをゴミ袋に入れた。
けど、いざとなると捨てられなかった。

「そんなこんななゴールデンウィークに、良く聞いた歌があったわ」

なぜ、その歌だったのか・・・未だに自分でも良く分からない。

(No.441-2へ続く)

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