[No.438-2]天使と悪魔
No.438-2
「で、その後、どうしたの?」
しばらく、声を掛けずに黙って見ていた。
時々、耳がピクピクと動いていた。
どうやら、私の気配・・・と言うより、存在は気付いているようだった。
「別にどうも・・・」
気にはなったが、どうこうするわけにも行かずその場を立ち去った。
「・・・冷たい・・・かな、わたし?」
「いいんじゃない?あからさまにケガしてるわけじゃないんだし」
人に慣れたネコが、ただ居眠りしているだけかもしれない。
「相変わらず、やさしいというかお節介というか・・・」
「だって・・・」
「彼らはそんなに柔じゃないし、これも自然の摂理よ」
その通りだとは思う。
けど、弱肉強食だから・・・という言葉には逃げたくない。
野良ネコの存在は“人間の責任”と無関係とは言えないからだ。
「・・・だけど」
「情が移ると大変なの・・・知ってるでしょ?」
「放っておくのが一番いいのよ」
もし、私たちの会話を他人が聞いたとしたら・・・。
“なんて冷たい人”・・・友人のことをそう思うのであろう。
「分ったけど・・・また、心配なネコが居たらよろしくね」
「とっくに定員オーバーなんだからね!家は」
とかなんとか言いながら、彼らのことを一番想っているのは友人だ。
もう何匹もの野良ネコを引き取ってくれた。
そして、幸せのうちに、彼らは息を引き取った。
(No.438完)
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