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2013年3月

[No.440-2]居場所

No.440-2

「じゃ、部屋の中、探してもいい?」

菜緒(なお)の表情が変わった。
“待ってました!”と言わんばかりの表情に・・・だ。

「せやったら、あっちの台所探してきて」
「台所?探すところ、たくさんあるな・・・」

それにこの部屋から台所は多少、死角になる。
どうやら、しばらくの間、俺をこの部屋から遠ざけたいらしい。

(なら、素直にそれに従うとするか・・・)

台所の陰から、こっそり覗くことも出来るが、それではつまらない。

「よ~し!こうなったら絶対に見つけるぞ!」

多分、台所では見つからない。

それから、1時間位探してみても、やはり見つからない。

「ふっ~どこにも居ないようだけど・・・」
「・・・やっぱり、ケータイにぶら下がるのが好きなんやろか?」

とってつけたようなセリフだ。
間接的に、ケータイ・・・いや、スマホを見ろと言っている。

「・・・ん?なんだこれ?」

さっきまでとは、スマホを持った手触りが違う。
よく見ると、透明のカバーが取り付けれている。
それを裏返したら・・・。
S440
(No.440完)
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[No.440-1]居場所

No.440-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「せいじゅうろう、知らん?」

スマホに変えてから、せいじゅうろうをぶら下げられなくなった。
仕方なく、今は菜緒(なお)に預けてある。

「えっ!失くした・・・じゃなくて、また消えたの!?」

せいじゅうろうを、“もの”として扱うと怒られる。
ただ、あからさまに人間扱いする必要もない。

「そやねん!またおらんようになったんや」
「前は、カバンのポケットに居ただろ?」

前もこんなことがあった。
その時は、カバンの中の小さなポケットに居た。
俺がそこに入れて、そのまま忘れてしまったのが真実だが・・・。

「今回は俺じゃないぞ」
「しばらく前から預けてるからな」

スマホに変えてから普段は菜緒に預けている。
本来なら、預ける必要なんてまるでない。
単なるストラップなんだから・・・。

「そやかてなぁ、どこに行ってしもうたんやろ・・・」

言葉の割には、そんなに困っているようには感じない。
・・・いつもの通り、きっと何かある。

(さて・・・問題はどこに隠しているか、だな)

あるいは、どのように発見されるのか・・・と言っても同じだ。

(No.440-2へ続く)

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ホタル通信 No.159

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.150 謎のオーケストラ
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

まずはいつもの通り、実話度100%のお断りですが、語り手は牽引役である男性ですが、作者であるかどうかは秘密です。

その昔、ブログパーツとして掲示板をそのサービスが終了するまで設置していたことがありました。その掲示板へのひとつの書き込みから全てが始まりました。
小説中に書いてあるブログ・・・小説を読めばすぐに分かりますし、そのブログを書いていらっしゃる方もこの小説のことはご存知なのですが、あえてどのブログであるかは控えさせてくださいね

実話度が100%なのは、私がそのブログを初めて見させて頂いた時の衝撃、そのものを描いたものだからです。
世の中には、それこそ星の数ほど、ブログが存在しています。
もちろん、全てのブログを見たわけじゃないですが、それでも触手が伸びるブログはそう多くはありません。

掲示板からそのブログを辿った時、ちょうど自分と重なる記事が記載されていました。それもあったのでしょうか?そこから今に至るまで仲良くさせてもらっています。
一見、ハチャメチャとも見える言葉使いや表現。でも、ストレスなく読み進めることができる。これって、言わば天性のものなんでしょうね。
自分と重なる・・・と書きましたが、正確には自分が知る、とある人と重なっていました。何となく、その人と同じような苦しみを持っているのかな?と
今でもハチャメチャぶりは健在ですし、楽しくもあり、微笑ましくもある、そんな素敵なブログです。
時々、感情をあらわにすることもあるけど、それこそ小説のように様々な音楽を奏でる指揮者のような方ですね。それがまた魅力的なんです。

最後に、話は変わりますが、最近・・・というより、しばらく前からかな?当ブログに足を運んでくださる方がいらっしゃいます。
その方のブログもまた、とても素敵なブログです。掲載された写真に様々な物語を感じてしまいます。そのオーラたるもの、半端じゃありません。
その方だけに分かるように小説を書こうかな?・・・なんてお礼の意味も含め考えています。
T159
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[No.439-2]待つ少女

No.439-2

「最初はね、そうじゃなかったと思うんだ」
「あくまでも想像だけどね」

最初は時間と場所を決めて、待ち合わせしていたはずだ。
そこの電柱の前とか、何とか・・・。
でもその内、どちらか一方がそれを守らなくなり・・・。

「ついには、家の前で待つことになるんだよね」
「けど、約束を守らなかったわけじゃないの・・・」
「最初はね、遅れただけだったの」

それが始まりだった。

「そしたら、家まで来てくれてね、それから・・・それから・・・」

誰の話をしているのか、分からなくなった。
その女の子のこと?それとも私のこと?

「もう、分ったから・・・」

待つ身の辛さを分かっているのは、私が待っていたからではない。
その逆で、待たせていたからだ。

「いつしか気付いたら、友達が呼びに来るのを待つようになってた」
「それに・・・」

待つことから、“待たせる”に変わるまでそう時間は掛からなかった。
友達がどんな想いを胸に、私を待っていたか、知る由もなく・・・。
そのせいもあるのだろうか・・・。
その友達と、疎遠になって行くのも時間は掛からなかった。
そしてついには・・・。

「その友達が呼びに来なくなって」
「・・・ごめんね」
「もう、過ぎたことよ・・・こうして仲直りできてるんだから」

(No.439完)
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[No.439-1]待つ少女

No.439-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
朝、週に2回位はその女の子を見かける。

その子は玄関の前にジッと立っている。
親に怒られて立たされているわけじゃない。
友達を待っていることくらい、容易に察しがつく。

「最近、見かけるようになったの?」
「うん、今年になってから一駅歩くことにしたから」

学校の最寄り駅のひとつ手前で降りるようにした。
あまり言いたくはないけど、主にダイエットが狙いだ。
通勤路を大きく変えたことで、新しい出逢いがあった。

「・・・出逢い?」
「違う違う!」

何も出逢いは、人だけではない。
色々な発見も含めて、“出逢い”と表現したまでだ。

「まぁ、いいけど・・・その子に何か特徴でも?」
「どうして?」
「わざわざ話すことなのかな?・・・って」
「至って普通の光景でしょ?」

友人の言う通り、よくある光景だし、自分もそうだった。
朝、友達を待って一緒に学校へ行く・・・ただそれだけのことだ。

「・・・気持ち分かるんだよね」
「何の?」
「待つ身の辛さが」

その子がどれだけそこで待っているのか、確認したわけじゃない。
でも、何となく“待たされている”感が伝わってくる。

(No.439-2へ続く)

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[No.438-2]天使と悪魔

No.438-2

「で、その後、どうしたの?」

しばらく、声を掛けずに黙って見ていた。
時々、耳がピクピクと動いていた。
どうやら、私の気配・・・と言うより、存在は気付いているようだった。

「別にどうも・・・」

気にはなったが、どうこうするわけにも行かずその場を立ち去った。

「・・・冷たい・・・かな、わたし?」
「いいんじゃない?あからさまにケガしてるわけじゃないんだし」

人に慣れたネコが、ただ居眠りしているだけかもしれない。

「相変わらず、やさしいというかお節介というか・・・」
「だって・・・」
「彼らはそんなに柔じゃないし、これも自然の摂理よ」

その通りだとは思う。
けど、弱肉強食だから・・・という言葉には逃げたくない。
野良ネコの存在は“人間の責任”と無関係とは言えないからだ。

「・・・だけど」
「情が移ると大変なの・・・知ってるでしょ?」
「放っておくのが一番いいのよ」

もし、私たちの会話を他人が聞いたとしたら・・・。
“なんて冷たい人”・・・友人のことをそう思うのであろう。

「分ったけど・・・また、心配なネコが居たらよろしくね」
「とっくに定員オーバーなんだからね!家は」

とかなんとか言いながら、彼らのことを一番想っているのは友人だ。
もう何匹もの野良ネコを引き取ってくれた。
そして、幸せのうちに、彼らは息を引き取った。No
(No.438完)
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[No.438-1]天使と悪魔

No.438-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
たまたま横を通り過ぎた時、それが視線に入ってきた。
一匹のネコが植え込みでうずくまっている。
・・・思わず、足を止めた。

「チュチュチュ・・・」

ネコを見ると意味もなく、習慣的に呼びかけてしまう。

「・・・なんで逃げないの?」

呼びかける以前に、横に来た時点で逃げ出すはずだ。
経験上、飼いネコだって、一歩外に出ると野性化する。
家の中に居る時は、犬以上の甘えっぷりを見せるのに・・・。

「ケガでもしてたとか?」
「そんな風には見えなかったけどなぁ」
「じゃ、単純に人に慣れているだけとか?」

確かにそう考えるのが自然だ。
人を恐れない、野良ネコだっている。

「ただ、少なくとも、元気があるようには見えなかった」

植え込みの中で、いわゆる“定番のスタイル”でうずくまっていた。
・・・中と言っても、正確には植え込みの中ではない。
植え込みとその囲いとの、ちょっとした空間に居た。

「日当たりもよくないし」

単に日向ぼっこしているとは思えなかった。
それに・・・。

「・・・隠れているわけでもない?」
「そうなんだよね」

植え込みは、歩道と隣接している。
だから、歩道を歩いていると、否が応でも目に入る。

(No.438-2へ続く)

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ホタル通信 No.158

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.075 追いつけない自転車
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

話の主軸である“追いつき、追い越せ”は実話ですが、小説のような色気のある話ではありません。

自転車に乗る人は、一度や二度、経験したことがあると思いますが、自分と同じくらいのペースで走っている自転車・・・案外、追い越すのに苦労します。
数学的な計算は抜きにしても、少々ペダルに力を入れた程度では思いのほか、距離は縮まりません。逆に言えば、追い越すためには相当の力を必要とするということです。
この経験を、“恋の駆け引き”に置き換えてみました。ちょっと強引なように見えますが、もともと当ブログは強引さも売りですので、この程度ならまだかわいい方です。

さて、話自体は非常に短い部類に入り、内容も単純ですから読んで頂いた通りです。
前述した、“恋の駆け引き”であれば、もう少しアダルトな雰囲気を持たせる必要があったかもしれません。
でも、話のきっかけは自転車ですから、自転車からくるイメージの延長として、“高校生の恋”と設定しました。
また、“淡い恋”ではなく、“元気な恋”をイメージしてもらえるように書いています。これもまた、自転車からくるイメージを生かしたものです

全体なシチュエーションは青春ドラマの定番であり、そこに実話と商業っぽいエキスを少々加えたような作りに仕上げています。
このような話は、映像にした方が、おもしろいのかもしれませんね。本当は今でも、小説を映像化(フラッシュムービー)してみたいとの思いはあるのですが、本筋の“文字”が、疎かになってしまうこともあり、実現できていません
でも、最近、それを強く思いこともありますので、自分のお気に入りで、映像に向いている話から、映像化して見ようと考えています。
No
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[No.437-2]LED

No.437-2

「確かに懐中電灯ならそうはいかないわね」
「じ・・・」
「してないわよ、私は」

その言葉に、突っ込むタイミングを逸した。

「電球は光が拡散するでしょ」
「だから、一か所に集中しない」

・・・と言われても、正しいのか正しくないのか分からない。

「あなたは、どっち?」
「えっ!何が?」
「電球かLEDか、ってこと」
「意味わかんない!」

・・・とかなんとか言いながらも友人の言いたいことは分かっている。
ただ、この場合、単純にどっちが優れている・・・ということではない。

「そうね、私はLEDかな?」
「・・・かもね」
「結構、一途なとこ、あるから」

いつの間にか、話が変わってきた。
けど、電球とLEDを擬人化するとは、さすが友人、ユーモアがある。

「じゃぁ、あなたは?」
「私?わたしは電球だよ」

拡散・・・広がる・・・ついにはこんな連想をしてみた。

「八方美人?」
「よく分かったわね!」

それよりも体形の方が、その答えのように思えなくもない。No
(No.437完)
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[No.437-1]LED

No.437-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「知ってた?」
「・・・知らない」
「まだ、何も言ってなぃ!!」

友人と会話すると、さながら永年連れ添った夫婦漫才のようになる。

「そうだっけ?」
「まったく、もう・・・」
「で、なに?」
「LEDの光ってさ、案外遠くまで届くんだよ!知ってた?」
「・・・知らない」

話が元に戻った。
・・・と言うより、戻してしまった。

「この前、たまたま夜景を撮ろうとしてたらね」

最近、ガラケーからスマホに買い替えた。
しばらく買い替えない内に、随分と機能も性能も進化していた。

「LEDの光が、かなり先にある道路標識に反射して・・・」

カメラを向ける度に、その標識が光る。
もともと、標識にはそんな狙いもあるのかもしれない。

「珍しいことなの?」
「だって、懐中電灯なら、こうは行かないよ」
「なんでそう言い切れるのよ?」
「それは・・・」

実験しました・・・とは恥ずかしくて言えない。

「どうせ、実験でもしたんでしょ?」

さすが、永年連れ添っているだけはある。

(No.437-2へ続く)

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[No.436-2]彼女が残したもの

No.436-2

「そっか、頑張ろうね!」
「おいおい・・・花粉症は気合じゃどうしようもないぞ」

ただ、アレに関しては頑張るしかないかもしれない。
忘れる努力・・・と言ったほうが適切だが。

「そんなことないよ」

(そんなことない・・・か)

確かにそうなのかもしれない。

「あぁ、頑張ってみるよ」
「私も手伝うから」

花粉症の話にしては、ややおかしな方向に話が進んでいる。
頑張る、手伝う・・・そんなものなのだろうか?
でも、花粉症の経験がないから分らない。

「うん、まぁ、それなら、お願い、する」

とにかく、彼女の言葉に従うことにした。
別にどうこうされるわけでもないだろうし。
ただ、だましているようで心苦しい。

(違う・・・だましている)

何も知らない彼女を今、間違いなくだましている。
急に罪悪感にさいなまれた。

「ご、ごめん・・・本当は・・・」
「言わなくていいよ」

僕の言葉を遮るかのように、彼女の手が僕の口をそっとふさいだ。 

「花粉症にはマスクでしょ?」
No
(No.436完)
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[No.436-1]彼女が残したもの

No.436-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
僕にとっては辛い季節になってきた。

「花粉症?」
「ん?俺、何か言った・・・?」
「辛い季節って・・・」

無意識の内に、心の声を口にしていたらしい。

「・・・みたいなものかな~」

とりあえず、今の流れを変えないほうが賢明だ。
当たらずと言えども遠からず・・・そんな言葉を返したつもりだ。

「やっぱり、そうなんだ」
「・・・やっぱり?」
「ほら、去年も一昨年も今頃、元気がなかったから」

どうやら、表面的には気付かれていたようだった。
幸なことに・・・内面的には気付かれていない。

「そ、そうなんだよ!今時期、辛くて・・・」

ちょっと、調子に乗っている感はあるが大丈夫だろう。
花粉症に話をすり替えても会話は成立している。

「もう、そんな季節になってきたんだね」
「早いものだな・・・」

花粉症という設定の割には、感慨深い返事になってしまった。

「乗り越えられそう?」
「まぁ、なんとかなるでしょ」

そう想いながらも、もう4年が過ぎようとしていた。

(No.436-2へ続く)

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ホタル通信 No.157

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.164 追い越す私
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

実話度は限りなくゼロです。自分で言うところの“商業向け”っぽい作りだと思います。従って、どのような想いを持たせて作ったのか、作者の視点で紹介させて頂きますね。

前半の展開と後半の展開は、一見繋がりがないような話に見えますが、このふたつを繋ぐキーワードは“ドラマのワンシーン”です。
前半は日常会話の中で、ドラマのあるワンシーンについて、会話しています。彼と私にとっては本当にただの日常会話であり、この先に何が待ち構えているのか、もちろん分っていません
それに、この頃にふたりの関係がギクシャクし始めたのも単なる偶然にしています。
多少、強引かもしれませんが、このギクシャクが前半と後半とを結ぶ大切な役割を果たしています。

後半は前半の“お医者様”の話は全く出てきませんが、今度は“男と女の別れ話”をドラマのワンシーンとして登場させ、ドラマのワンシーンでもあり現実でもある・・・との展開をさせています。

この小説は、前半を書き進めているうちに、後半にもうひとつのドラマのワンシーンを入れよう・・・そして、それが現実にも起こっている、と言う展開を思い付きました
ただ、この時点でいわゆるオチは考えておらず、たまたまドラマのワンシ-ンとして選んだ“去って行く彼、追いかける私”で話を展開させたところ、このオチに行き着きました。

何度か書かせて頂いていますが、オチが最初からあって、そうなるために話を作って行くことはほとんどありません。
今回の話は、手前味噌ですが、オチとしては結構気に入っています
遅かったと思ったら早すぎた・・・でもあり、ドラマなら最終回でも私達にとっては始まりとなった・・・でもあります。
No
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[No.435-2]夢の跡

No.435-2

確かに、二人に逢えたこともその理由だ。
ただ、それだけではない。

「昨日までそこにいたかのように・・・」

6年と言う時間の経過を感じさせないコミュニケーションが取れた。
“変わらないね”・・・こんな言葉が飛び交った。

「だからかな・・・ちょっと離れ難かったな」

空港に向かう帰りのバスで、ちょっと感傷的な気持ちになった。

「盆や正月と同じで、自宅に戻るだけなんだけど」
「そっか・・・行けて良かった?」
「・・・そうだな、逆に仕事で良かった」

二度と元職場には戻れない・・・そんな覚悟もしていた。
大袈裟だけど・・・。

「そうでもなかきゃ、会社に行く用事もない」
「それに盆と正月は、会社、閉まってるし」
「それもそうね!」

その夢のようなひと時も、次の日には現実に戻ることになった。

「まるで私が悪人みたいじゃない?」
「かもな!」
「もう!知らない!」

戻った後、こう思った。
俺は本当にそこに行ったのだろうか?
もしかしたら、全て夢だったのかもしれない・・・と。

けど、数日後、夢ではないことが証明された。
“お二人”からそれぞれメールが届いたからだ。
No
(No.435完)
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[No.435-1]夢の跡

No.435-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「どうだった?」

里深(さとみ)が、なぜだか嬉しそうな顔をして聞いてきた。

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ・・・」
「だって、6年ぶりの元職場でしょ?」

6年前に、その元職場から現在の職場に転勤した。
元職場は言わば故郷にあたる。
だから、プライベートでは盆と正月に毎年戻って来ていた。

「まぁ・・・確かに6年ぶりだったけど」
「・・・なんで嬉しそうなんだよ?話は戻るけど」
「だって、知った顔もいるわけじゃん!」

だからなに?と、突っ込みたくなる。
けど、気持ちは分からなくもない。
実際、あからさまに顔には出さなかったが、楽しみではあった。

「俺が嬉しそうなら分かるけど、なんで里深・・・」
「逢って来たんでしょ?お二人に」

俺の話を遮るように割り込んできた。
なるほど・・・そう言うことか。

「あぁ、逢ってきたよ、お二人にね」
「ふ~ん、やっぱりそうなんだぁ」

嬉しそうな顔の理由・・・好奇心・・・と言ったところだろうか。

「言っとくけど、転勤前も何もないからな」

振り返れば仕事とは言え、自分にとっては夢のような2日間だった。

(No.435-2へ続く)

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[No.434-2]君と僕

No.434-2

もし、奈央(なお)と同じホームに居たとしたら・・・。

僕はきっと奈央を電車に乗せようとはしないはずだ。
いつまでも、こうしていたい・・・と。

「とにかく、僕はいつもの通り、あっちに居るから」
「うん、そやったら、気いつけて」

急いで反対側のホームへ向かった。
電車の到着を告げるアナウンスが聞こえてきたからだ。

“間もなく2番線に電車が・・・”

(急がなきゃ・・・!?)

「あっ!」

急に我に返った。
反対側のホームに奈央は居ない。
それもそのはずだ。
ついさっきまで、言わば夢を見ていたからだ。

「あはは・・・なんでだろうな、今頃思い出すなんて」

目があった女性が乗り込んだ電車が今まさに発車しようとしている。

(じゃぁね)

その女性に向けたものではない。
僕の目の前には、笑顔で手を振る奈央の姿が見えていた。

(No.434完)
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[No.434-1]君と僕

No.434-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
反対のホームに居るひとりの女性と目があった。
もちろん、故意ではなく、単なる偶然だ。

(どうも・・・)

どちらからともなく、軽く会釈した。
別に何かを期待したわけじゃない。
他人同士とは言え、このままだと、どうにもおさまりがつかない・・・。
お互いそんな感じだった。
実際、その女性は何事もなかったように電車に乗り込んで行った。

「ほんまに、ここでええのに」

「まぁ、そう言わずに、いつも通り見送らせてくれよ」

奈央(なお)といつもの場所で逢っていた。
そして、帰りにはいつも駅のホームで見送る。
ただ、僕は奈央とは反対側のホームに居る。

「せやったら、うち側のホームに来たらええのに」
「何だか照れくさくて・・・」

確かに何だか照れくさい。
それに駅のホームに付いた途端、不思議と会話がしぼんでしまう。
ホームという場所がそうさせるのだろうか?
それとも、何かを予感しているからだろうか・・・。

「それに反対側なら、顔を見てられるだろ?」
「なんか、嘘っぽいなぁ~」

奈央の言う通りだ。
嘘じゃないけど、本当でもない。

(No.434-2へ続く)

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ホタル通信 No.156

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.74 シャボン玉
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

自分の作品でありながらも印象に残っているもの、そんなに印象に残っていないものがあります。この話はどちらかと言えば後者になります

ホタル通信を書く時は、対象となる話を改めて読み直しています。
今回の話の結論・・・何でしょうか?自分でもよく分かりません。ただラストは、過去との繋がりを何か予感させるような書き方にしているのことは伺い知れます。
過去とは前半「やだぁ・・・それに、何これ?」から後半の「二人の声が重なった」までです。

目の前を横切るシャボン玉を見て、夏祭りのワンシーンを思い出す。そして夜空を駆け上がったひとつのシャボン玉。
そこに向けられた「が・ん・ば・れ!」の言葉は同時にお互いに向けられた声援だった・・・そんな雰囲気を出しています。もちろん、実話度は限りなくゼロであるため、ほぼ想像で作られた話です。

“日常と心をテーマに”と言うのは、タイトルに添えられている通り今でも変わりません。また何度かご紹介させていただいた通り、一種の応援歌として小説を作っています。
当初は主に自分に向けてであり、それからある人に向けて書くようになりました
もちろん、広く皆様方にも向けたような話も数多く存在していますし、今はそのような話を書くことが増えたような気がします。

このシャボン玉も自分に向けたものであり、ある人に向けられたものでもあり、広く皆様にも向けられています。
シャボン玉は、いつ弾けて消えてしまうか分らない、とても不安定なもの・・・つまり“不安”の象徴として登場させています。
だからこそ「が・ん・ば・れ」と、声援を送らせてみました。

あの日のシャボン玉は消えなかった。それが何を意味しているのか、それは読み手にお任せしますね。
だって、作者もそれが何を意味しているのか、分っていませんから。
N0
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[No.433-2]3つの願い事

No.433-2

「・・・微妙だけど、じゃぁ次!」

彼氏ができた。
それも想っていた人に告白された。

「この時、願い事の効果あり!って思ったの」

ただ、これも微妙なところがないわけではない。
全く知らない仲ではなかったからだ。

「嬉しかったというより、ビックリした」
「願い事の効果・・・と考えるのも無理ないかもね」
「じゃぁ、3つめは?」

3つめの願いは最近叶った。
遅かったというより、もともと時間が掛かるのは分っていた。

「また男関係とか?」
「近いといえば近いかな・・・」
「・・・もしかして、結婚!?」
「それならいいけど、その前に彼氏作らなきゃ」

3つめの願いは、20歳になっても親友がいてくれること。

「・・・それって、私のこと?」
「逆にあなたしか居ないじゃない」
「それもそうね」

それこそ中学も高校も、更に大学まで同じだ。

「別にあわせていたわけじゃなくて、偶然・・・でもないか」
「・・・じゃない?」
「その神社、私も毎年通っているのよ?」

もしかしたら、私の3つめの願い事は叶っていないのかもしれない。
でも友人がそれを叶えてくれたかもしれない。
No
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