[No.427-2]二枚の写真
No.427-2
「出来栄えはどないなん?」
「そりゃ、もう!」
僕の腕前からすれば奇跡の一枚とも言える会心の写真が撮れた。
ある意味、実物よりも雰囲気が出ている。
「ほんまや!完全な上目遣いやん!」
とか何とか言いながらも、満足そうだった。
けど、決して自己満足のナルシストではない。
僕が喜んでいることに対して満足している。
「ええ、写真が撮れたやん!」
そう言うと、さっきの表情とはうって変わって満面の笑みになった。
幼さが残る、まるで少女のような笑みだった。
「それ、いただき!」
反射的にシャッターを押した。
「わぁ~完全に無防備やん!」
幼い表情の彼女こそ、本来の彼女だ。
逆に妖艶な表情が作り物だと言える。
でも、その妖艶さで誰かを陥れようとしているわけではない。
端的に言えば、モデルとしてのプロ意識だ。
それと・・・。
「生きて行くためだったよな?」
写真の彼女に問いかけた。
「・・・かもね」
そんな返事が聞こえてきたような気がした。
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