« 2013年1月 | トップページ | 2013年3月 »

2013年2月

[No.433-1]3つの願い事

No.433-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
実家からやや離れた所に、とある神社がある。
有名でもないが、正月にでもなれば、そこそこ初詣の客で賑わう。

「中校生の頃だったかなぁ・・・」

小さい頃から、毎年訪れていたのは変わりなかった。
ただ、ある年、あえて願い事をしたのを覚えている。

「当然、聞いていいよね?」
「うん、そのつもりで話している」

願い事は、3つあった。

「3つ?少ないわね・・・」

他に願い事がなかったこともあるだろう。
加えて、子供心に遠慮したのも、また事実だった。

「あまり多いと、聞き入れてもらえなくなるでしょ?」
「そう?私なんか、いくつでも願い事するわよ」

でも、結果的にこれが良い方向へと進んだ。

「・・・ということは!」
「そう!叶ったんだよね、3つとも」

それぞれ時間は掛かったものの、願い事は叶った。

「じゃぁ、順に聞いていこうかな」

ひとつ目は、欲しかったものが買えた。
正確には買ってもらえた・・・となるが。

「自転車、欲しかったんだ」

小学生の時は、かなり駄々をこねても買ってもらえなかった。
それが、驚くほどあっさり買ってもらえた。

(No.433-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.432-2]約束

No.432-2

何も劇的に寿命が延びる薬の開発を期待しているわけじゃない。

「ただ、ずっと先にゴールを持ってきただけ」
「・・・ずっと先?」

60歳になっても80歳になっても、まだまだゴールは先になる。
ゴールに近付くためには、生き続けなければならない。
それをブログを書き続けるということに置き換えた。

「具体的な目標・・・ってこと?」
「・・・だな、妖怪じゃないんだから、何もなく生きられないだろ?」
「妖怪には悪いけど」

正直に言えばそれまで続けられる自信は全くない。
けど、具体的にやるべきことが明日もある。
単純だけど、一日一日をそれで乗り越えて行く。
そんな意味を込めて、約束を交わした。

「ちょっと、ロマンティックな話ね」
「嫉妬した?」
「・・・別に」

そう言いながらも、何となく不機嫌そうな顔だ。

「冗談と分っていても、本気でこれに応えてくれる」
「それが嬉しくもあるな」

軽く受け流すわけではなく、本質を見抜いて応えてくれる。
だから、多少照れくさい話でもできるのかもしれない。

「こうなったら、私は151歳まであなたと一緒に生き続けてやる!」
「・・・僕は最初から、そのつもりでいたけど?」

(No.432完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.432-1]約束

No.432-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
ある約束をした。
冗談とは言え、気持ちの上では至って本気な約束だ。

「どんな約束?」

ブログを通じて知り合った人が居る。
ネット上だけとは言え、仲良くしてもらっている。

「ある時な・・・」

話の流れで、お互いいつまでもブログを書き続ける約束をした。

「・・・それって、お互い80歳になっても・・・というパターン?」
「基本的にはそうだな」

でも、大きく異なるところがある。

「何が異なるわけ?」
「年齢だよ、年齢」
「・・・そっか、さすがに80歳は厳しいか・・・」
「ううん、その逆」

その知り合いと交わした約束。
それは、150歳になってもブログを書き続けるという約束だった。

「150歳!?」
「絶対、無理じゃない!」

そんなことは百も承知だ。
書き続けられる以前に、生きていること自体、可能性ゼロだ。

「けど、至って本気なんだ」

(No.432-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.155

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.173 イバラの道
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この小説は時々登場する“哲学チック”な作品の代表例と言えるでしょう。

内容そのものの実話度はゼロですが、その背景にあるものは事実であり、それを“イバラの道”と言う言葉にギュッと凝縮しました。従って、極端に言えば、この言葉だけで作品を創り上げています

背景・・・何となく、分って頂けると思います。
お世辞にも明るい話ではありませんが、それほど暗い話でもありません。
平凡と思われる毎日に、突如として現れた“イバラの道”でも、イバラの道は何も特別なものではなく、その平凡な毎日にでさえ、トゲがある。
ラストを飾る「人生と言う道はどの道も少なからず、いばらの道なんだ」と言う部分にはそんな想いを乗せています。

当時、自分自身にそれこそイバラの道が突如現れ、まるで試されているかのように“進むべきか進まざるべきか”の選択に迫られたことがありました。
その時の心の葛藤を、少し哲学的なセリフを並べて表現してみました。案外、悩まずにスラスラ書き終えた記憶があります。
当時・・・とは書きましたが、小説を書いた時点では、それは既に過去のことであり、冷静に振り返ることができたせいで、筆が進んだのだと思います。

で、“イバラの道”を進んだのか、進まなかったのか・・・。
結局、私は進みませんでした。小説の言葉を借りれば、「その道を行かなければ“賢者”と褒め称えられる。けど、陰では“臆病者”と失笑をかう」になるのでしょうね

道こそ進みませんでしたが、今でも心のどこかにトゲが刺さっている気がします。でも、そのトゲは決して、私に痛みを与えるトゲではありません。
No
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.431-2]みゆき通り

No.431-2

私も学生時代、お世話になった。
通学路とまでは行かないが、学校の帰りによく立ち寄った。

「こんなレアな話で盛り上がれるなんて、考えても見なかった」

ローカルになればなるほど逆に話が盛り上がる。

「それにしても懐かしいなぁ~」
「・・・だね!」
「みゆき通りで繰り広げられた、恋の話もあるんじゃない?」
「まぁ・・・ね」

特段、デートコースになるようなものはなかった。
ただ、恋愛初心者にとっては都合が良かった。

「映画館も喫茶店もあったしね」

とにかく、デートの定番をこなすことができた。
もちろん、彼がこなしていたことにはなるが・・・。

「そうそう!私たちも初心者だったから、喫茶店にはよく行ったわね」
「照れもあって、2階の窓から通りを眺めていたわ・・・お互い」
「・・・2階?」

(それって、もしかして・・・)

「その喫茶店・・・狭い階段を上がって行かなかった?」
「・・・そうね、確かにちょっと窮屈だったわ」

思い当たる喫茶店がある・・・と言うか、当時ならそこしかない。

「ブラジル!」 「ブラジル!」

ふたりの声が重なった。
No
(No.431完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.431-1]みゆき通り

No.431-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「えっ!同じ姫路出身!?」

1年ほど前から仕事関係である人と知り合いになった。
不思議なほど、すぐ友達になった。

「全然、知らなかった」
「お互い改めて言う機会もなかったもんね」

極端な方言や訛りがない。
それが逆に“どこの人”か分り難くしている。
おまけに仕事柄、標準語を使わなくてはならない。

「そう言えば・・・あの部長もそうなのよ?」

思わぬ名前が出た。

「へぇ~そうなんだ~」

案外、居ないようで居る。

「なんだが親近感がわいちゃうな」

違う部署のため、話したことは数える程度しかない。
でも、今はもう気持ちの上で知り合いになった。

「そう言えば学校の帰り、よく商店街に寄り道してたっけな」
「・・・商店街?」
「それって、もしかして・・・みゆき通り?」

知り合いのビックリした顔がその答えのようだった。

「卒業以来、他人からその名前聞いたの初めてよ」

地元では有名な、駅前から姫路城に伸びている商店街だ。

(No.431-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.430-2]君は何番目なの?

No.430-2

「別にそれがどうしたってことはないんだけど・・・」

一人暮らしの私にとっては、多少通ずるものがある。
寂しさと・・・。

「・・・たくましさ?」
「よく分かったわね!」
「あなたを見てたら分るわよ」

そのネコに何かを重ね合わせていたのかもしれない。
どちらも地球の上の同居人だ。

「まっ、相変わらず人には馴れてないようだけど」

未だに私の顔を見ても、逃げてしまう。
ただ、昔よりは逃げるタイミングが遅くなってきた。

「よっぽど、怖いんじゃない?」
「それって・・・顔それとも性格?」
「・・・今はどちらも!」
「こらっ!」

今日も例のネコを見掛けた。
いつもより、お互いの距離は近い。

「君は、何番目なの?」

一瞬、私の声に反応したが、そのまま草むらに消えて行った。
その瞬間、鳴き声が聞こえた。

“ニャァ~ニャァ~”

その答えなのか、私の悪口なのかは、それは分らない。No
(No.430完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.430-1]君は何番目なの?

No.430-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「君は、何番目なの?」

一瞬、私の声に反応したが、そのまま草むらの中に消えて行った。

「へぇ~、兄弟・・・姉妹かもしれないけど他にも居たんだ?」
「見たいね」

最初に見掛けて以来、頻繁に出逢うようになった。
そしてある日、白い子猫を引き連れた一行に出逢った。

「親ネコの後を追っていたわ」
「例の白いネコ?」
「確信はないけど、多分そうだと思う」

親ネコを先頭に、白い三匹の子猫が続いた。

「当時は足取りもおぼつかなかったな」

でも、日を追うごとに成長が見てとれた。
気付けば、体は親ネコと変わらないまでに成長していた。
ただ・・・。

「ただ?」
「今は一匹だけで行動してるみたい」

どうやら親離れしたようだった。

「三匹とも白いから、誰が誰かわからないけど」

今見ているのが、AなのかBなのかCなのか・・・。
もちろん、全部Aかもしれない。

「兄弟で言うなら、長男、次男、三男ってことね」

(No.430-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.154

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.71 気持ち次第
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

実話度はそこそこ高めです。お土産を選ぶという行為とその背景がほぼ実話と言えます。

前半よりも後半の方が実話度が高く、前半は後半へと話を繋ぐために創作したような構成です
この話はある意味、過去形の話であり、お土産を選んだ結果の話です。従って話の核心部分である“お土産を選ぶ時に、その人を想いあれこれ悩む”姿そのものには触れていません。
その“悩みながら選んでいる姿”の方が小説的には絵になるのでしょうが、第三者的にそれにアプローチしたかったために、あえて“結果”の話にしました。

さて、“その結果”ですが、小説ではお土産を渡していないことになっていますが、実際は渡しています。
当初は事実通り“渡す”パターンを想定しながら書き進めていましたが、後半の途中あたりで“渡さない”パターンのオチのアイデアが閃いたので、小説上では渡さずにラストを迎えさせることにしました

最近、また出張が増え始め、このような気持ちを抱くことが多くなりました。
“その人を想い、あれこれシミュレーションする”小説に書いた言葉ですが、改めてそう感じます。ただ、最終的に“買わなければいけない”ではありません。
これも小説に書いた通り“買わない選択肢もあげない選択肢”もあります。これは、お土産選びを“義理”にしないためにも必要なことかもしれません
No
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.429-2]癒しの時

No.429-2

「穴・・・開いてるのか!?」

正確には穴じゃない。
何かを差し込めるすきまと言うか・・・溝のようなものだ。
ただ、せいじゅうろうが随分と窮屈そうだった。

「なんか、無理やりっぽくない?」
「あったりぃ~」
「・・・それを当てても仕方ないだろ」

どうやら、そんなに太いものを入れるのではないらしい。
それに横幅も言うなれば、スマホサイズだ。

(・・・スマホサイズ・・・!?)

「スマホ入れ!?」
「あったりぃ~、今度はほんまに!」

(なるほど・・・)

もう出ていたヒントとは、スマホを見せた時から始まっていた。
つまり、見せたスマホそのものがヒントだったようだ。

「それにしても、せいじゅうろう・・・プッ!」
「癒されるやろ?」
「・・・だな」

でも、癒してくれるのは何もせいじゅうろうだけではない。

「ん?・・・どないしたん?」

菜緒(なお)もまた、癒してくれる。
No429_5
(No.429完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.429-1]癒しの時

No.429-1      [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「これなんやと思う?」

菜緒(なお)がスマホを見せてきた。
そこには、何やら茶色いクッションのようなものが写っていた。
ただ、比較する対象がないため大きさが分からない。

「リラックマの何かだろ?」

それは書いてあるからすぐ分かる。
それに、見慣れた色でもあり、質感でもあったからだ。

「そっ!」
「・・・って、何かヒントは?」

とにかく大きさが分からないとそれが何であるか、絞込み難い。

「ヒント・・・」
「そやね~、もうヒントは出してるけど、じゃあ、別の・・・」

(ヒントがもう出てる・・・?) 

その物以外は写っていない。
でも、新たなヒントを出してくれるなら、それを待つことにした。

「これなら、どない?」

別の写真だった。

「あっ!せいじゅうろう・・・」

そのクッションらしきものに入っていた。
それも不自然極まりない状態で。

(No.429-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.428-2]ロンサム・シーズン

No.428-2

「答えはWebで!」
「・・・あのね」

別にCMを真似たつもりはない。
至って、真実だ。

「本当にWebに答えがあるのよ」
「ちょっと、強引だけどね」

正しくはWebじゃなくてもいい。
ただ、それを手軽に入手するにはWebが最適だった。

「どこかのホームページ?」
「ううん、歌の歌詞なの」

“その後”の答えを歌詞にしたような歌がある。

「へぇ~、なんだか面白い展開ね!」
「素直に答えを聞くよりも、いいかもしれない」

その歌詞は随分前から知っていた。
いつもその歌を耳にするたびに、当時の記憶が蘇った。

「それより、なんて歌なの?」
「じゃ、あとでこのURLに行って」

今、この場で答えが分ってしまうのは照れくさい。

「聞いたわよ、例の歌」
「勇気を出して、手紙に書いたのにね」
「ただ、それはそれでいい思い出になったよ」
「そっか・・・それこそ、青春だね!」

それはいつも、はしゃぎすぎた季節のあとにやってくる。
私の甘酸っぱい想い出が・・・。

(No.428完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.428-1]ロンサム・シーズン

No.428-1

登場人物
=牽引役(女性)相手(女性)
-----------------------------
今思えば、大胆な行動だったと思う。

「確かにそうよね」
「逆に今じゃ、考えられないけど」

高校生の頃、付き合い始めた彼と手紙のやりとりをしていた。
交換日記までといかない、便箋1枚程度の量だ。
一緒に帰る日にあわせて、それのやりとりをした。

「今みたいに、ケータイがなかったもんね」

一緒に帰る日を決めることも一苦労していた時代だ。
手紙の交換に合わせて、次の予定も決めた。

「なんでそんなこと書いたのさ?」
「なんでだろう・・・青春のイタズラ?」

らしい言葉で逃げてみた。
当時、他愛もないことを手紙に託していたような気がする。
口に出すよりも、文字にした方が雰囲気が出るからだ。

「雰囲気?」
「なんとなく秘密を共有してる、って感じかな」

それに何度も読み返すこともできる。
何度、彼の言葉にニヤケたことだろう・・・。

「話がズレてない?」
「あっ!そうね、ごめん」

もともとは私の大胆な行動に対する話だった。

「で、どうなったの?その後・・・」

“その後”の前に、私は手紙にこう書いていた。

『次、逢った時にキスしたい』

(No.428-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.153

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.67 いつもここから
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

ホタル通信では今までに数多く、自分の作品に対してダメ出しをしてきましたが、今回の作品は掲載している小説の中では、1位、2位を争う“出来の悪さ”でしょう

実話度は40%なので、そこそこ事実に基づいて作られています。冒頭の“突然の閃光に襲われた”から始まる展開は全て事実です。
本来、事実の割合が高い小説は作り易いのですが、この小説は非常に作り難かったことを覚えています。その作り難さが作品の質に影響していることは間違いありません。

では、小説をかなり補足します。
前半の終了間際のセリフ「あれから(中略)のね」までは、牽引役である女性の過去の出来事です。
彼女は現在に存在しており、今年のペルセウス流星群を見た時に昨年の出来事である“突然の閃光に襲われた”を思い出したわけです
つまり、テレビドラマ風に映像で考えれば、冒頭、回想シーンから始まり、ある時点で現在に切り換わる感じでしょうか?

次に後半ですが、前半との関連性があるような、ないような感じですね。
流星群を無理やり心に訴える“何か”に仕立て上げているように見えてなりません。自分で言うのもおかしいですが。
ただ、何度か書かせて頂いた通り、初期の作品は“重い”話が多かったこともあり、この作品も“やや”ではありますが重い話です。
ですから、当時の心の内側を小説にしたようなものです。
今でこそ、そこそこ話の構成はマシになっていますが、当時は“心の勢い”だけで書いていたような気もします

出来の悪さは、1位、2位を争うほどなんですが、前述した通り、“心の勢い”だけは他に負けないくらいです。
他の話と直接リンクする関係にはありませんが、星にまつわる話は少なくありません。それは偶然そうなったわけではなく・・・必然的にそうなっています。
No
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.427-2]二枚の写真

No.427-2

「出来栄えはどないなん?」
「そりゃ、もう!」

僕の腕前からすれば奇跡の一枚とも言える会心の写真が撮れた。
ある意味、実物よりも雰囲気が出ている。

「ほんまや!完全な上目遣いやん!」

とか何とか言いながらも、満足そうだった。
けど、決して自己満足のナルシストではない。
僕が喜んでいることに対して満足している。

「ええ、写真が撮れたやん!」

そう言うと、さっきの表情とはうって変わって満面の笑みになった。
幼さが残る、まるで少女のような笑みだった。

「それ、いただき!」

反射的にシャッターを押した。

「わぁ~完全に無防備やん!」

幼い表情の彼女こそ、本来の彼女だ。
逆に妖艶な表情が作り物だと言える。
でも、その妖艶さで誰かを陥れようとしているわけではない。
端的に言えば、モデルとしてのプロ意識だ。
それと・・・。

「生きて行くためだったよな?」

写真の彼女に問いかけた。

「・・・かもね」

そんな返事が聞こえてきたような気がした。

(No.427完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.427-1]二枚の写真

No.427-1

登場人物
=牽引役(男性)相手(女性)
-----------------------------
何気なくパソコンに差し込んだメモリーカードにそれはあった。

「あっ・・・これ・・・」
「全部消したつもりだったのに・・・」

いくつかコピーを作っていたことが原因していたのだろう。
消し忘れていた写真が残っていたようだ。

「特に好きな写真だったよな・・・」

僕を見つめる二枚の写真。
一枚は言わば大人の女性を感じさせる“妖艶”な表情だ。
もう一枚は対照的に、“幼さ”が残る。
けど、どちらも同じ日の、ほぼ同じ時間に撮ったものだった。

「ほら、こんなんええやろ!」

モデルらしく、ポーズを決める。
何座りと言えば良いのだろうか?
両足を“く”の字に曲げて、床にペチャンと座り込んでいる。
特徴的なのは、ポーズではなく、その表情にある。

「上目遣いがいいね」

言い方は良くはないが、物欲しそうな目が何かを語っている。
妖艶でもあり、挑発的でもある。

「なら、早く早く!」
「じゃ、撮るよ!」

モニター越しに、彼女が映っている。
表情は相変わらず、艶かしい。

「はい、チーズ!」

ベタな掛け声と共に、“カシャッ”と作り物の音がこだました。

(No.427-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年1月 | トップページ | 2013年3月 »