[No.423-2]崩れた壁
No.423-2
「どんな人が住んでたのかしら?」
「な、なによ、急に!?」
どのような理由で、あの家がこうなったのか知る由もない。
ただ、そうなる前に、きっと温かい家庭がそこにはあったはずだ。
「随分、こだわるわね?」
「そうね・・・ある意味、人ごとだと思えなくて」
崩れた壁・・・私の場合は物理的な壁じゃない。
家族という壁が崩壊していた。
「ごめん・・・そんな深い意味があったなんて知らなかったから」
「気にしないで・・・誰にも話していないことだもん」
中学生の頃から、その壁が崩れ始めた。
そして、高校生1年生の時に、両親が離婚した。
その時、壁に大きな穴が開いた。
「同時に家を飛び出しちゃったの」
母親とは連絡を取りながらも、一人暮らしを始めた。
「連絡って・・・親は何も言わなかったの?」
「だから、崩壊してるの」
怒られるわけでもなく、帰って来いとも言われなかった。
「でも、あの家はまだ穴が開いてない」
このままだと、穴が開いてしまうのは時間の問題だろう。
でも、しばらくは持ちこたえて欲しい。
私が大学を卒業するまでは。
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