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[No.423-1]崩れた壁

No.423-1

登場人物
=牽引役(女性)相手(女性)
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「なに見てんの?」
「ほら、あれ・・・」

通学路に壁が崩れかけている家がある。

「ほんとだ・・・全然気付かなかった」
「気付かないって・・・」

こんなものなんだろうか?
自分に関係がないこととは言え、ほぼ毎日目にしている光景だ。

「だってぇ、通学途中はスマホタイムなんだもん」

どうやら、その家の壁だけではないらしい。
通学路から見える全ての光景が目に入っていないようだ。

「それより、あの家がどうかした?」
「あ、うん・・・ちょっと気になってて」

日を追うごとに、その崩れ具合が大きくなっている。
恐らく、随分前から廃墟になっているのだろう。

「ねぇねぇ!そんなことより、昨日、あのドラマ見た?」
「やっぱ、最高よねぇ・・・」

お気に入りの俳優の演技をほめ始めた。
分ってはいたものの、あの家には全く興味がないようだ。

「でさぁ、春からの連ドラにも出演するんだって!」

今の私たちとは対照的に、崩れかけた壁が寂しく映る。

「・・・ちょ、ちょっと!聞いてる!?」

つんざくような友人の声が、耳に入ってきた。

(No.423-2へ続く)

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