[No.420-2]買えない自転車
No.420-2
「理由?」
「そうね、子供の頃の反動かな?」
自転車を一番欲しがる年頃に、自転車を与えられなかった。
正確に言えば“新しい”自転車を・・・だが。
「つまり、買い替えってことね」
もともと乗っていた自転車も買ったわけではない。
新品ではないことは子供にさえわかる代物だった。
「結構、恥ずかしい思いをしたのよ」
極力、自転車を使わないようにした。
でも、そうも言っていられないことも多かった。
「今と違って、そんなに安い買い物じゃないからね」
当時は、かなり駄々をこねた記憶がある。
泣いた記憶の殆どに、自転車を欲しがる私が登場する。
「それがトラウマになってるのかも」
「でも、別に親を恨んでいるわけじゃないのよ」
「子供の頃に叶わなかったことを今、自分で叶えてる・・・か」
「そうね・・・そうかもしれない」
ただ、もう頻繁に買い替えるのは止めるつもりだ。
今思えば、随分生活を切り詰めていたかもしれない。
ようやくそのことが理解できる年齢になったからだ。
(No.420完)
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