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2013年1月

[No.426-2]不思議な恋

No.426-2

「レベルアップ?」
「あぁ・・・友達を引き連れて教室まで来たり・・・」

例えば運動場で遊んでいると彼女たちに見られていた。

「ただ、ここまで止まりだったんだよな」

教室に来ても話すわけでもなく、見られているだけだ。

「間違いなく、僕の方を見てたからな」
「あなたのそばに居た“友人”ってオチじゃないよね?」

それはない・・・友人が変わっても同じだった。
決定的なのは僕がひとりでもそうだったからだ。
けど、結局何も発展せず、それぞれ別々の高校へと進学した。

「何だったんだろうな」
「いつ告白されてもいい雰囲気だったんだけど」

だから、今でもこの出来事を不思議に思っている。
これだけ接近しながらも、なぜ恋に発展しなかったのか。
なぜ、彼女は告白しなかったのか・・・。

「そんなことだから、恋に発展しなかったんじゃないの!」
「どういう意味だよ!?」
「彼女の行動に応えていない・・・ただ待ってるだけ」

確かに言われる通りだ・・・。
ある意味、チヤホヤされることを楽しんでいただけかもしれない。

「今は改善されているからいいけど」
No
(No.426完)
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[No.426-1]不思議な恋

No.426-1

登場人物
=牽引役(男性)相手(女性)
-----------------------------
小学6年生の時、あるクラスメイトの女子と親しくなった。
・・・とは言え、たかが小学生レベルの話だ。

「まぁ、何となくお互い好きなのかな?って感じだった」

告白されたわけではないし、告白したわけでもない。
何となく、そんな雰囲気が漂っていた。

「思い過ごしじゃないの?」

真里江(まりえ)が何とも怪訝な顔をしている。
その言葉と共に、嫉妬しているようにも見えなくもない。
ただ、もともとは真里江が聞いてきたことだ。
僕の小学校時代の恋バナを・・・。

「少なくとも、その頃はそう思ってたんだ」

例えば、男子では僕だけに年賀状が届いた。
それに、バレンタインの日には放課後呼び出された。

「呼び出された・・・」
「・・・なにか足りなくない?」

確かに言う通りだった。
チョコを渡されたのではない。
放課後呼び出され、何となく雑談した。
加えて言えば、年賀状の内容も至って普通だった。

「全てにおいて“もう一歩”って感じだった」
「だから・・・何となく“好きなのかなって?”・・・」

それが、中学に入っても同じようなことが続いた。
ただ、中学に入ってからは、ややレベルアップした。

(No.426-2へ続く)

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ホタル通信 No.152

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.126 ターミナル
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:男性

時々、話に無理がある作品がございますが、この作品も読み直してみると、大いに無理があります。

自分の作品に自分でケチを付ける・・・自分のおこがましさをアピールしたいからではありません。本当に、ダメ出ししたいからです
では、その大いなる無理っぷりに、解説を加えて行きますね。

前半、ある男性がひとりの女性を見かけたことから物語が始まります。ただ、結論を先に言えば、その男性は実際に空港には居ません。
では、どこに居たのかと申しますと女性の電話の相手、つまり、電話の向こう側に居たことになります。つまり、前半の出来事は男性の言わば“想像”になります。
ただ、想像と言っても、全くの空想ではありません。電話での会話を通じて感じたことや伝わってきたものを形にしたと考えてください
一応、後半中盤の次のくだりが、前半の内容が想像であったということを表しています。

「あなたの想像力には感心するわ」
あの電話の女性が目の前に居る。
「ロビーの隅じゃなくて、真ん中だったけどね」
「後はだいたい当たってるわね」

時間の経過、場所の変化など・・・活字だからこそ書かなければ伝わらないことを、あえて当ブログでは省いています。
今でこそ、時間の経過やシーンの変化を表すマーク(昔はマーク)を付け、多少、話にアクセントを付けています。
今回の話は、過去の話を男性と女性がしているのですが、その過去にあたる前半の話は男性の想像です。
加えて、前半の男性と女性と後半の男性と女性は同一人物ですよね?でも、後半を読み進めるまで、その事実は分りません。

手前味噌ですが、このような話は映像にした方が面白いのかもしれませんね
時間の経過や場所の変化がひと目で分ります。活字だと詳しく書き過ぎることで逆にネタばれを誘ってしまうことがあるからです。
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[No.425-2]うれしい一言

No.425-2

「しばらくは、ゆっくりできそうだよ」

2週間続いた出張もひと段落した。

「でも、ほんと今回は疲れたよ」

風邪こそひいていないが、喉の調子が悪い。
仕事柄、四六時中、しゃべらないといけなかったからだ。
そのせいで、喉がガラガラになっている。

「大丈夫?」
「1年分しゃべった感じがするよ」

しばらくは、寡黙を続けたい気分だ。

「でも、土産話をお楽しみに!」

仕事とは言え、土産話はこと欠かない。

「楽しみにしていますね!」

そうこうしている内に、新神戸に到着した。

「今、新神戸に到着したから、大阪までは後僅かだよ」
「そうなんだ、早く家に着くといいね」

とは言え、新大阪に着いてから、自宅までは小一時間は掛かる。
それに、そろそろ22時になろうとしている。
自宅に到着するのは、23時頃になりそうだ。

「後、少し頑張りますね」
「うん、一分でも一秒でも早く帰って温かい布団で休んでください」No425_2
(No.425完)
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[No.425-1]うれしい一言

No.425-1

登場人物
=牽引役(男性)相手(女性)
-----------------------------

「22日は大丈夫ですか?」

優衣(ゆい)からのメールだ。

「僕もその日しかないと考えていたよ」

話を合わせたわけじゃない。
スケジュール上、本当にその日しか空いていない。

「今、出張の帰りなんだ」
「もうすぐ、新神戸だよ」

追加のメールを送った。

「多分、帰りかな~、なんて思ってた」

相変わらず、気配りがうまい。
出張帰りは行きと違って、ある意味、暇をもてあそんでいる。
一仕事終えて、肩の荷が降りた状態だ。
あれだけ張り詰めていた緊張感も今は、ゼロに等しい。

「ありがとう、メール貰えてホッとするよ」

事前に大まかなスケジュールを教えていた。
だからこそ、気を遣ってくれたのだろう。

「風邪とかひいていませんか?」
「うん、大丈夫だよ」

でも、行った先々はどこも寒かった。
冬だから、当たり前と言えば当たり前だが・・・。

(No.425-2へ続く)

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[No.424-2]LINE POP

No.424-2

(へぇ~、こんな機能なんだ)

LINE POP自体はプヨプヨのようなパズル系ゲームだ。
でも、スコアのランキングに知った名前が表示されている。

「これが、みんなが話していたことなんだ」

飲み会の夜、抜かれたとか抜き返したとか・・・そんな話をしていた。
どうやら、スマホの電話帳に登録している人が出てくるようだ。
もちろん、相手もLINEを利用している必要があるのだろうが。

「彼女・・・すごいな」

ランキングが1位だけでなく、その得点がハンパなく凄い。

「どうやったらこんな点、取れるんだよ!?」

しばらく、悪戦苦闘が続いた。
点が思うように上がらない。
それに、夢中になり過ぎてすぐにハートが底をつく。
・・・そんな時だった。

“・・・さんからハートが・・・・”

「ん?なんだろう・・・」

メールのようなメールじゃないような内容がスマホに表示された。

「よ~し、やるぞ!」
「がんばれ~」

いつしか、LINEでメッセージを交換するようになった。
これが案外、楽しかったりして・・・。
Image_2
(No.424完)
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[No.424-1]LINE POP

No.424-1

登場人物
=牽引役(男性)相手(女性)
-----------------------------
出張先の職場の人達が飲み会を開いてくれた。
その中にかつての教え子の女子社員が居た。

「LINE POPって知ってますか?」

LINEは何となく知ってはいるが、LINE POPは全く知らない。

「もちろん、知ってるよ」

お酒が入っていることも手伝って、口が軽やかになる。
・・・と言うより、知ったかぶりが過ぎるのかもしれない。

「じゃあ、LINE POPはしてますか?」
「ううん、してないけど」

とりあえず無難に答えた。

「じゃ、スマホ貸してください」
「・・・えっ!?あ、はい・・・」

その昔、新入社員だった彼女たちの教育係りをしていた。
だから、彼女が入社した当時からお互い気心は知れている。

「・・・え・・・えぇー!?」

この世のものとは思えないスピードで、違和感なく操作を始めた。
それもそのはずだ。
僕のスマホと彼女のスマホは同じ機種だからだ。

「はい!私のメアドと電話番号入れておいたから・・・」
「後でLINE POPをインストールしてくださいね」
「あ、はい・・・」

彼女が積極的なだけだろうか?
それとも、単に知らない仲じゃないからだろうか・・・。
LINE POPをインストールしたのは、出張先から戻った2日後だった。

(No.424-2へ続く)

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ホタル通信 No.151

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.139 今年のバレンタイン
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

手前味噌になりますが、オチに相当するラスト付近の出来栄えはそこそこでしょう・・・でも、それに至るまでの過程がちょっとわかり難いですね

まず、実話度について触れて行きます。
実話度20%ですから大部分は創作で、以前にチョコを渡せなかった事実をかなり大きく膨らませた話になっています。
冒頭、ラストに至るまでの過程がわかり難い・・・と記載しましたので、補足して行きますね。

わかり難いのは、時間的な経過をあえてバラバラに記載しているからです
つまり、“数日前、知り合いに不幸があった”と前半の最後の部分を冒頭に持ってくれば、多少なりとも“だからチョコを渡す気になれなかった”と理解することができます。
ただ、そうすると、いきなり、ネタばれ的でもあるため、やや商業的な要素を加えるため、あえて最後にしました。
小説の上のある男性社員がメールの内容に“?”だったように読んで下さった皆様もきっと“?”だったと思います。それが狙いと言えば狙いなのですが・・・。

この話もいつもの通り、小さな事実を捉えて、それを大きく膨らませる・・・というやり方です。
それに、これもいつもの通りなのですが、オチは考えずに話を作って行きました。ですから、最後に何か気の利いた締めくくりになるかどうかは、正直、時の運です。
ですから、今回の話はそれが良い方向に向かったひとつの例でもあります。
作者である自分がアイデアをひねり出すのではなく、あくまでも小説上の登場自分達が結論を導いています。
No151
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[No.423-2]崩れた壁

No.423-2

「どんな人が住んでたのかしら?」
「な、なによ、急に!?」

どのような理由で、あの家がこうなったのか知る由もない。
ただ、そうなる前に、きっと温かい家庭がそこにはあったはずだ。

「随分、こだわるわね?」
「そうね・・・ある意味、人ごとだと思えなくて」

崩れた壁・・・私の場合は物理的な壁じゃない。
家族という壁が崩壊していた。

「ごめん・・・そんな深い意味があったなんて知らなかったから」
「気にしないで・・・誰にも話していないことだもん」

中学生の頃から、その壁が崩れ始めた。
そして、高校生1年生の時に、両親が離婚した。
その時、壁に大きな穴が開いた。

「同時に家を飛び出しちゃったの」

母親とは連絡を取りながらも、一人暮らしを始めた。

「連絡って・・・親は何も言わなかったの?」
「だから、崩壊してるの」

怒られるわけでもなく、帰って来いとも言われなかった。

「でも、あの家はまだ穴が開いてない」

このままだと、穴が開いてしまうのは時間の問題だろう。
でも、しばらくは持ちこたえて欲しい。
私が大学を卒業するまでは。

(No.423完)
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[No.423-1]崩れた壁

No.423-1

登場人物
=牽引役(女性)相手(女性)
-----------------------------

「なに見てんの?」
「ほら、あれ・・・」

通学路に壁が崩れかけている家がある。

「ほんとだ・・・全然気付かなかった」
「気付かないって・・・」

こんなものなんだろうか?
自分に関係がないこととは言え、ほぼ毎日目にしている光景だ。

「だってぇ、通学途中はスマホタイムなんだもん」

どうやら、その家の壁だけではないらしい。
通学路から見える全ての光景が目に入っていないようだ。

「それより、あの家がどうかした?」
「あ、うん・・・ちょっと気になってて」

日を追うごとに、その崩れ具合が大きくなっている。
恐らく、随分前から廃墟になっているのだろう。

「ねぇねぇ!そんなことより、昨日、あのドラマ見た?」
「やっぱ、最高よねぇ・・・」

お気に入りの俳優の演技をほめ始めた。
分ってはいたものの、あの家には全く興味がないようだ。

「でさぁ、春からの連ドラにも出演するんだって!」

今の私たちとは対照的に、崩れかけた壁が寂しく映る。

「・・・ちょ、ちょっと!聞いてる!?」

つんざくような友人の声が、耳に入ってきた。

(No.423-2へ続く)

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[No.422-2]鍵

No.422-2

「ふ~ん・・・で、この“安物”がお目に叶ったわけね」
「そう!このフィット感がいいのよね」

しばらくぶりにキーホルダーを替える気になった。

「ねぇ・・・どうかしら?」
「どうって言われても・・・」

(これはどうしよう・・・)

感想を求めながらも前のキーホルダーのことが脳裏をよぎる。

「どうしたの・・・考え込んじゃって?」

キーホルダーを付け替えるということは前のが余る。
余る上に、もう使い道は残されていない。

「もう、時計としても機能してないわけでしょ?」
「そんなの捨てちゃえばいいじゃん」

確かに言う通りではある。
この鍵に付いていたからこそ、ここまで長く使うことができた。
そうでもなければ、とっくの昔に捨てていただろう。

「そうなんだけど・・・」

言うほど愛着があるわけではない。
ただ、捨てるのには忍びない。

「じゃあ、使ってあげるから私に頂戴!」
「えっ!?」

以前もこんなことがあった気がする。
ただし、それは鍵ではなく・・・。
No422
(No.422完)
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[No.422-1]鍵

No.422-1

登場人物
=牽引役(女性)相手(女性)
-----------------------------
きっかけは友人から貰った安物のキーホルダーだった。

「安物って・・・はっきり言うわね」
「だって、100円でしょ?」

かろうじて女の子を形どった人形だとわかる。
もちろん、見たことがないキャラクターだ。

「よく値段が分かったわね?」
「100均・・・って言ってたじゃない」

その何の変哲もないキーホルダーが案外、しっくりきた。

「丁度、大きさ的に扱いやすいのよね」
「そんなものなの?」

かれこれ10年ほど使っているキーホルダーがある。
手の中にすっぽり収まる大きさのデジタル式の時計だ。
ただ、しばらく前からその機能を失っている。

「失ってるって・・・それなら意味ないじゃん?」
「・・・じゃなくて」

私が求めているのは機能ではない。
邪魔にならずに、鍵をさりげなくアピールする。
そんな微妙な存在感・・・つまり大きさ、フィット感を求めている。

「大袈裟じゃない?」
「そう?大事なことよ」

ある意味、長い付き合いになる。
だから、長く付き合える物が必要になる。

(No.422-2へ続く)

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ホタル通信 No.150

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.182 汚れた世界
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

No.182の話になると、さすがに初期の作品とは言えませんが、初期の頃によく見られた重々しい雰囲気が全体を支配しています

実話度は、ほぼ100%と言えるのですが、ラストに近付くに連れて、やや創作度が増して行きます。
それにいつものお決まりで、作者は“僕”か“菜央”のどちらかになります。

さて、ほぼ実話なので、読んで頂いた通りの内容です。
当初、お父さんと聞かされていた人物・・・実は彼氏であり、加えて彼氏とは結婚を前提に付き合っている・・・。
小説のように、確かに2度驚きました。
ただ、これも小説に書いた通り、2度目の驚きは結婚を前提・・・に驚いたわけではなく、父親との不仲・・・すなわち、彼との不仲を日頃から聞かされていたことによるものでした
つまり、どうしてそんな人と付き合っているのか、それも結婚を前提にしてまで。
そんな彼を、悪者呼ばわりするわけではないのですが、人となりを感じて頂ける話が「No.352針に気をつけて」になります

改めて言う必要がないかもしれませんが、菜央はもはや“冬のホタル”におけるヒロインのような存在で、様々な話に名前や性別をかえながら登場しています。
そもそも、ブログを始めるきっかけになった人ですし、今でもその影響を受けながら、小説を書いています。

最後に、会話が交わされた場所を紹介してから締め括りますね。場所は「No.322英国屋」です。それに、この小説を読んで頂けたら・・・リンクしているように感じませんか?
No150
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[No.421-2]名誉の傷

No.421-2

「血は出たの?」
「いや・・・そうでもなかったな」
「保健室でしばらく寝てはいたけど」

本当にそうだろうか・・・。
傷跡を見る限り、決してそうだとは思えない。
一瞬、血まみれの彼の顔が脳裏に浮かんだ。
さながら、ホラー映画のようだった。

「ただ、俺以上にその子がびっくりしちゃって」
「そりゃ、そうでしょ・・・」

その子もそうなるとは考えていなかったのだろう。
あくまでも日常の延長線だったに違いない。

「それで・・・目覚めたら、その子が傍らで泣いてるし」
「もともと原因を作ったのは俺の方なんで、逆に申し訳なくて」

「その子とはそれ以来どうなったの?」

今の時代なら、それこそ大問題になる。
学校、そして親のしつけがどうとかこうとか・・・。

「しばらくして転校したよ、でも・・・」
「これが原因じゃなくて、以前から転校することは決まってたんだ」

「・・・じゃ、お互い好都合って感じ?」

色んな意味を込めて、彼に問い掛けた。

「どうだろう・・・ただ、ちゃんと謝れていないことが心残りだけど」

自分の傷より、その子の心の傷ってことか・・・彼らしい。

(No.421完)
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[No.421-1]名誉の傷

No.421-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「ねぇ、その額の傷・・・」

前から気にはなっていたが聞けずにいた。

「これか?小学生の頃にな・・・」

彼と付き合いだして、丁度1年が過ぎようとしていた。
だから、思い切って聞いた。

「前の席の女子の筆箱が当たったんだよ」
「当たった?」

どんなシチュエーションだったのだろうか?
後ろの席ならまだしも前の席となると、イメージし難い。

「あぁ、振り向きざまに筆箱を投げつけられたんだ」
「そうなんだ・・・って、え~!?」

まさしく当たったのではなく“投げつけられた”が正しい。
その時、何があったというのか・・・気になる。

「その日もいつもの通り、ちょっかいかけてたら・・・」
「振り向きざまに、筆箱が飛んで来て」

小学生の男子と女子の関係はそんなものだろう。
好きな女子ほど、からかってしまうとか・・・。

「好きだったの?その女の子?」
「今思えばそうだったかもしれない」

額の傷は2cm程度だろうか・・・そこそこ大きく見える。
でも、幸に髪を下ろしてしまえば全く見えない。

(No.421-2へ続く)

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[No.420-2]買えない自転車

No.420-2

「理由?」
「そうね、子供の頃の反動かな?」

自転車を一番欲しがる年頃に、自転車を与えられなかった。
正確に言えば“新しい”自転車を・・・だが。

「つまり、買い替えってことね」

もともと乗っていた自転車も買ったわけではない。
新品ではないことは子供にさえわかる代物だった。

「結構、恥ずかしい思いをしたのよ」

極力、自転車を使わないようにした。
でも、そうも言っていられないことも多かった。

「今と違って、そんなに安い買い物じゃないからね」

当時は、かなり駄々をこねた記憶がある。
泣いた記憶の殆どに、自転車を欲しがる私が登場する。

「それがトラウマになってるのかも」
「でも、別に親を恨んでいるわけじゃないのよ」
「子供の頃に叶わなかったことを今、自分で叶えてる・・・か」
「そうね・・・そうかもしれない」

ただ、もう頻繁に買い替えるのは止めるつもりだ。

今思えば、随分生活を切り詰めていたかもしれない。
ようやくそのことが理解できる年齢になったからだ。No420
(No.420完)
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