[No.419-2]フリージアの雨
No.419-2
友人が言う通り、絵にはなっていない。
窓に映る私の姿は、さながら落ち武者のように見える。
それほど、悲壮感が漂っているからだ。
「貞子みたいね」
落ち武者ならぬ“貞子”と言われた。
どっちもどっちのような気がするし、もっと酷いような気もする。
「ちょっと、貞子って・・・」
「・・・それなら恨んでやる~!」
「キャ~!!」
怒るつもりが、なぜだか安っぽいコントに変わってしまった。
「あ~ぁ、もうどうでもよくなってきちゃったよ」
「悲しみが雨と一緒に流れて行ったからじゃない?」
さっきまでの友人とは違い、急にしゃれたセリフを投げ掛けてきた。
「そう考えると、雨に打たれて良かったかもね」
「そうね・・・まぁ、見た目は悲惨だけど」
「言わないの!」
ただ、友人の言う通り、見た目は最悪だ。
それに、改めて冷静になってみると、恥ずかしい。
ここがカフェの一角だからだ。
「きっと周りの人は、変な奴って思ってるでしょうね」
「大丈夫よ、その傘を私に貸してくれれば」
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