[No.418-2]腹話術
No.418-2
「どうだ・・・良い眺めだろ?」
窓際にせいじゅうろうを座らせた。
百万ドルとは行かないまでも、それなりに夜景が綺麗だった。
『そうですな』
もちろん、せいじゅうろうがしゃべったわけではない。
それに、出張前のように菜緒がしゃべっているわけでもない。
あくまでも俺の心の声だ。
「菜緒にも見せたかったな・・・」
せいじゅうろうには悪いが、こいつは身代わりみたいなものだ。
菜緒の代わりに、俺と行動を共にする。
せいじゅうろうの目を通じて、彼女に伝えたかった。
もちろん、現実的にそれはありえないことだと分っていても・・・。
「そうだな・・・記念撮影でもしようか?」
『そうですな!』
せいじゅうろうから元気な声が返ってきた。
(・・・で、どこにしようか・・・)
夜景をバックに・・・も魅力的だが、撮影が難しい。
それなら・・・。
部屋のスタンドが良い雰囲気をかもし出している。
「たまには、こんな場所でも如何かな?」
もちろん、二つ返事だった。
「じゃあ、はいチーズ!」
それから、2週間ほど全国を飛び回り帰路についた。
実はそれからが大変だった。
仕事とは言え、みやげ話をするはめになったからだ。
でも、みやげ話自体が大変だったわけではない。
せいじゅうろうを通じて腹話術のように話すことが大変だった。
(No.418完)
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